日本のマジック文化を変える――900人の手品愛好家が集合した「マジックマーケット」潜入レポ(1/3 ページ)
「コミュニティが形成されづらい世界」での、コミュニティ。
みなさんのまわりに、マジックが趣味のひとは何人くらいいますか? まったくいない、あるいは、いても1人か2人というところではないでしょうか。
これは、2018年8月18日に板橋のハイライフプラザいたばしで開催された、「マジックマーケット」の様子です。つまり、この写真に写っているのは、ほぼ全員が「マジックが趣味」あるいは「マジックが仕事」のひとです。その数900人以上!
国内のマジック愛好家およびプロマジシャンの総数は不明ですが、首都圏在住のマジック関係者のうち、10人に1人くらいはここに集まったのではないかと思います。
数百人のマジシャンが集まって何が行われたのか。その様子を紹介します。
マジックマーケットってなんだ?
そのネーミングから分かる通り、マジックに関する即売会です。プロ・アマ問わず、マジックに関係するいろいろなものを持ち寄って販売するイベントです。
そもそもマジックに関する資料や道具は、国内では、Web上を中心として、いくつかのマジックショップで販売されるものが大多数です。そういったショップでは、海外の卸から仕入れたもの、あるいは国内のクリエイターが卸したものが販売されています。
つまり、ショップによるセレクションの個性はあれ、販売されているものはだいたい、どこも同じです。プライベートブランドがほとんどないコンビニみたいですね。
一方で、趣味でいろいろなマジックの作品を考案してそれを発表したいと考えていても、ショップにチャンネルをもたないひとや、対面形式で自分の作品を販売したいと考えているひともいます。あるいは、トリックそのものではなく、その周辺についての考察を発表したいと考えるひともいます。
そういった、従来のマジック文化から漏れるひとをすくい上げたのが、マジックマーケットです。
「緩やかな連帯の場」
さらに、マジックは「秘密」を扱うため、それを趣味としないひととマジックの話をすることができません。
ところで、「合コンでマジックをしたらウケる……あわよくば、モテるかも!」と思ってるひとがいるかもしれませんが、「ウケるのは一瞬、モテにはつながらない」と断言しておきます。というのは、仮にマジックを演じても、「そのタネどうなってるの?」と尋ねられるのがせいぜいです。タネを明かしたら、「なーんだ」と言われて終わりです。マジックにおける「秘密」の重要性は、こういう面にも伺うことができます。
横道にそれました。
そういったわけで、マジックはコミュニティの形成がされづらい傾向があります。多くの趣味は、なにかしらのコミュニティに所属することで、その趣味が継続されることが多いと思います。しかしマジックの場合は、「始めたのはいいけど、どうやって続けたらいいのかわからない」と、早々に離れていってしまうひとが多いようです。
しかし、このマジックマーケットは、そういった孤立した趣味マジシャンたちに、緩やかな連帯の場を提供しました。
つまり、マジックマーケットは、日本におけるマジック文化を大きく変えるイベントである、ということです。
マジックマーケットに集まるひとたち
12時の開場を前にして、すでに100人を越えるひとが列を作っています。当然ですが、これもみんな、マジック関係者です。列の中ほどで並んでいるひとに話を聞いたところ、10時半くらいから来ているとのことでした。
マジックマーケットは、年1回の開催で2018年は5回目にあたります。年々、参加者は増えていて、1回目は170人でしたが、5回目の今年は920人になりました。昨年は420人だったそうですから、一気に倍増です。
全57ブースだったので、170人くらいは出展者側、純粋な来客数は750人くらいの計算です。ブース比は13倍です。コミケが3万2000スペースに対して一般参加者55万ですから、スペース(ブース)比17倍です。コミティアがだいたいブース比10倍のようなので、かなり集客力の強いイベントであることが分かるかと思います。
参加者の何人かに、何回目の参加か尋ねたところ、初めてという声も多く聞かれました。友人と2人で来ているひともいましたが、1人での参加もかなり多いようです。
年齢層は若く、一般参加の半分以上が10代あるいは20代のように見えます。女性の割合は低く、30人に1人いるかいないかといったところでしょうか。
開場の12時を過ぎると、一気に場内の温度が上昇したように感じられました。何かに似てると思ったら、コミケ3日目の「情報・評論」ブースの13時です。何があるかは分からないけど、面白そうなものがいろいろありそうだ、という来客者の空気を感じます。
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