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「シン・ゴジラ」の大人気理系女子・尾頭さんに論破されてごめんなさいしたいあのキャラに花束を

どんな私生活を送っているんだろう……。

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 庵野秀明総監督、樋口真嗣監督の映画「シン・ゴジラ」が大好評上映中。怪獣映画がこの時代に、ここまでヒットするとは! 主にネットの口コミがすごい。ついつい、おすすめしたくなっちゃうポイントがあっちこっち多すぎる。


画像 「怖い」と評判のガッズィーラ(公式サイトより)


 

 とりわけネットで話題になっているのが、市川実日子さんが演じる尾頭(おがしら)ヒロミ環境省自然環境局野生生物課課長補佐。長い。実在する役職なんですって。


画像 ふと横を向いてこんな顔見ちゃったら、ほれますって(予告編より)

 表情をほとんど変えない彼女。ぼくはひと目で心をわしづかみにされました。彼女を見ていると、頑張ろうって気持ちがわいてくる。



マシンガン論述

 致命的なネタバレは避けつついきます。

 尾頭さんの最大の特徴は、早口……というレベルじゃないな、句読点なしで一気にしゃべる。随所で彼女が調べた結果を報告するシーンがあり、そのほとんどが、1つのセリフを息継ぎ無しで一気に言う。1回で聞き取るのは困難。しかも長い。専門用語なので分かりづらい。

 普段は寡黙。必要なときにマシンガンのようにしゃべる様子。別にコミュ障ではありません。とはいえ相手が聞き取ることに気を遣った口調ではない。

 濃いキャラ付けなんですが、理由があるのは聞いてみると分かります。年上や男だらけの場で、彼女なりに会議に口を挟み込んで論じる術、合理的で無駄のない、相手に負けないしゃべり方なのです。一朝一夕で身につくような話し方ではないです。社会人になってから(あるいは学生時代かな?)いかにたくさんの情報を端的に伝えるか考えているうちに、早くなったんでしょう。

 彼女は別にSじゃない。相手を打ち負かそうとはしていません。事実を場に納得させなければいけない、命にかかわる。相手が勘違いしていたら、なにがなんでも、絶対道理を通さねばならない。その思いが、彼女のゆるがない口調にしっかり出ています。

 特に描写はないけれど、彼女の淡々としたしゃべりを見ていると、今までどんな仕事をし、どんな人生を送ってきたのかがうっすら見えてきます。高校時代とか、ほら想像できるでしょう?



変わらない表情と髪形

 見た目はあまりこだわらない。普通のスーツを着て、髪の毛はちょっと跳ねている。なんといっても、すっぴんのような顔。もう一人のヒロイン、カヨコがアメリカンでド派手で身振り手振り大きいので、どうしても地味〜なのが強調されます。

 そして、全くと言っていいほど変わらない表情。まわりが状況の変化で顔を白黒させているため、あまり変わらない彼女はめちゃくちゃ目立ちます。動きも小さくコンパクト(かわいい)。

 「エヴァンゲリオン」と比較するなら、意思と感情のはっきりした綾波レイ、落ち着いた伊吹マヤ、といったところでしょうか。


画像 ものすごい意志の強さを感じます(予告編より)

 ぼくが最も心に響いたのは、目つきの悪さ。まるでアニメのキャラクターのようにむっすりしている。あんな演技できるものなんですね。常に不機嫌そうな彼女、何を考えているんだろう? 

 尾頭さんは「分からなさ」から生まれる萌えを見事にかっさらっていきました。

 無口だったり、感情が露わにならなかったり、出番が少ないキャラクターは、どうにも思考が読めない。「分からない」は、「知りたい」と「こうであってほしい」の2つの想像力をかきたてます。特に「どうとでも取れる」想像の余地が残されたキャラクターには、自分の願望を詰め込める。

 尾頭さんは、ひょっとしたら詳細な設定もあるのかもしれないけれど、観客の想像・妄想を重ねても問題なく楽しめる強度も持っているキャラクターです。尾頭さんに限らず、この映画の登場人物全員にいえることでもあります。



尾頭と安田とカヨコ


画像 全員が主人公(予告編より)

 この映画は、人間はみんな一生懸命なのが実にいい。身を粉にして必死になって戦う人もいれば、生きるための決断を強いられる人もいる。

 尾頭さんも、真実を解き明かす自分の任に対して全力で挑んでいます。ドタバタしないので分かりづらいのですが、彼女は彼女なりに、ずっと一生懸命。冷静沈着、というよりも、自分の心を必死に落ち着かせ続けているんじゃないかな。ここで自分が折れるわけには絶対いかないですから。

 彼女の頑張りの対比になっているのが、安田龍彦(彦の上は文)。日本文科省研究振興局基礎研究振興課課長。長い。これも実在するんだってさ。

 尾頭さんが淡々黙々と仕事をこなし表情を変えないキャラだとしたら、安田は皮肉るわ、焦るわ、ごたつくわ、一言多いわ。かなりオタク臭の強い、せわしないキャラです。マンガにしたら、きっと冷や汗かきっぱなしでしょう。


画像 「萌え」という言葉の意味を考えると、彼が一番萌えキャラじゃないですかね(予告編より)

 当然のように2人はあんまり空気があわない。安田はしょんぼりと尾頭さんに「ごめんなさい」と謝るシーンもあります。

 特別2人に関係性がある描写はないのですが、全く性格が違う、けれどどちらも優秀でオタク、という画面内相乗効果で、お互いをめちゃめちゃ引き立てあってます。尾頭・安田・カヨコの三つどもえのキャラバランス、絡みはないけれども、キャラ立てで映画のノリを作るさじ加減が完璧。


画像 石原さとみ力が高すぎる超エリート美人、カヨコサン(予告編より)

 かくして、尾頭さん、安田、カヨコは現在進行形でもりもりファンのイメージを駆り立て中。

 特に大人の男女オタクから見て距離感を近く感じやすい尾頭さんは、後半のとあるシーンによる加速効果もあり、どんどん二次創作が膨れ上がり続けており、今となってはどこまでが本当の設定なのか、分からなくなってきています。「ゴジラVS尾頭さんだった」という意見を目にしてから見ると、そう見えてくる。いやそうだったのでは?

 もっとも尾頭さんだけでなく、ほぼ全てのキャラが立ちまくっているので、「ゴジラVS矢口蘭堂」「ゴジラVS自衛隊」「ゴジラVS片桐はいり」も成立するっちゃ、成立します。いやほんと、みんな頑張ってるんだって。みんな主人公なんだって。

 尾頭さんのキュートなところやクールなところ、あのセリフやあの視線、それぞれ全部「頑張っている結果」として表現されている。自分のためではないのもちゃんと分かる。

 頑張っている人たちを見ると、こっちも頑張ろうってなる。

 ありがとう尾頭さん、ぼく頑張るよ。
















たまごまご


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