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なめことくまモンをこよなく愛する乙女マインドな社主がマンガ「きのこいぬ」を全力でオススメする虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第17回

きのこいぬとは何ぞ! 片耳がキノコになった犬っぽい変な生き物である。性格的にちょっとしたくせ者なところも魅力である!

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 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。

 実は今月中旬、半分仕事半分観光で4日間ほど東京に行ってました。前々回「デンキ街の本屋さん」を紹介した際、「東京に行くときは必ず秋葉原に立ち寄ります」と書いたように、今回も「キルラキル」カフェに行って謎フライを食べたり、「事件記者トトコ!」の書店ディスプレイを眺めてにやついたり、薄い本(全年齢向け)を買ったり、アキバライフを満喫してきました。

 また今回初めて「女子のアキバ」として知られる池袋・乙女ロードにも訪問。目的は黒バスでも跡部様でもなく、アニメイト8階にて開催されていた「きのこいぬオンリーショップ」です。

 「きのこいぬ」とは何ぞ。きのこいぬは現在「月刊COMICリュウ」にて連載、蒼星きまま先生の同名作に登場する謎の生き物。名前の通り、きのこと犬がくっついたピンク色の愛らしい見かけが特徴です

 今回は本連載を読んでくださっている某出版社の方から「乙女マインドの持ち主ですね」と喝破されて動揺気味の社主が、現在ネット上にまだ5人しかその存在が確認されていないネトジョ(ねとらぼ女子)に向けて、この超キュートなマンガを紹介するゾ☆

庭に1本のきのこが現れた

 累計50万部を突破した本作「きのこいぬ」(〜5巻、以下続刊)の見どころは、とにもかくにもまず、きのこいぬのかわいらしさでしょう。実際、カラフルでポップな色遣いの表紙と飄々(ひょうひょう)としたきのこいぬの風貌にひかれて手に取った読者も多いのではないでしょうか。

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 幼いころに両親を事故で亡くし、また引き取ってくれた祖父も他界。唯一残った愛犬・はなこと2人ぼっちの生活を送っていたホラー絵本作家の青年・夕闇ほたる先生。そのはなこを病気で失い、最期を看取ることができなかった後悔から立ち直れないまま迎えた、はなこの四十九日から物語は始まります。

 ほたる先生の担当編集で幼なじみのこまこから「はなこは心底あんたを好きだったよ」と慰めてもらっても、いやむしろ他人から見ても分かるほどはなこを強く愛していたがゆえに、今もなお苦しむほたる先生。その日の夜、うなされて目を覚ましたほたる先生がふと庭に目をやると、ピンクのきのこが1本。きのこは急にグラグラと揺れ出したかと思うと、ゾンビが墓穴から出てくるようにきのこの下から何かが顔を現します。

 地面から現れたのは、ゾンビではなく片耳がキノコになった犬っぽい変な生き物。碁石のように真っ黒でまん丸な目を輝かせ、黙ってほたる先生に懐いてくる謎のきのこいぬとほたる先生の同居生活がこの日から始まります。

かわいいだけじゃないんだぜ?

 さて、乙女マインドの持ち主として定評ある社主ですが、ただ単に見た目がかわいいだけでキャラを好きになるわけではありません。目下のところ、本紙社主室には大量のなめことくまモンが鎮座ましましていますが、どちらもかわいいだけでなく、実は性格的にちょっとしたくせ者なところが魅力でもあります(全国放送ではゆるキャラの王者として君臨するくまモンですが、地元・熊本では番組中アシスタントのお姉さんをしばく、展示品を勝手に触って怒られるなど、結構黒いのです)。そしてきのこいぬも御多分に漏れず、外見がかわいいだけ、中身空っぽのキャラではありません。

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なぜか、たこ焼き好き

 きのこいぬを招き入れた次の夜、やはりはなことの思い出が忘れられず、涙を流しながら目覚めたほたる先生。最初は枕元で気遣ってくれたきのこいぬですが、急にどこかに姿を消したかと思うと、今度はきのこいぬが埋まっていた庭から火の手が!

