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インタビュー

「2020年には世界で最も多くのオリジナルコンテンツを手掛ける制作者に」 Netflixの最高コンテンツ責任者、野望を語る

「品質」と「編成力」を重視しているとNetflix。

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 2015年9月に日本でサービスインし、ストリーミングサービスの認知度を一気に引き上げたNetflix。「テラスハウス」の新シーズンや、芥川賞受賞作「火花」のドラマなど日本オリジナルのコンテンツも用意するなど、コンテンツ制作の視点でも注目すべきプレーヤーとなりつつあります。

 Netflix躍進の秘密はどこにあるのでしょうか。NetflixでCCO(最高コンテンツ責任者)を務めるテッド・サランドスに疑問をぶつけてみました。

Netflixのテッド・サランドスCCO
Netflixのテッド・サランドスCCO。6月末にはサランドス氏のほかNetflixの経営幹部が来日

「従来のテレビで期待されている内容より、大規模に、またよいものを」

―― 最近のNetflixに向けられる興味は、サービスからコンテンツに移っているように感じます。日本だと、先日Netflixが独占配信した「火花」が象徴的ですが、サービスインしている国々のオリジナルコンテンツを制作し、それをグローバルで配信するアプローチを見せるプレーヤーは例えばHuluやAmazonプライム・ビデオ(Amazon.com)が挙げられますが、差別化のポイントは?

テッド Netflixが重視している「品質」と「編成力」で差別化できていると思う。

 他の事業者のオリジナルコンテンツというと、従来のテレビで見られるような内容が多いように感じる。われわれは、従来のテレビで期待されている内容より、さらに大規模に、またよいものを作り上げることを志している。「火花」も各方面から高い評価を頂き、制作にも手応えを感じている。

Netflixオリジナルドラマ「火花」キャスト陣
「火花」キャスト陣。左から好井まさおさん(山下役)、林遣都さん(徳永役)、波岡一喜さん(神谷役)、村田秀亮さん(大林役)

―― ストリーミングサービスが人気ですが、従来のテレビ放送からトレンドが変化していると感じる?

テッド 一過性のトレンドではなく、完全に構造が変わったように思う。それによって消費者も、いつでもどこでもどのような形でも、見たいコンテンツを楽しめる。もう以前には戻れない状況ではないか。

 これはよいことだと思うし、従来のテレビ放送も今後、オンラインでコンテンツを提供するようになるだろう。この流れに至るまでは、想像されていたよりも少し長く掛かったかなと思う。

より複雑な工程を追加するのではなく、極力複雑さを省く

―― 「火花」が芥川賞を受賞したのは2015年7月で、Netflixでオリジナルドラマの配信が始まったのは2016年6月、決定から制作を経て世界同時配信するまで1年掛かっていません。このスピードを可能にしているNetflixの制作体制に興味があります。

テッド 私の視点で行っていることで言えば、「より複雑な工程を追加するのではなく、極力複雑さを省く」ことに努めている。Netflixでは何百人もの言語スペシャリストを雇っていて、翻訳も方言などのニュアンスまで含め正確に対応できる。「火花」もそうだが、全話を一挙配信していることから分かるよう、毎週毎週限られた時間で慌てて制作する従来のテレビのコンテンツと比べると、(制作)時間はあるものだ。

―― クオリティーを保ちながらそのスピードで制作できるんですね。ところで、「シドニアの騎士」「亜人」「BLAME!」など、厳選した日本のアニメをグローバルで独占配信しているのも興味深いです。最近だと、Netflixがハリウッド版「デスノート」の制作を発表すれば、Huluも最新映画につながるオリジナルドラマ3作の配信を発表するなどしていますが、日本のアニメはグローバルでどんなニーズがあると見ている?

テッド アニメは日本以外にも大きな需要がある。われわれが考えるのは「最高のものを提供したい」ということに尽きる。現在も複数のスタジオと制作が進行しており、多くの方に楽しんでいただけるものが提供できるだろう。

―― そもそもNetflixは自前の制作スタジオなどを持っている? それともパートナーと?

テッド 両方ある。Netflixが物理的なスタジオを所有しているわけではないが、スタジオ部門はあって、スタジオをレンタルして制作することもあれば、パートナーとともに制作することもある。

マイク・コルターウゾ・アドゥーバ、ルビー・ローズ 「Marvel ルーク・ケイジ」のマイク・コルターや「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」のウゾ・アドゥーバ、ルビー・ローズなどキャスト陣も来日し、存在感を見せつけた

メジャータイトルとオリジナルコンテンツのバランスは?

―― 少し別視点から。NetflixとMarvelとの共同製作ドラマは「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」ときて、9月30日には第3弾となる「ルーク・ケイジ」の世界同時配信も始まります。また9月以降、米国ではディズニーやピクサーの最新映画を独占配信していく計画もお持ちですよね。メジャータイトルとオリジナルコンテンツのバランスはどう見ていますか?

テッド オリジナルコンテンツも、トータルの編成も成長していくということ。その中で、スタジオや他の放送局とのパートナーシップも拡大したい。映画、ドラマ、ドキュメンタリー、スタンドアップコメディーなどの拡充を進め、2017年度はコンテンツを今の倍にすることを目標にしており、2020年には世界で最も多くのオリジナルコンテンツを手掛ける制作者になることを願っている。クリエイターの皆さんには味方がいるのだと思ってほしい。

―― 従来のテレビ的なコンテンツを増やす考えは?

テッド あくまで消費者が見たいものを増やしていきたい。最近だと、スポーツエンタテインメント「Ultimate Beast Master」や、トークショー「チェルシー」などの配信もある。4年前はオリジナルコンテンツを全く持っていなかったが、今はここまで増やすことができた。消費者が望むならそうなっていくだろう。

―― ユーザーが望むならライブ的な生放送も視野に入る?

テッド 需要があればそうしない理由はないと思う。ただ、われわれが持っている価値は、“オンデマンド”だと考えている。そうした意味では、見る時間が固定されるライブストリーミングはそれと矛盾する気もしている。

Netflixのテッド・サランドスCCO
サランドス、答えてくれてありがとう!

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