新潟県って何地方? 県・市・NHK・市民に見解を聞いてみた(2/3 ページ)
――ちなみにオフィシャルでは「新潟県は何地方」と紹介しているのでしょうか。
木村副市長:公式的に○○地方ですという区分で紹介はしていませんが、篠田昭市長は「新潟市としては、仲良くしていただけるのであれば、どこの地域とでも仲良くしたい」と言っていますので、どこの地方に属していても構わないと思っています。
――なかなか思い切った発言ですが、具体的にはどういうことなのでしょうか……!
木村副市長:新潟市は観光面では福島県の会津若松市と、文化面では京都市や奈良県と連携協定などを結んでいます。また、山形県の鶴岡市とは食文化の面で連携しています。地域・地方にこだわらず手を取り合うという姿勢は行政同士の取り組みにも表れていると思います。
――地域を超えた連携協定を結ぶことによってどんなメリットがあるのでしょうか。
木村副市長:新潟市はインバウンド(海外から観光に訪れる観光客)需要のセールスにも力を入れているのですが、協定などを結んでいることによって「新潟に遊びに来た際にはぜひ会津若松市のお城も見て帰ってくださいね」「日本に来たら新潟と鶴岡の食文化の違いを楽しんでみてください」と連携都市の魅力とセットでアピールすることができます。
新潟県民は「根性よし」
――新潟はなぜいろいろな地域とのかかわりを持つようになったのでしょうか。
木村副市長:歴史的な観点でみると、新潟は古くから港町として栄えており、明治20年ごろは新潟県の人口が日本一多かったという記録も残っているなど人的にも物的にも豊かな土地でした。しかし江戸時代から続いていた北前船に関して「抜荷(ぬけに・幕府の禁令を破り海外と行う密貿易)」の事件が発生したことから、藩主である長岡藩は幕府から責任を追及されてしまいます。結局長岡藩は領置を取り上げられ、江戸後期には、幕府直轄の天領制になったため、大名がいなくなった新潟では町人文化が根付くようになり、次第に「なんでも受け入れる」文化が広まっていきました。
――近年でも「なんでも受け入れる」文化は健在なのでしょうか。
木村副市長:例えば対岸のロシア(当時ソ連)と日本の国交回復後、新潟はソ連極東の中心都市ハバロフスクと姉妹提携を行い、新潟-ソ連間の空路を開拓しました。新潟空港初の国際定期空路であり、当時は日本とソ連を結ぶオンリーワンの空路でしたので、ビジネスのために極東地域へ向かう商社など、民間の方々にとっても重要なルートであったと聞いています。
――柔軟な県民性なのですね。
木村副市長:昔からの港町文化が残っているので、結構フレンドリーなところがあります。他県の方からは優しくて思いやりがあるだとか、おっとりしていると仰っていただけることもありますし、新潟の方言では「根性良し(こんじょよし・お人よし)」とも言われます。県民の皆さんが「何地方」と呼ばれてもそこまで気にしないのもこういう気質に関係しているのかもしれません。
――今回の取材もそうですが、「新潟県は何地方なのか」と他の県の人が疑問に思っているということについてはどう感じていますか。
木村副市長:新潟で生活している私たちが何地方なのかを明確に意識していないくらいなので、他の地方の方から不思議に思われるのも当然のことなのかなと思いました。新潟では幻の洋梨といわれる「ル レクチエ」をはじめ本当においしいグルメがたくさんあります。また先ほども申した通り、人柄もとても暖かいので、今回の記事をきっかけに新潟にたくさんの方が遊びに来てくださるとうれしいです。
新潟県に聞く、「新潟県って何地方」
新潟市に続き、新潟県にも同様の質問をしてみたところ「公式な区分はありません」とのこと。理由については、明確に「何地方」という区分がなくても、行政では特段の不都合が生じておらず、また県民からも「生活に不便だ」との声はあがっていないためなのだそうです。
「新潟県が何地方なのか」という特殊な疑問については、「それが新潟の個性であり、『郷土への愛着につながっていくとうれしい』とむしろポジティブに捉えています」と話してくれました。
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