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ぞわり! 魚の骨格標本を集めた写真集「魚骨 UO BONE」のリアルさに思わず鳥肌司書メイドの同人誌レビューノート

美しくも荒々しい姿に驚きと畏怖を感じます。

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シャッツキステ

 今日のご飯は何にしますか? 温かい麺類やお鍋がおいしい時期ですね。それから、ほかほかの白いご飯に焼き魚もしみじみおいしい晩秋……。満腹になったその後で、お皿に残った魚の骨をしみじみ見つめてしまうような同人誌に出会いました。

今回紹介する同人誌

「魚骨 UO BONE」vol.1 A5 20ページ 表紙・本文カラー

著者:いぞらど


同人誌「魚骨 UO BONE」同人誌「魚骨 UO BONE」 白々と深海を泳ぐそのままのような姿と、みっしりつまった歯にぞわっ!

クリーチャー!? いえ、ただの魚です

 まずは写真をご覧ください。「うわ、なんですかこれ!?」と私はのけ反ってしまいました。こちらは魚の骨格標本を撮影した写真集です。黒を背景に浮かび上がる白い骨、レントゲンのような陰影のついたモノクロの写真と、淡く黄色みを帯び、細部の作りまでじっくり見ることのできる2通りのパターンで、いろいろな角度から骨格標本に迫ります。図鑑だって、魚屋さんだって、とかく魚の横顔だけを見ることが多いのですが、鯉の正面顔ってこんなに四角いんですね……。

同人誌「魚骨 UO BONE」
「四角い叫び」とでも名付けたいようなシルエットです

迫力と困惑。魚ってこんなでしたっけ?

 とにかく「私の思っていた魚と違う!」というイメージの瓦解の連発です。あああ、こんなにたくさんの歯を備えている魚がいるんですか。これ粘液を伴って、ホラー映画で陰から襲ってきそうなお顔立ちではないですか。ちょっと特撮映像「巨神兵東京に現わる」を彷彿(ほうふつ)とさせます……。

 タチウオは長い顎を持っているのに、前歯もものすごく強そうなんです。くるんと丸みを帯びた歯のラインはさくっと獲物に突き刺さりそう。その上、歯の先は釣り針みたいにかぎ状になっていて「狙った獲物は逃がさない」的な気概を感じる前歯です。タチウオって、皮がきらきらして、身はくせのない味で……と食べることしか考えていなかったのですが、「一対一で戦ったら負けるかもしれない」とさえ考えてしまう、魚の新たな一面と否応なく向き合ってしまいます。

 日常の中で出会う魚って、食用か鑑賞のどちらかのパターンで出会うのが常で、それらはすっかり手のひらの中に収まる形でイメージが固定されていました。でもこの本に登場する魚たちは、身をそぎ落とした骨格だけになったことで、「魚が生態系の中で他者を捕獲して生きている」という当たり前の、でも見落としていたことを眼前にぱっと見せつけてくれます。

同人誌「魚骨 UO BONE」
かぎ爪みたいな前歯に注目です

細部と見つめ合う、造形美

 骨格の写真を見つめていると、ぞわりと背中に寒気が走ります。それは写真の中に意外な凶暴性を感じたり、固定概念と違う作りを見たときの驚きと畏怖。それが骨格になって、しかも細部までありありと映し出されることに、ぞわぞわが止まりません。

同人誌「魚骨 UO BONE」
あー! 襲われたらひとたまりもなさそうな迫力……

同人誌「魚骨 UO BONE」
こんな歯ってありですか!? インパクト強すぎです!

 一方で、華奢(きゃしゃ)な小骨が規則正しく並んでいるさまや、向こう側が透けて見えるほど薄い骨を、美しいとも思います。エゾクサウオの複雑な、それでいて流線型の骨格は、力強い水墨画の趣を感じますし、皮や肉という質感を無くしたウミスズメの骨格は、精巧なペーパークラフトのよう!

 自然のものが、あるがままそこにあるだけで、恐怖と美しさを持っていることを見せつけられる写真集です。作者さんの骨格標本の実物は近々イベントで見ることができるそうなので、間近でじっくり眺めて見るのも新たな発見があるかもしれませんね。

同人誌「魚骨 UO BONE」
モノクロの流線が優美に見えます

サークル情報

サークル名:いぞらど

次回参加イベント予定:博物クリスマス(2016年12月12〜18日)


今週のシャッツキステ

シャッツキステ
モノクロの写真……メイド服も白黒の組合せ! と、背中合わせで意味深な雰囲気を狙ってみたものの、この後「腕を組んだりしてみたい!」「もっとこう、前に手を伸ばす感じで!」と撮る方、撮られる方の要望が謎な方向にエスカレートしていったのでした……

著者紹介

司書メイド ミソノ
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

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