「天才とはイっちゃってる人」「プロは思考を言語化しない」 『アオアシ』小林有吾×棋士・広瀬章人が語る、自分の世界を広げる方法(6/6 ページ)
よく見ているキャラをよく見ている
――広瀬さんは、アオアシで好きなキャラは。
広瀬:主人公のアシトと同期の、遊馬くんが好きですね。おちゃらけてるのに周りをよく見てるところがいいなと思います。
小林:はー、遊馬ですか。よく見てますね。よく見てる遊馬をよく見てますね(笑)。
広瀬:まだ、そこまで話に出てきているわけでもないと思うんですけど、周りを生かせるFWに思えて。自分でも点が取れるし周りのアシストもできて、自分の好きなタイプの選手かなと今は思います。
小林:遊馬は、そんなに必死感がないですよね。余裕に見えますよね。でも、彼もお話に描かれてないところで相当やってるんだと思います。
広瀬:遊馬は高校の入学当初からAチームに入りますけど、実際のユースでもそういうことはあるんですかね?
小林:珍しいですけど、ありますよね。(現日本代表の)柴崎岳さんなんかは、サッカーの名門である青森山田校で、中学生のころから高校のチームでやってたので。そういう規格外の天才がいるのがあの年代での世界かなと。
広瀬:人間関係とかも、いろいろあるんだろうなあと思いながら見てます。
小林:アシトが主人公だから明るく見えてますけど、いろいろあると思います。アシトから見えてるのは一面なので。
“すごい後輩”にどう向き合うか?
――小林さんは、キャラ作りというのはどういう風に設定しているんですか?
小林:そうですね……難しいな。モデルっていうのがなくて、全部自分の中から、なんですよね。いろんな人間を見てきて、自分の中に入ってる、いろんな人格が漫画を描くときに出てくる。
あ、でも女性キャラクターだけは自分の理想ですね(笑)。こういう人がいればいいな、って。そういう執念があればいいキャラになるかな。
――阿久津(※)についてはどうでしょう。
阿久津渚
アシトと同じユースチームに所属する先輩。実力は折り紙付きだが、ことあるごとにアシトをいびる。いつも怖い。
小林:あいつがいるからイヤな世界にならない、っていう。あいつが一手に悪を引き受けてくれてるので。他の先輩たちは意外とみんないいやつ、というのが安心して見てられるところなんじゃないかな。ユースのおぞましい部分を引き受けてくれる役目。こいつを倒すまでは見届けたい、と思わせたいですね。
(後輩いびりをする)阿久津で思い出したんですけど、僕自身は後輩の漫画家とかですごい人が出てくると、話したいほうなんですよ。
広瀬:アシトタイプですね。
小林:そうか(笑)。それで話を聞いて、くそーとかは思わない。その人がどんなことを考えているか聞いて、自分ももっと良い漫画を描きたいと思う。広瀬さんはどうですか?
広瀬:これは自分で言うのも変なんですけど、自分はたぶん「そう思われるほう」だったんですよね。
先ほど話に出た渡辺明さんなんかもそうですけど、将棋界では何年かに一度、「こいつにはかなわない」とか「こいつだけは負かしてやろう」とか思われる人が出てくる。昔は「谷川先生(※)を倒す会」があったほど。今はそこまではないですけど。自分も早く上のクラスに上がってくれと言われたことはありましたね。
谷川浩司九段
中学生棋士としてデビューし、21歳で史上最年少の名人となった大棋士。現在もその記録は破られていない。十七世名人資格保持者。
アオアシで描きたかったもの
広瀬:ユースの現場を取材されて、どこに一番興味をもって、漫画にしたいなと思ったのでしょうか。
小林:実際のユースの子たちを見て思ったのは――これはあまりおもしろい答えじゃないかもしれないんですけど――ゆとりがあるように見えたんですよ。いい設備があって、みんなうまくて。高校サッカーのほうがガツガツしてるのかなと思う。
広瀬:作中でも描かれていますね。
小林:日本のユースって、一度入ると3年間はほぼ確実に面倒を見てくれるんですよ。途中で見込みがないと分かったとしても。でも、これがヨーロッパ(のユース)だと、学年の途中でも首を切られるんですよね。だからもっと必死で。
高校の子たちからしたら、絶対負けたくないと思ってるでしょうね。自分なら思います。もちろん、結果的にユースの子が活躍してるという現状もあるので、それはそれで良いところがあるんでしょうけど。
だから、アオアシに描かれてるのは、もうちょっと自分だったら、っていうのが入ってるんですよね。アオアシ読んでますと言ってくれるユースの子たちもいるので、だったらもっとこうあってくれ、という自分の気持ちが、内容に表れているんだと思います。
(了)
お知らせ
10年前に描かれた小林有吾傑作短編を、やわらかスピリッツで期間限定公開!
題材はなんと将棋! こちらもぜひチェックしてみてください!!
関連記事
- 「おおおおっしゃあああ!!」「打てー!」 松木安太郎さんがサッカー漫画『アオアシ』を試し読み実況する動画が熱血すぎる
音読したり声援を送ったり感想を漏らしたりと忙しいです。 - 将棋を指せない棋士が残したもの 書評『うつ病九段』
将棋界の狂騒の影で、一人の棋士に起こっていたこと。 - フィクションが現実になるとき――漫画『将棋指す獣』に見る“女性棋士”という存在
全ては、最初の一人から。 - 藤井聡太五段を見たときに感じる「口の奥の苦み」――プロ棋士を目指した“元奨”作家が振り返る「機会の窓」
かつて、同じ夢を見ていた。 - プロとアマとを分けるもの――「奨励会」という世界、己の人生を”懸ける”ということ
「賭ける」と「懸ける」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
不二家の「プレミアムショートケーキ(国産苺)」が半額に! 3日間限定キャンペーン
-
中山美穂、金髪&ミニ丈の大胆イメチェンに視聴者びっくり! “格付け”出演の最新ビジュアルに「誰だか分からなかった」
-
日本エレキテル連合・中野、ネタで酷使し容姿に異変→手術を決断 「ダメよ〜、ダメダメ」でブレイク、2022年にがん公表
-
動物病院の会計中、振り返って愛犬を見たら…… “柴らしい”もん絶級の光景に「天使かよ!」「帰れるもんねw」
-
「ハンガー・ゲーム」出演俳優、撮影中の性的暴行被害を告白 泣きながら撮った当時の写真添え「すごくつらかった」と胸中明かす
-
ミス筑波大モデル、25キロ減量したビフォーアフターに「ホント凄い」 整形疑う声も「元々は埋もれてたようですね」
-
上沼恵美子さん直伝「ホタテの一番おいしい食べ方」に絶賛の声続々! 「発想が主婦目線」「マネして作ってみます」
-
【今日の計算】「8×4−2+1」を計算せよ
-
1歳赤ちゃん、寝ぼけまなこの謎行動が150万再生突破 「仕事の疲れ、吹っ飛んだ」「少し出ちゃったの可愛すぎ」
-
「めざましテレビ」“新お天気キャスター”が「美しすぎる」と注目 ミス東京GP獲得から約4カ月で
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
- 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
- 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
- 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
- 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
- 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
- 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
- パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
- “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
- 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
- 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
- 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
- 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
- “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
- 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」