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超超超ピュア→角砂糖に蜂蜜かけたレベルの甘々展開へ スロー恋愛マンガ「きみといると」がじれったくて良い虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第19回

主人公の2人が手をつなぐまで3巻分消費します。全4巻なのに!

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今回はかがみふみを先生の「きみといると」をご紹介します

 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。新しいなめこ栽培に精を出す虚構新聞の社主UKです。

 まずはお知らせを。先日ねとらぼ美人編集M女史が本連載のまとめページを作ってくれました(ありがとうございます!)。ページ上部の「ねこらぼ」と「ねとめし」という人気コンテンツの間にふてぶてしい文字数で居座っていますので、よろしければご覧ください。

 さて、4月も半ばということで、新しいクラス、新しい学校、新しい職場など、そろそろ環境に慣れ始めてきた頃でしょうか。思い出してみるに、社主は毎年この時期がとても苦手で、友だち作りはおろか新環境になじめず、開幕早々いつも熱を出して休んでいました。

 そのためスタートダッシュにおいて大事な人間関係の構築がうまくいかず、だいたい6月くらいまでは一人飯。その後やっと友達ができたかと思いきや、まもなく翌年のクラス替えで離れ離れ……という、そんなライフサイクルの学生時代でした。まあでも今こうして普通に生きてますし、学生時代の友達とも交流は残っていて完全にぼっちというわけでもないので、同じようなスロースターターの方も「もう4月半ばなのにまだ友達ができない……」などと焦らなくて良いと思います。社主は「新年度始まって早々友達100人作るなんて、浅い人間関係に依存せざるを得ないかわいそうな人に違いない」と勝手に呪うことにしていました。

 そんな呪詛(じゅそ)はさておき、春が新たな出会いの季節であるということは間違いありません。しかもそれが異性だったなら、これからの1年どれほど楽しいことか! ということで、今回はそんな春の始まりにふさわしい恋愛マンガを紹介します。2008年から2010年まで「コミックハイ!」(双葉社)にて連載されていた、かがみふみを先生の「きみといると」(全4巻)です。

超超超……ピュア!!!

 新年度に男女が出会う恋愛マンガなど山のようにある、と言うか、身もふたもなく言ってしまうと恋愛マンガというのは総じて新年度に男女が出会って、いろいろあって最後は付き合って……なわけですが、本作がそのような恋愛ものと一線を画しているのはとにもかくにもピュアだということ。これでもかと言うほど超超超……ピュアなのです。

 主人公は高校1年生の岩井良明くん。お腹の弱い彼が冷や汗を流しながらトイレを求め、街を必死でさまよい歩くところから物語がはじまります。あと一押しすれば残念な結果になりそうなほど真っ青な岩井くんが見つけたのは「喫茶やすらぎ」。店に飛び込み、一目散にトイレに駆け込んだものの、鍵がかかってドアが開かない。爆発寸前から来る焦りのあまりノブをガチャガチャ無理やり開けようとしたところ、中から声が。

 「え……えっと すぐ……出るから ちょっと待って」

 出てきたのは背の小さなアルバイトの女の子・山河春ちゃん。何とか助かった岩井くんは、この子の笑顔に一目ぼれ。とてもかっこ悪い出会いではあるものの、以降彼はこの喫茶やすらぎに通うようになるのです。

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 思わぬラッキー腹痛でラッキー出会いを得たラッキー岩井くんですが、ここからのストーリー展開がと・に・か・く・じれったい! だって、お互いが名前を知るのに2話分もかかってるのですよ! 下手したら「どーもー、岩井です」「えっと、山河です」の2コマであっさり済ませてもいいのに、2話も。さらに言うと2人が手をつなぐのが3巻! 全4巻なのに! ここまでスローな恋愛マンガ、ほかに読んだことがありません。連載当時はこのまま「こち亀」か「あさりちゃん」に挑むつもりかと思いました。

 ともあれ「何とかして本人の口から名前を聞きたい」と、悶々とする岩井くんが、いざ「えっと… あたしの名前 ヤマカワ ハル っていうの」と教えてもらった途端、顔が真っ赤になってトイレに駆け込んでしまうシーンなど、そのヘタレっぷりも微笑ましい限りです。

「じれったい」のが魅力ですよ

 本作もう1つの特徴は、岩井くん視点と春ちゃん視点が行ったり来たりするところ。王道の恋愛マンガでは男か女のどちらか一方の視点がメインになっていて、それゆえ「意中の相手が何を考えているのか分からない」という疑似恋愛気分に浸れるわけですが、本作の場合はお互いがお互いをどう思っているのか、その気持ちの揺れ動きを第三者の視点から眺める感じです。

 なので、疑似恋愛と言うより、2人がゆっくり近づいて、時にはすれ違って、遠ざかって、そしてまたゆっくり近づいていくのを温かい目で見守る感覚に近いかもしれません。気の短い人は「早くくっつけ!」などと思ってしまうかもしれませんが、本作、ひいてはかがみふみを先生の恋愛マンガ全般のキーワードにもなっている、この「だんだんと」の感覚が良いのです。好きな人の名前を聞き出すのに2話もかかってしまうマンガがあってもいいじゃないですか。

俺にもあんなピュアな頃があった(遠い目)

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ピュアです

 しかし、考えてみると恋愛というのは、成就しようが失敗しようが、結果はどうあれ、その過程の部分こそが一番楽しい時期なのではないでしょうか。「いきなり名前を聞いたりして変に思われないだろうか」とか「メアドを聞きたいけど、断られたらどうしよう」とか、相手との距離の取り方を図りかねて、悩みに悩んで床を転げまわっていた若かりし頃の水色の思い出というのは、今にして思えば本当に貴重です。歳を取ると神経が図太くなって、あの頃のナイーブさというのは失われてしまうのですよね(今うなずいた人、おっさん認定)。

 「きみといると」は、そんなまだピュアであった頃の恋心を思い出させてくれる作品であり、若い読者なら、なお共感を持って読んでもらえるかもしれません。ただし本作最終第4巻に関しては、それまでじわじわ進んできた2人の気持ちがせきを切ったようにあふれ出す、角砂糖に蜂蜜をかけたような、蟻も避けて通るほどの甘々展開なので、あらかじめ【閲覧注意】指定にしておきます。

 ちなみに先月発売された最新刊「うぶうぶふうふ」(全1巻)は、そのタイトルにもあるように、初めての赤ちゃんをもうけた夫婦が、また一から「なかよく」なるお話で、これもまた「だんだんと」がテーマになっています。社主は独身なので本作のようなことが本当にあるのか、実はよく分からないのですが、もし「分かります!」という方がおられたら、ぜひ感想をお聞かせください。また「コミックハイ!」5月号からは、新連載「つうがくろ」も始まります。

 昨今SNSなどが普及したことで出会いにもさまざまな形が生まれ、総じて異性と交流するハードルが下がった感はありますが、いくら最初のハードルが下がれど、本質的には生身の人間同士の付き合いであることに間違いないわけで、そういう意味では若い読者のみなさんには好きな人と手をつなぐのに3巻分かかるようなピュアな恋愛をしていただきたいなあ、とジジイじみた願望を述べつつ、これにて筆を置きます。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

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