深さ3200メートルの海底で発見 「レキシントン」はこんなすごい船だったキャプテンながはまのマニアックすぎるシリーズ(2/2 ページ)

» 2018年03月28日 09時45分 公開
[長浜和也ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

「日本軍からの直接攻撃で沈んだわけではなかった」 レキシントンが沈没した理由

 レキシントンは世界初の空母戦となった珊瑚海海戦で、太平洋戦争初期の1942年5月8日に沈んでしまったことから、「全然活躍していなかったのね」「弱かったのね」などと思うかもしれませんが、それは違います。開戦直後から珊瑚海海戦までは生き残った数少ない主力艦として、日本の拠点があったラバウルや日本の領土である南鳥島にゲリラ的奇襲攻撃を仕掛けるなど、不利な状況でも積極的に戦いを挑みました。

ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 「レディ・レックス」と愛されたレキシントンの美しさがよく分かる正横からの姿
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 レキシントン級は蒸気タービンで発電して、その電気でスクリューを回す「電気推進艦」という、現代の電気自動車の祖先ともいえる先進的な方式を導入していた。米国の都市タコマの発電所が停止したときには、その発電能力を生かしてレキシントンが街に2カ月にわたって電気を供給していたこともある

 最後の戦いとなった珊瑚海海戦でも、日本軍の攻撃で受けた被害は爆弾2発と魚雷2本の命中に過ぎませんでした。大型空母のレキシントンならば、その程度の被害で致命傷にはなりません。実際、日本軍の攻撃が終わった後も24.5ノットで航行し、日本軍を攻撃して、日本海軍の空母「翔鶴」を撃破して帰ってきた味方の航空機を全て着艦させています。

ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 珊瑚海海戦で日本軍の九九式艦上爆撃機の攻撃を受けるレキシントン
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 同じく珊瑚海海戦で攻撃を受けるレキシントン。こちらは日本軍攻撃隊が撮影した写真
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 被弾した5インチ高角砲の状況。配備されていた乗員はそのほとんどが戦死している
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 「昭和17年5月4日〜昭和17年5月10日 軍艦瑞鶴戦闘詳報 (珊瑚海海戦に於ける作戦)」にある日本軍攻撃経過図。日本軍はレキシントンをサラトガと間違えていたようだ
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 「Battle of the Coral Sea 29 April8 May 1942」にある米海軍行動経過図。レキシントンはニューギニア西端から南東約600キロに沈んでいる

 しかし、魚雷が命中した衝撃で載せていた航空機の燃料タンクに亀裂が入り、燃料が漏れ出してしまいます。その燃料が気化し、密閉した艦内で数度にわたって爆発したのです。レキシントンは17時7分に総員退艦を発令し、その20分後に中央部で大規模な爆発が起きて致命傷に。20時、完全に沈没しました。この致命傷となった爆発は、搭載していた航空機用の魚雷が誘爆したと考えられています。

 珊瑚海海戦の詳しい経過は米海軍公式戦闘報告書「Battle of the Coral Sea 29 April 8 May 1942」や、日本海軍の戦闘詳報「昭和17年5月4日〜昭和17年5月10日 軍艦瑞鶴戦闘詳報 (珊瑚海海戦に於ける作戦)」で確認できます。

 さらに、レキシントンの受けた被害の詳しい状況やその後の対策は、米海軍の公式報告書「USS Lexington (CV2) Loss in Action Coral Sea, May 8, 1942」に書かれています。

ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 まず12時47分に小規模な爆発が起きる。そして、14時45分に最初の致命的となる爆発を起こした
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 14時45分の爆発は攻撃隊が着艦した直後に起きた。幸い搭載する爆弾も魚雷もなく、残存燃料も少なかったことから航空機の誘爆は起きなかったという
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 船体内部で爆発して炎上するレキシントン
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 総員退艦が発令される直前のレキシントン。飛行甲板に消火ホースがあるものの艦内動力は全て止まり、水は出ていない。正面にうっすらと見える巡洋艦ミネアポリスも懸命に放水しているが、届かない
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 17時7分、総員退艦が出て舷側から海に飛び込む乗員たち
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 致命的な爆発となった17時27分の搭載魚雷誘爆による大爆発の瞬間。吹き飛ぶ艦上機の姿が見える
ポール・アレン レキシントン 軍艦 海底で発見 Naval History and Heritage Commandでアクセスできる「USS Lexington (CV2) Loss in Action Coral Sea, May 8, 1942」の表紙。CONFIDENTIALが消されている

 なおこの2年後には、同じエンクローズド・バウを採用した日本の空母「大鳳」が、マリアナ沖海戦で同様に魚雷が当たった衝撃で漏れた気化ガソリンの爆発で沈んでいます。

写真:Naval History and Heritage Command

長浜和也

 IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。

 →「海で使うIT」


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/15/news019.jpg 4カ月赤ちゃん、おねむのひとり言が止まらず…… 心とけそうなおしゃべりに「とてつもなく可愛すぎる!」「ウルウルした」
  2. /nl/articles/2404/15/news020.jpg 1歳妹が11歳姉に髪を結んでもらうやさしい光景が160万再生 喜ぶ妹のノリノリのリアクションに「可愛すぎて息できない」「ねぇね髪の毛結ぶの上手」
  3. /nl/articles/2404/13/news014.jpg 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  4. /nl/articles/2404/14/news013.jpg 海岸を歩いていたら「めっちゃ緑のヨコエビがおって草」 作りものと見まごうほどの色合いに「ガチャの景品みたい」と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/11/news165.jpg 遊び疲れた子猫を寝かしつけてみた 絵本のような光景に「きゃーあ」「可愛すぎて変な声出た!」
  6. /nl/articles/2404/15/news038.jpg ダイソーの材料を“くっつけるだけ”で作れる、高見え「カフェコーナー」 今流行りのジャパンディな風合いに「天才的に美しい」「まねする!」
  7. /nl/articles/2404/15/news103.jpg 「ケンタッキー」新アプリ、不具合や使いづらさに不満殺到…… 全面的刷新も「酷すぎる」「歴史に名を残すレベル」
  8. /nl/articles/2404/15/news014.jpg 100均大好き起業ママが「考えた人天才すぎる」と思わず興奮 ダイソー&キャンドゥの優秀アイテム5選が参考になりすぎる
  9. /nl/articles/2404/14/news006.jpg 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  10. /nl/articles/2404/15/news021.jpg 下っ腹に合わせて購入したGUデニムで50代女性に悲劇→機転を利かせたコーデに称賛!! 「笑って楽しんで60代、70代を迎えたい!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  2. 500円玉が1つ入る「桜のケース」が200万件表示越え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「オトナも絶対うれしい」「美しい〜!」
  3. 赤ちゃんがママと思ってくっつき爆睡するのはまさかの…… “身代わりの術”にはまる姿に「可愛いが渋滞」「何回見てもいやされる!」
  4. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  5. 日本地図で「東京まで1本で行ける都道府県」に着色 → まさかの2県だけ白いまま!? 「知らなかった」の声
  6. 中森明菜、“3か月ぶりのセルフカバー動画”登場でネット沸騰 笑顔でキメポーズの歌姫復活に「相変わらずオシャレで素敵」「素敵な年齢の重ね方」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. もう別人じゃん! 「コロチキ」西野、約8カ月のビフォーアフターが「これはすごい」と驚きの声集まる
  9. 娘がクッションを抱きしめていると思ったら…… 秋田犬を心ゆくまで堪能する姿が440万再生「5分だけ代わっていただけますか?」「尊いなぁ…」
  10. 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」