この上なくヤバいサイコパスがいる 未知のホラー漫画『いじめるヤバイ奴』が大きな声ではオススメしにくい理由(1/2 ページ)
自縄自縛に陥った“いじめっ子”の縄を持つ“いじめられっ子”。
「これは面白い」と思った作品には声を大にして皆に勧めたくなる作品と、「こいつヤベえ」と思われる危険があるため気心の知れた友だちにだけ教えたくなる作品がありますが、「マガポケ」で連載中の漫画『いじめるヤバイ奴』(マガジンポケット/著・中村なん)はその後者。以下、序盤のネタバレを含みますが、それでも作品の核のヤバさは変わらないのでご安心ください。
いじめっ子のリーダー・仲島に従う形で行われる、女の子・白咲さんへのクラス全員での集団いじめ。それは狂気を感じるほどのむごい内容で、おまけに担任教師まで手なずけられており、だれか1人が正義感を出したところで無意味な抵抗に終わってしまう――これが第1話の中盤までの話。ですが、最後の10ページでそれまで見てきたものに想像し得ない裏があったことが明かされます。
散々いたぶられ、辛そうな涙を浮かべていた白咲さん。儚げで優しそうな彼女がなぜいじめの対象になったのか。それは、彼女自身が“いじめられること”を望んでいたからで、表向きはリーダーとして振る舞う仲島に対して、裏では「お前は死ぬまで私のいじめっ子」だとアイスピックを持って迫り、脅迫した上で命令するのが彼女の本当の姿なのでした。
読み進めていくごとにわかってくるのは、白咲さんがこの上なくヤバいサイコパスの類だということ。仲島をアイスピックで刺すのはもちろん、歩道橋から躊躇(ちゅうちょ)なく落としたり、普通ヒトが恐れることを感情の伴わない表情で遂行する姿はホラーでしかありません。
『いじめるヤバイ奴』は、楽しくて平和な高校生活を送りたかった仲島が、白咲さんに脅迫されて「いじめの加害者」になるという恐怖を味わう悲劇の物語。そして、仲島が助かるためには、白咲さんが満足する“いじめ”を成功させなくてはならず、主人公によるヒロインへのヒドい加虐シーンが上手くいくとホッするという、通常ではあり得ない構造の世界観が誕生しています。ここがこの作品の一番の魅力であり一番のヤバいところかもしれない……。
作者の中村なんさんも、同作の連載を始めてから「過激で狂った設定に周りから『お前頭おかしくなった?』と問われるようになり友人が減りました」とコメントしているように、非常に勧めにくい内容ではありますが、同時に未知の面白さがあるのは確か。2月に発売されたコミックス第1巻のラストでは、「もっとヤバい展開になりそう」と期待(?)させる爽やかイケメンも登場し、マガポケで公開中の最新話ではサイコホラーを超えた先のシュールギャグのような展開にもなっており、とがった漫画を求めている人は一度読んでみるとハマるかもしれません。
なお、ハマったことにより、あたらしい嗜好を植え付けられてしまったとしても責任はとれませんので悪しからず……。
『いじめるヤバイ奴』第1話 出張掲載
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