ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る(2/3 ページ)

» 2018年09月22日 11時00分 公開
[中川淳一郎ねとらぼ]

勢いを増していくブログ

 2000年代中盤ののんきで牧歌的なウェブへの論調への礼賛は後に明確に批判することはさておき、当時の空気は振り返っておいても損はない。

 まずはGREEである。GREEはいつしかすっかりソーシャルゲームのプラットフォームになっていったが、2004年ごろのGREEはあくまでも「意識高い系若者向けのSNS」だった。「他己紹介」があり、自身のつながっている人を紹介するにあたっては歯の浮くような美辞麗句を書き込むのが常だった。

中川淳一郎 SNS ブログ 総括 振り返り 平成最後の夏 2004年の「GREE」公式サイト(Internet Archivesより)

山田太郎さんは、この若さで“アニキ”としての地位を獲得した方です。私が過去に発注相手の××産業からいじめられていた時、“そんな会社と付き合う必要はない。オレの方だけを向け”と有難すぎる助言をいただき、今に至っています。このアニキがいるから今の私があります

 こんな感じの気持ちの悪いホメ合い文化が蔓延するのがGREEだった。一方の雄たるmixiはもう少し自由な雰囲気ではあったものの「踏み逃げ禁止」なる謎のルールが蔓延しており、これまた面倒臭い面もあった。LINEの「既読スルー」と同じようなものだったのだが、誰かのmixi日記を読んだ場合は「おもしろいですね」といったコメントをつけなくては失礼だと捉えられていたのである。昨今Twitterでは「無断RT禁止」という謎ルールを説く者や「FF外から失礼します」というバカ丸出しコメントを書く愚者が元気にツイートしまくっているが、クソルールを作る者は2000年代中盤からネットには大量に存在していたのだ。

 こうした中、ブログは眞鍋かをりさんや古田敦也さんといった著名人も開始し、かなりのアクセスを集めていた。一般人でも「オカマだけどOLやってます。」のブログが話題となった能町みね子氏が書籍デビューをし、現在も文筆等の活動を続けている。「中国嫁日記」「実録鬼嫁日記」などのブログも人気となり、書籍化や映像化がされた。

 さらには「魔法のiらんど」で掲載されていた「ケータイ小説」も人気となり、「恋空」はシリーズ200万部超の大人気となった。活字やイラスト・漫画といった表現の場が紙メディアだけでなく、ネットにも2000年代中盤には広がっていったのである。グルメブロガーや大食いブロガーなども大人気となり、何らかの卓越した能力を持つ個人がブログで存在感を次々と発揮しつつあった。

中川淳一郎 SNS ブログ 総括 振り返り 平成最後の夏 『恋空』が書籍化された2006年当時の「魔法のiらんど」公式サイト(Internet Archivesより)

 前出・藤田氏はこうした状況がある中、2004年に後発ながらブログ事業に乗り出した。ブログは「ウェブ2.0」の象徴的な扱われ方をしたが、この言葉に関する考察を以下のようにしている。ウェブ2.0とは、簡単にいえば「ヘーゲルの弁証法的に知が螺旋状に積み重なっていく」ことであり、ネットに何かを書けば、それに対して数々の考察がされ、“集合知”が生まれる、というものだ。

これまでのHPにアクセスを集めるときは、ユーザーはco.jpのなかの情報を検索してくるしかなかった。それが基本的なウェブ1.0の構図だったのですが、ブログでは、トラックバックとか、コメントのリンクとかで、どんどんどんどん見知らぬ人が立ち寄り、情報が広まっていく。いわゆるウェブ2.0といわれたリンク構造というのに、自分が使ってみて、遅れて気が付きました。それで自社でやろうと考えたのです。

とはいっても、始めたばかりのころ、ブログの盛り上がりは大したことはなかったです。僕が社長ブログを書き始めてすぐ2位になって、1位は堀江さんでした。その程度で、芸能人もまだそんなにやっていなかったです。

中川淳一郎 SNS ブログ 総括 振り返り 平成最後の夏中川淳一郎 SNS ブログ 総括 振り返り 平成最後の夏 2004年当時の「ライブドアブログ」(Internet Archivesより)と「Amebaブログ」

 当時、ブログ界隈ではホリエモンが大人気だったライブドアがあり、「日本のGoogle」とも呼ばれ、ギーク界隈で人気を誇っていた「はてな」が存在感を誇っていた。はてなを使う書評ブロガーの紹介する本がAmazonでバカ売れするなど、少しずつブログの影響力を示し始めていた。また、当時、企業は「ブロガーイベント」をしきりと開催し、自社商品を影響力のあるブロガー(“アルファブロガー”と呼ばれていた)に書いてもらい、ネット上での存在感増を試みていた。

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