LUNA SEAライブに託児所 ファン「とても助かった」 利用増えるライブの臨時託児サービス、実態は
“ライブ会場の出張託児所”をどのような経緯でやることになったのか。ベビーシッター請負事業所・あいねを取材しました。
ロックバンド・LUNA SEAの武道館ライブに、託児所があったおかげでとても助かった――そんな子持ち世代ファンからの感謝の声がTwitterで反響を呼んでいる。プロのベビーシッター業者を招いてライブ会場の一角に託児スペースを設け、開演前から終演後まで有料で子どもを預かるというサービスだ。
LUNA SEAの託児サービスは今回だけでなく、2014年からホール規模でのライブで随時実施してきたものだ。他にもMr.Childrenやサザン・オールスターズ、GLAY、KREVA、浜崎あゆみ、LDHグループ(EXILEや三代目 J SOUL BROTHERS)など、音楽業界では2000年代からさまざまな人気アーティストがライブ会場に託児所を設けており、認知度とともに利用するファンが年々増えつつある。
育児しながらライブも気軽に楽しめる、多様性社会で歓迎すべきサービス。“ライブ会場の出張託児所”はどのような経緯で生まれ、どのような環境で営まれているのか――今回のLUNA SEAの公演で託児所を担ったベビーシッター請負事業所・あいね(東京都新宿区)を取材した。
「本当に楽でした」 娘預けたファンの声が話題に
今回注目を浴びたのは、5月31日・6月1日に武道館で行われたLUNA SEAの結成30周年ライブでの託児サービス。完全予約制で料金は1日5500円。アリーナ席に通じる近くの一室を託児スペースに設え、1日につき21〜22人の子どもを預かった。年齢は0歳から10歳までと幅広く、あいねのスタッフ11人で対応したという。
Twitterでは娘を預けたというファンが「開演まで一緒にいれて終演後も慌てて迎えに行く事もないから本当に楽でした」「体制もしっかりしてたし娘も2日とも楽しかった模様」「(開演前に)ドラムセット見た娘の目がキラキラしてたのはちょっと感動」と利便性を発信したところ、1万回以上リツイートされるなど話題に。
周囲のユーザーからは「ステキすぎる」「いろんなバンドで今後できたらLIVEに行きやすくなるかも」「ファンに子持ち世代多いところはどんどんやればいいと思う」とサービスを歓迎する声が続出。昨今は子連れでライブ鑑賞する行為に耳への悪影響を不安視する風潮があり、「子どもの耳を守るためにもいいシステム」と称賛する声もあがった。
LUNA SEAのライブにおける出張託児は、メンバーのSUGIZOさんの強い希望により2014年に始まったという。「ご本人からもご丁寧に直接ごあいさついただききました」と、あいねの代表・松本和世さんは語る。
あいねは2001年に設立。ベビーシッター以外にもスポーツ試合などさまざまなイベントへ出張託児サービスを行っており、その一環として音楽ライブにも対応してきた。
託児スペースには会場の会議室などを使い、フロアクッションやカーペット、玩具、寝具など必要備品を持ち込んで設営する。必ず公演前に現場を下見し、動線やトイレ、安全面などを確認。ライブフロアからの音が気になる場合は乳児スペースを遠ざけたり、普段土足で使用されてる部屋なら主催者に養生してもらったりと、現場ごとに安全な空間作りを心掛けている。
どのライブでも完全予約制を取っており、事前に子どもの情報をもらって担当スタッフを付けることで、子どもと保護者それぞれの細かいニーズに沿えるようにしてきた。託児室では開演直前まで授乳も可能で、万が一に備えてライブの座席番号も共有し、必要あらば席まで声を掛けに行くことも。夜間のベビーシッター料は本来1時間2200円だが、利用者の負担を鑑みてなるべくチケットの価格を超えないラインに設定しているそうだ。
2018年に受けた依頼は10件ほど。これまでKREVA、KICK THE CAN CREW、矢野顕子、ハナレグミ、秦基博、長渕剛、吉川晃司、SIAM SHADE、Gackt、JUN SKY WALKER、THE GAZETTE、Monkey Magic、ユニコーン、キリンジ(敬称略)といったアーティストのライブに出張してきた。アーティストの中には、気に掛けて託児室まで様子を見に来る人も。回数が重なると認知度も上がることから、年々預かる子どもの数は増えており、現在は定員一杯になることも多くなってきた。
アートは日常生活を支える心の栄養
初めて音楽ライブ会場から依頼を受けたのは、2002年に西武ドームで開催された渡辺美里さんのライブだった。
「安心して託児を任せられる事業者が必要」とイベント事業社ディスクガレージから連絡があり、当時は新事業所としてスタートしたばかりで期待に応えられるか不安もあったが、請け負うことに。以降定期的に依頼を受け、出張ごとに変わる現場の中でどのような態勢で託児サービスを行うべきか試行錯誤してきた。今では各会場の状況をだいたい把握しており、ライブの主催者とも柔軟に対応し合えるようになった結果、「より安心して利用してもらえる環境を提供できるようになってきたのではないか」と振り返る。
「音楽などアートは身体や日常生活を支える心の栄養だと思います」と松本さん。ライブ会場で子どもを預けられる環境について、次のように語る。
「子育ては非常に重要な社会参画で、日々奮闘されている親御さんが1年に数回栄養補給をして、再び子育てに臨まれる――そのお手伝いができることをうれしく思います。『たのしかった〜』『ママもー!!』とお迎えに来た親御さんの充実したフレッシュな表情は、お子さんにとっても何よりのご褒美なのではないでしょうか。親御さんがワクワクして準備をしている姿、期待いっぱいに親子一緒にお出掛けできるひとときは、お子さんにとってもスペシャルな日なのだと実感しています」
「同じアーティストの公演で託児を毎年ご利用いただき、年齢を重ねライブ鑑賞できる年頃になったお子さんがわざわざ託児室までごあいさつに来て下さることもありました。ほんの一瞬ではありますがお子さんのご成長に関われたことをうれしく思います。これからも1件1件のご依頼を大切に、お子さんとの時間を楽しみに臨ませていただきたいです」
(黒木貴啓)
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