「クソゲーオブザイヤー2017携帯」まさかの「該当作品無し」 ゲーム界“裏の祭り”に何が起きたのか(1/2 ページ)

「クソゲーが出ないことは良い事です」。その言葉は、どこかむなしく感じた。

» 2018年06月26日 16時00分 公開
[コンタケねとらぼ]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 クソゲーオブザイヤー(以下「KOTY」)。それは、その年に発売されたゲームソフトの中で、一番の「クソゲー」をユーザーたちが決めるゲーム界の“裏の祭り”である。2004年から実に14年もの続くこの祭りに、今、ある“異変”が起きている。携帯ゲーム機版の大賞が、初の「該当作品無し」となったのだ。


クソゲーオブザイヤー 2017 携帯 該当なし 「クソゲーオブザイヤー」2017携帯総評。初の「該当なし」となった

 一体何が起こったのか。携帯ゲーム機は良作ばかりになったのか。小説「ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム」の筆者で低評価ゲーム愛好家の赤野工作さん(模範的工作員同志/@KgPravda)に話を聞いた。

そもそも「KOTY」とは

 赤野工作さんの話の前に、「KOTY」自体について簡単に説明をしておきたい。

 この「KOTY」なる不名誉な賞の発祥は、2ちゃんねる(現「5ちゃんねる」)。据え置き機のゲームソフトは家庭用ゲーム板で2004年から、携帯ゲーム機のソフトは携帯ゲームソフト板で2007年から専用スレが立っており、その年一番のクソゲーを決めるべく議論が重ねられている(他にも乙女ゲー、エロゲーなど派生部門あり)。

 大賞の選考基準は投票などではなく、「KOTY」に推したいと思ったゲームをプレイした人間がスレに選評を投稿するというユニークなもの。この選評を元に、最も多くのスレ住人を納得させたゲームソフトが大賞となる。最後は一連の流れをまとめた「総評」が投稿され、ノミネート作品とともにその年の低評価ゲームが総括されるという流れだ。

 ちなみにこの「KOTY」、始まった当初の2004年〜2006年は「ゼノサーガ エピソードII」「ローグギャラクシー 」「ファンタシースターユニバース」が大賞に選ばれており、いかに面白くないかよりも「知名度や期待度の割に振るわず評価が荒れたゲーム」が選ばれていた。


クソゲーオブザイヤー 2017 携帯 該当なし 「KOTY」2004を受賞してしまった「ゼノサーガ エピソードII」。しかし、当時は今と選考基準が違った(画像はAmazon.co.jpから)

 しかし、2007年に「四八(仮)」というマイナーなゲームが、あまりにも筆舌に尽くしがたい内容だったため大賞を受賞。以降、「知名度や期待度よりも内容自体で大賞を決める」という方向転換をするに至り、その衝撃は四八ショック(ヨンパチショック)という名が付けられた程であった。


クソゲーオブザイヤー 2017 携帯 該当なし 「KOTY」の選考基準を変えてしまった「四八(仮)」(画像はAmazon.co.jpから)

 以降、「KOTY」はメジャー、マイナーを問わず、実に幅広く大賞を選出するようになった。この方針転換により、大賞はマイナーなゲームが選出されることが増え、「該当なし」となるような事態は今後も起こらないであろう……と思われていた。

「クソゲーが出ないことは良い事です」

 「KOTY」携帯2017の結果が決定したのは、2018年6月6日。その総評は、以下の通りだ。

昨年のKOTYは稀に見る難産であった。

選評の届いていた一作を大賞に据える、それだけの事が遠かった。

2011年の終わりと共に闇へ葬り去られたはずの「Wizardry 囚われし亡霊の街」が2016年の訪れと共に蘇ったのだ。

 

スレ住民達に誤当地と恐れられた「人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ」と最後まで据置版KOTY大賞を争った"あの"亡霊である。

 

諸々の問題で疲れ切っていた携帯スレ住民は為す術もなく亡霊に蹂躙され、検証は困難を極めた。

更にはトドメを刺しにでも来たのだろうか、SSAからの刺客「太平洋の嵐 〜皇国の興廃ここにあり、1942戦艦大和反攻の號砲〜」が年末の魔物として現れる。

 

嵐と亡霊に呑まれ、携帯スレが焦土になりつつも2017年10月吉日、約22ヶ月に及ぶ戦いは「亡霊の大賞受賞」という結果で幕を下ろした。

二度と現世へ迷い出ない事を願う。

 

****

 

そうして2017年、もはや住民にかつての力など残っていない。

それを象徴するかのようにスレが立つのが遅れ、候補に上がるゲームは一本も無く、総評案を篩にかける段になった今もスレはPart1のままである。

 

我々はクソゲーに敗北したのだろうか?

否、大賞候補となり得るクソゲーが存在しないことは本来喜ばしい事である。

携帯KOTY始まって以来の出来事を祝し、この言葉をもって締めくくりたいと思う。

 

「クソゲーが出ないことは良い事です」

 事情を把握していないければ、文意を理解するのも困難なこの総評。ただこの文章からは、哀愁や無力感、そして諦めといった感情が漂うことだけはお分かりいただけるかと思う。

 「クソゲーが出ないことは良い事です」。そうだ、まさにその通りだ。ぐうの音も出ないまっとうな正論である。しかし、なぜだ。なぜこんな悪のり好きなスレッドの5ちゃんねる住人が、正論を述べているのだ。ありえない。こんな正論がまかり通り、総評として選出されるなどありえないことのはずだ。こんなきれいな言葉は、ゲーム雑誌で業界人がろくろを回しながら語るべきである。

 また、総評にも書かれている通り、携帯ゲーム板の「KOTY」2017のスレは選評が届かないまま終わってしまったのだ。さらに、もう2018年も折り返しを過ぎているというのに、なんと2018年のスレは“立っていない”。「KOTY」2018携帯のスレは、現在も存在してないのである。

 一体どうしてこのような事態に至ったのか。事情に詳しい赤野工作さんに詳しい話を聞いた。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」