2時間の映画を10分で紹介 「ファスト映画」累計被害額は950億円超、業界が法的措置へ
確認されているチャンネルだけで、累計再生回数は4億7700万回超とも。
映画の内容を10分ほどに編集し、権利者に無断でYouTubeに投稿する「ファスト映画」について、業界団体が法的措置に乗り出したことが分かりました。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の試算では、これまでの累計被害額は950億円超にのぼるとされ、警察とも協力し、発信者情報開示請求や刑事摘発などに向けて動いているといいます。
この1年で急激に増加した「ファスト映画」
こうした動画は「ファストシネマ」「あらすじ動画」などとも呼ばれ、短い時間で映画の内容や結末をほぼ網羅できるのが特徴。多くは映画本編の映像や音声を無断で切り貼りして作られており、映画全編をアップロードしているわけではないものの「引用の範囲を超える、明らかな著作権侵害であり重大な犯罪」とCODA側は指摘します。また、結末まで含めた映画の内容を全て紹介してしまうことで、映画本編を見ないことにつながる懸念もあります。
CODA代表理事の後藤健郎氏によると、こうした「ファスト映画」を専門的に扱うチャンネルが増えはじめたのはここ1年ほど。1年前には約10チャンネルほどだった専門チャンネルは、現在確認できているだけで55チャンネルに増加。中には合計8000万回以上再生されているチャンネルもあり、多額の広告利益を得ているとみられています。
現在確認されている55チャンネルだけでも、累計再生回数は4億7700万回超(CODA調べ)。後藤氏はこうした「ファスト映画」について「映画業界にとって大きな打撃」だと問題視します。
「2時間の映画というのは、製作者や演者が熱心に考えて表現しているもの。それを営利目的で勝手に切り取って投稿するというのは到底許しがたい行為です。ましてコロナ禍で映画館が苦境にさらされているなかで、減収につながるような行為は団体として見過ごすことはできません」(CODA 後藤代表理事)
また、あまりにも堂々と投稿されているため、視聴者側も著作権侵害と知らずに見てしまっているのではないかといいます。
法的問題は? 弁護士に聞いた
これらの動画について、具体的にはどのような法的問題があるのか。CODAとともに取り締まりを行っている、弁護士法人東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士に聞きました。
「まず、映画の映像をそのまま使っている点、また著作物を違法にアップロードしている点について、これは複製権と公衆送信権を侵害しているといえます。さらに、2時間程度の映画を無断で10分程度に編集している行為についても、翻案権侵害や同一性保持権侵害にあたるといえるでしょう。また、映画の大半の内容を詳細に文字として抜き出してナレーション・字幕にしている動画もありましたが,これについても翻案権侵害が疑われます。例えば『スター・ウォーズ』の映像は使っていなくとも、劇中のセリフや描写を事細かに最初から最後まで文字で抜き出し、その映画の小説を作るような行為が許されないことを想像いただければ分かりやすいかと思います。これについては文化庁の『著作権Q&A』も参考になると思います」(中島弁護士)
また中島弁護士によると、明らかな著作権侵害であるにもかかわらず、多くの動画が削除されず収益化申請も通ってしまっている背景には、「日本語の動画だと海外の権利者には見つかりにくい」「タイトルや説明欄に映画のタイトルを記載しないなど、投稿者側も見つからないよう工夫している」「静止画を多く取り入れることで、コンテンツIDによる検知をすり抜けようとしている」といった実情があるようです。
他にも、「日本未公開の映画のDVDを、先行して公開されているアメリカから取り寄せ、日本での劇場公開に合わせて動画を投稿する」といった行為も確認されており、「映画会社の宣伝行為にフリーライドする行為」「明らかに営利目的の著作権侵害行為であり、悪質さで言えば『漫画村』と変わらない」と中島弁護士。また投稿者について調査したところ、都内の法人が運営していたチャンネルもあったといいます。
削除済みのチャンネルにも厳しく対応
こうした業界の動きについては6月20日にNHKでも報じられ、現在は多くのチャンネルが動画を削除するなど撤退の動きを見せています。しかし、CODA側では既に具体的な侵害の証拠などは押さえてあり、削除済みのチャンネルに対しても今後、法的措置を含めて厳しく対応していくとしています。
「CODAは、著作権を侵害する悪質な『ファスト映画』に対して、その視聴環境を提供する米国のYouTubeに発信者情報開示請求を行います。これにより運営者を特定し、その確たる証拠に基づき、日本警察へ相談し刑事摘発につなげるなど、この状況を一掃していきたいと思います」(CODA 後藤代表理事)
また、CODAはあくまで業界の取りまとめ役であり、今後は侵害が確認された作品のリストを公開し、権利者(邦画であれば製作・配給会社、海外の作品であればライセンス契約を行っている配給会社など)にも対処を呼びかけていきたいとのこと。併せて、一般の動画サイト利用者に対しても「広告収入で暴利を稼ぐ『ファスト映画』に加担することがないよう安易な視聴はお止めください」と呼びかけています。
関連記事
- 「シン・エヴァ」本編の盗撮映像がネットに違法アップロード 東映・東宝・カラーが「しかるべき対処」
アップロード元は匿名でも特定が可能です。 - 「海賊版はダメ」のんさんが呼びかけ 「不正商品撲滅キャンペーン」開始
リーチサイト規制の施行日に、コンテンツ海外流通促進機構がキャンペーンを開始しました。 - 「漫画のネタバレ感想で訴訟される」は誤解 Webニュース記者が見た『キン肉マン』騒動
「ネタバレ」と「悪質なネタバレ」は別もの。 - 【そんなことある?】「親指を立てて溶鉱炉」が通じない! 映画館で見た腰が抜ける会話
世代差だな〜! - 円谷プロ、中国の“無許可ウルトラマン”巡る裁判に勝訴
2017年公開の「ドラゴンフォース〜さようならウルトラマン〜(原題:鋼鐵飛龍之再見奧特曼)」問題。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
-
「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
-
もう別人じゃん! miwa、大胆イメチェンで面影ゼロに「まさかのこんな色になってるとは」「だれー!?」
-
「ぶち抜きたいです」 辻希美、懇願拒否された13歳長男が“荒くれ反抗”……息子の室内破壊に嫌悪あらわ「言葉が出ない」
-
異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
-
「キュウリが冷凍できるとは76年も生きて来て知らんかったなあ」 野菜ソムリエプロが教える冷凍&活用アイデアが328万再生
-
「虎に翼」、壮絶過去演じた16歳俳優に注目の声「違国日記の子か!」 「ブラッシュアップライフ」にも出演
-
築36年物件の暗くてボロいトイレをリメイク→ぐーんと垢抜け! 驚きのビフォアフに「すごいですね!」「天才」の声
-
【今日の計算】「13+8×2−11」を計算せよ
-
辻希美&杉浦太陽、15歳迎えた長女のレアな“顔出しショット”でお祝い 最近は「恋バナ」で盛り上がることも
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」