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 大きく燃え上がる火元には、ほたる先生が残しておいた愛犬はなこのドッグフードや首輪など遺品の数々がメラメラと。きのこいぬは何のためらいもなく、それらをぽいっと燃やしてしまったのです。あっけにとられるほたる先生。怒りできのこいぬを殴り倒すかと思いきや、「お前、なぐさめかた豪快だね……」と頭をなでながらポツリ。そして自分が褒められたと思ってニコニコ顔のきのこいぬ。第1話終わり。

 きっと読者のみなさんの間でもこの展開には賛否両論分かれることでしょう。愛犬の遺品を火にくべるなんて鬼畜の所業だと思う人もいるでしょうし、抜け殻になったほたる先生にとってはこれくらいのショック療法が必要だったと考える人もいるはずです。ただ結果として、ほたる先生はこれをきっかけに前を向くようになりました。心機一転描き始めた新しい絵本のタイトルは「きのこいぬ」。「夕闇ほたる初のハートフル作」として作品の評判も上々のよう。

 その後もきのこいぬははなこを思い出して虚ろになりかけたほたる先生を蹴飛ばして土手を転げ落としたりもしますが、これもきのこいぬの先生愛が強すぎるゆえのものだと理解してあげるのが最も正しい解釈だと思います。優しく癒してあげるだけが愛ではないのです、たぶん。

懐の深い作品なんです

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 結構衝撃的なエピソードから始まった本作ですが、その後は比較的穏やかなストーリー展開で、ゆったり読んでいくことができます。どういうわけか、たこ焼きが大好物になり、眉間にしわを寄せた神妙な顔つきで日々たこ焼きづくりに精を出すきのこいぬを愛でるもよし、近所に住むきのこ研究所員で、ほたる先生に一目ぼれしてしまった屋良くんが、先生に近づく女や、挙句の果てにはきのこいぬにまで嫉妬する様子をほほえましく眺めるもよし。本作「きのこいぬ」は読者の興味によってさまざまな読み方を許してくれる、とても懐の深い作品です。

 社主個人としては、言葉をしゃべれないきのこいぬが最初は字を書いてほたる先生に気持ちを伝えようとして上手くいかず、「ひらがな絵本」と屋良くんの助けを借りて、つたない字で一生懸命書き上げた「すきです ほたる」の手紙から始まり、ついにはスマートフォンをタッチペンで操作してLINEまで使いこなせるようにまでなる、きのこいぬのポテンシャルの高さ、いや、ほたるに気持ちを伝えんとするその穢(けが)れなき純粋さの部分に何とも言えないかわいらしさを感じます。何度も言うように、かわいいのは外見だけではないのです。

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まさかのおにぎり職人

 なお現在発売中の最新5巻では、4巻に引き続き新しいきのこいぬ・プラムが登場。きのこいぬに同種がいたこと自体ちょっとした驚きですが、たこ焼き職人のきのこいぬに対して、プラムはまさかのおにぎり職人。果たして2人(2匹?)の関係はいかに!?

 最後に本作を掲載している雑誌「COMICリュウ」についても少し。各種月刊誌を読んでいる社主ですが、「COMICリュウ」は今とてもおもしろい月刊誌の1つとして注目しています。2011年に休刊した際は肩を落としたものですが、翌年復刊。最近では表紙に単眼娘・ヒトミ先生(「ヒトミ先生の保健室」)を登場させるという予想外の行動に出て話題を集めました。しかし「COMICリュウ」には、それ以外にも猫耳、半獣、女装男子、百合など、普通のマンガ誌ではニッチなジャンルとして1本掲載されるかどうかくらいの作品がギュッと濃縮されています。

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 では「ニッチを集めて最上川」なのかと言うとそうでもなく、昨年は連載作「アリスと蔵六」(今井哲也/〜2巻、以下続刊)が第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞を受賞。決して変化球ばかりの雑誌というわけでもないのです。

 例えば、本連載が続けばいつか取り上げたいと思っている作品の1つ、「嵐ノ花 叢ノ歌」(東冬/〜4巻、以下続刊)は、満州国を舞台に錬金術といったオカルト趣味とスチームパンクが組み合わさったような幻想歴史大河浪漫で、何度も噛み砕いて読まないと全体像がつかみにくい、どっしり重い直球のような作品であるように思えます。また先月発売されたばかりのいびつな恋愛作「シュガーウォール」(ninikumi/〜1巻、以下続刊)も、これまで本連載で紹介した作品を気に入ってくださった読者なら、同じく気に入ってもらえるはずです。

 同誌連載作品の中で現在最もとっつきやすいものが今回紹介した「きのこいぬ」であることに異論はないところでしょうが、これを入口にぜひ「コミックリュウ」本体にもチャレンジしてみてください。きっとそれまでとは違う新しいマンガの世界が開けるはずです。ただし新しい趣味に目覚めた場合の責任は取りません。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございましたゾ☆

(C)蒼星きまま/徳間書店

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