漫画『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』(著者:佐倉色/編集担当:畑北斗)について、6月12日に編集部の見解を掲載し、飛鳥新社に事実確認を求めていましたが、6月30日現在、納得のいく回答や対応は得られていません。編集部としてはあらためて飛鳥新社に強く抗議するとともに、今後は弁護士同席の上で話し合いの場を設け、速やかな対応を求めていく所存です。
漫画『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』は、佐倉氏が2015年から2016年にかけ、少年エース編集部(KADOKAWA)とトラブルになった様子を描いた告発漫画です。作中では、ねとらぼがこの件を記事で紹介し、佐倉氏がそれに対し削除依頼を行ったときのことも描かれていますが、「(佐倉氏の漫画を)事前報告なく全ページ使用した」「一方的に電話を切った」など、明らかに事実と異なる表現が多数みられたため、編集部から飛鳥新社に対し、速やかな事実確認を行うよう求めていました。
飛鳥新社の回答について
編集部からの問い合わせを受け、飛鳥新社は6月23日、「『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』について」と題した声明文を発表し、今回の書籍内容について、出版社として裏取り(事実確認)は行っていなかったことをあらためて明かしました。また、こちらが「事実と異なる」と指摘した内容については「改めて著者にも確認しましたが、事実を記載したという回答であった」としています。
しかし、作中では「ねとらぼの記事はその殆どが私のブログの文章で構成(文章は編集部で書き起こしており、ブログからの転載は行っていない)」「一部引用ではなく全2ページの漫画を丸々使用(漫画の引用は一部であり、全ページ使用といった事実はない)」など、当時のアーカイブを確認すれば、明らかに誤りであると分かる描写も少なくありません。飛鳥新社および佐倉氏がどのような判断で「事実を記載した」というコメントを出したのかは不明です。
飛鳥新社の佐倉氏への対応について
今回、飛鳥新社は声明文の中で「編集過程において記載内容の真実性の確認がどのように行っていたかについてお答えすれば十分と存じます」とし、「全ての事実の一つ一つに関して裏どり」はしていないが「真実性の有無、誇張の有無・程度などを総合して判断した」「編集者としての注意義務を尽くしております」と書いています。
しかし、本件で重要なのは「外部からの指摘があったにもかかわらず『著者が真実だと言っている』の一言で済ませ、その検証をしたかどうかを含め、その確認の詳細について何ら説明を行っていない」ことだと考えます。今回、飛鳥新社があくまで「著者に確認させる」という姿勢をとったことは「事実確認の責任は全て著者にある」という表明とも受け取ることができ、結果的に佐倉氏は、飛鳥新社の声明文という公の場で、さらなるウソを重ねる形になってしまっています。
裏取りについて
ねとらぼの場合、他者に不利益をもたらす可能性のある情報については細心の注意を払って扱い、信憑性に疑問のある情報の場合などには、必要に応じて複数の証言者に取材するなど事実確認に努めています。佐倉氏の記事においても、詳細を確認すべくKADOKAWAに取材を申し入れています。また掲載後に事実と異なるなどの指摘があった場合には、速やかに修正や追記を行うなど真摯(しんし)に対応しています。
「事前確認の約束を破った」とのコメントについて
また前回の記事を掲載するにあたり、担当編集である畑北斗氏にも電話で問い合わせを行いましたが、その後佐倉氏は「とある新人漫画家〜」の宣伝アカウント(@toaru_shinjin)で、記事について次のようなコメントを出しています。
ここで書かれている、ねとらぼ編集部と畑氏とのやりとりについても、やはり事実誤認や脚色が散見されます。第一に「飛鳥新社は取材を受けたのではなく、『エッセイに事実と違う箇所があり、その確認を佐倉色にしてほしいのだが連絡を取ることが出来るのか』という旨を受けて対応を取ったようです」とありますが、編集部が事実確認を求めたのは飛鳥新社に対してであり、佐倉氏への確認を依頼した事実はありません。
第二に、「事前に飛鳥新社にメールを送り、私が更にそれを確認する……という約束だったそうですが、私も飛鳥新社も確認は一切しておりません」の部分です。事前に確認メールを送る約束をねとらぼ側が破ったように書かれていますが、そのような約束もしておりません(具体的にどんなやりとりがあったかは立証可能です)。
編集部はその後畑氏に対し、速やかなコメントの訂正を求めましたが、畑氏から回答はなく、コメントは現在も佐倉氏の名義でそのまま掲載され続けています。
弁護士同席のもと話し合いの場を設けるよう申し入れを行いました
以上のように、飛鳥新社の回答は極めて不誠実であり、もし今後も同様の対応を取られるのであれば、非常に残念な対応と言わざるを得ません。編集部としては大変遺憾です。
取り急ぎ、弁護士同席のもと事実関係確認の場を設けたい旨、飛鳥新社に申し入れを行いましたが、飛鳥新社側は現状、話し合いに対し消極的です。これ以上の不毛な“文通”は編集部としても望みませんので、飛鳥新社および畑氏には一刻も早い、誠実な対応を期待します。
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