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「トップアイドルになれば地球侵略できんじゃね?」 かつてない発想で地球征服に挑む、イケメン宇宙人たちの熱血アイドルコメディー「ドルメンX」

「虚構新聞」社主UKによる漫画紹介連載「ウソだと思って読んでみろ!」。第71回は、アイドルを目指してイケメン宇宙人たちが奮闘する「ドルメンX」です。

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 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。こんな名前ですが特に離脱は考えてません。

 さて、今回紹介するマンガは「ヒバナ」(小学館)にて連載中、高木ユーナ先生のアイドル男子コメディー「ドルメンX」(〜3巻、以下続刊)。「んー、アイドルものかー」と何気なく読み始めた芸能オンチの社主が、気付けばガッツリ引き込まれてしまっていた、トップアイドルを目指すイケメン4人の奮闘ぶりが熱くて楽しい作品です。


ドルメンXドルメンXドルメンX 「ドルメンX」(〜3巻、以下続刊)→試し読み

 ストーリーもさることながら、何より魅力はそのテンションの高さとスピード感。次から次にやって来るイベント、ノリのいい掛け合いや見開きの大ゴマを使った怒涛(どとう)の展開は、さながら連続ヘアピンカーブを右へ左へぶんぶん振り回されながら一気に駆け下りていくような感覚で、3巻通読しても速い速い。純粋に笑えるマンガ、それでいて熱さと予想外を楽しみたい人におすすめの1作です。



トップアイドルになれば地球侵略できんじゃね?

 本作の主人公、最初に「イケメン4人」と書きましたが、正確には、隊長、イチイ、ニイ、サイのイケメン“宇宙人”4人と、地球に来てドルヲタ女子と化したヨイの計5人。

 「豊かな富を持つ地球を汚すことなく、戦争はしないで地球人に気づかれないように侵略」するためにやってきた彼らは当初、高校球児にまぎれて甲子園を目指したり、選挙に立候補したり、あくまで平和的に地球征服を企みます。が、どれも上手くいかず「無理じゃね?」と気付き出す4人。今頃か!

 そんなとき、アイドルのブロマイドを掲げた祭壇にひれ伏すヨイの姿を見たサイが思い付きます。

 「地球でトップアイドルになったら、地球侵略できんじゃね?」


ドルメンX 「地球侵略できんじゃね?」 そこに気づくとは……

 確かに一線越えたドルヲタはある種の信者。しかも顔だけは割とイケてるこの4人、よく見れば隊長(クール系)、イチイ(熱血系)、ニイ(フェロモン系)、サイ(インテリ系)とうまい具合にジャンルも分かれている。

 地球侵略を成し遂げるためにはトップアイドルになること、トップアイドルになるためにはまずアイドルになること、アイドルになるためにはまず事務所に入ること、事務所に入るためにはまず実績を作ること、実績を作るためにはまずオーディションで結果を出すこと――と言うわけで、地球征服の第一歩として、彼らは雑誌のモデルオーディションに応募します。

 見た目の自信から、最初は何とかなるんじゃないかと余裕を見せる侵略者たち。けれど、書類審査、地方面接、読者投票と選考が進むにつれて脱落者も出始め、その当落に一喜一憂する彼らの姿は、今は懐かしいオーディション番組「ASAYAN」のごとし。そしてまたその中で、アイドルとはカッコよさだけで通用するものではないことを痛感するのです。なぜなのか。

 「イケメンって物理じゃなくて概念だから。」

 第1話でヨイが言い放ったこの言葉。最初は4人と同じく「はぁ?」でしょう。しかし読み進めるほどに、彼女の言った意味が分かるようになります。この世界、物理(外見)だけでやっていけるほど甘くない。うん、確かにイケメンは概念だ。

 その後「実は宇宙人」という“設定”で、アイドルユニット「ドルメンX」を結成する4人。物語は駆け出しアイドル「ドルメンX」がトップアイドルになるため、文字通り血のにじむようなレッスンと、知名度を上げていくための地道な努力を描く展開へと大きく変化していきます。


ドルメンX 隊長「ドルメンX、でげす!!」

 で、ここからの展開がとにかく熱い! 特に見どころはライバル意識むき出しな彼らのゆがんだ表情。泣いてゆがみ、嫉妬でゆがみ、笑ってゆがみ、アイドルなのにとにかくみんな顔がゆがむゆがむ。しかもその上、鼻水も垂らすしゲロも吐く。

 ここまで書いて「あれ、アイドルマンガ紹介してるんだったっけ?」と自分でも不安になるほど、熱い気持ちを熱いセリフに乗っけてぶつけ合う姿は、もうこれ完全にスポ根です。重いコンダラを引っ張る球児は絶滅したかもしれないけれど、ゲロ吐くほどランニングし続ける少年たちの姿が今ここにあります。



ダサいけどいい、むしろそこがいい!!

 作中に登場する、若手アイドルたちの2.5次元ミュージカル「リキミュ」こと「力士の貴公子」。「イケメンたちがふんどし姿で華麗に相撲を取る」という、どうにもギャグにしか聞こえない内容ですが、これを演じ切るため彼らが必死でやってきた努力、そして舞台上ではそれを全く感じさせない完璧なパフォーマンスに、(不覚にも)感動してしまいました。理性では「いや、よく考えたら変な話だよこれ?」なのだけど、そんな小ざかしい理屈も、舞台から発せられる若く熱いエネルギーの一喝が一瞬にしてかき消してしまうのです。

 「ダサいけどいい むしろそこがいい!!」とは、またもやドルヲタ・ヨイの言葉ですが、トップアイドルを目指す4人の姿だけでなく、「ガチのファンとはどうあるべきか」を示す彼女のセリフにハッとさせられることも多いです。

 アイドルにせよ、ゲームにせよ、それをダサいと思って遠くから見ている人は、目に見える部分だけで判断しているのではないか。逆に言えば、ヲタはそのダサいの向こう側――「むしろそこがいい!!」――を見ているのではないか。「リキミュ」からはそんなことにも気付かされました。

 「イケメンは概念」「むしろそこがいい!!」。どちらもアイドルを知るうえですごくいい言葉だと思います。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

(C)高木ユーナ/小学館


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