パシフィコ横浜で開催されているMicrosoft Tech・Edの3日目のセッションで、チーム開発に向け大変革を遂げたVisual Studio 2005 Team Systemの解説が行われた。
Visual Studio 2005 Team Systemというその名称からも分かるとおり、今回のVisual Studioのバージョンアップでは、システム開発におけるプロジェクトチーム全体のためのツールという変貌を遂げている。今までのVisual Studioがプログラムをコーディングする、コアな意味での開発者向けのツールであったのに対して、Visual Studio 2005 Team Systemは、システム設計からテストや運用までも包括した、そのライフサイクル全体をカバーするツールとなっているからだ。
マイクロソフトの定義によれば、システム開発に携わる人々を役割ごとにそれぞれインフラアーキテクト、ソリューションアーキテクト、開発者、テスト担当者、運用担当者、プロジェクトマネージャというように分けて位置付けている。インフラアーキテクトやソリューションアーキテクトはいわゆる設計工程を担当し、開発者はコードの実装を担当し、テスト担当者や運用担当者はシステムの信頼性を維持させる。もちろん、プロジェクトマネージャは開発チーム全体を統括する。
Visual Studio 2005 Team Systemでは、これらの役割を持ったチーム内の担当者に対して、それぞれの役割に合ったツールが提供される。まず、上流工程である設計段階を担当するアーキテクト向けには、Visual Studio 2005 Team Edition for Software Architectsが、また、開発者にはVisual Studio 2005 Team Edition for Software Developersが、テストや運用担当者にはVisual Studio 2005 Team Edition for Software Testersがそれぞれ提供される。これら3つのTeam Editionを包括したVisual Studio 2005 Team Suiteというパッケージが用意されている。さらにこれに加え、開発チーム全体の情報を一括して管理するためのVisual Studio 2005 Team Foundation Serverというサーバ製品もあり、これらすべてのVisual Studio 2005 Team関連製品を統括してVisual Studio 2005 Team Systemと呼ぶ。
Visual Studio 2005 Team Editionの製品中、for Architects、for Developers、for Testersのそれぞれに共通するアプリケーションとして、Visual Studio 2005 Professional Editionがある。これは開発ツールとしてのVisual Studioであるので、当然のことながらこれを外しては成り立たない。加えて、Visual Studio 2005 Team Foundation ServerのクライアントとなるTeam Explorerと、クラスデザイナ、Visio for Enterprise Architectsが含まれる。クラスデザイナは、ソースコードと100%自動同期可能なクラス定義をビジュアルに行うツールだ。
Team Edition for Architectsの独自の機能として、分散システムデザイナと呼ばれるツールがある。これは、システム全体の設計を行うためのツールで、アプリケーションデザイナ、システムデザイナ、論理データセンターデザイナ、配置デザイナの4つで構成される。
Team Edition for Developersでは、コーディング時のルール違反やエラーを分析する静的コード分析、コードの実行状況をプロファイルしてパフォーマンスチェックが可能となるコードプロファイラ、単体テスト用のテストクラスの自動生成機能や、どれだけテストが実行されたかを把握するためのコードカバレッジ機能などが搭載されている。
Team Edition for Testersでは、for Developersに搭載されている単体テスト機能やコードカバレッジ機能に加え、Webアプリケーションのテストを自動化するためのWebテスト機能や、Webテストなどのシナリオに対して負荷をかけて詳細にテストを行うための負荷テスト機能などの、さまざまなテストのためのツールが提供される。
これら各Team Editionで作成される開発チーム全体の情報を一括して管理するのが、Visual Studio 2005 Team Foundation Serverだ。Team Foundation ServerにはSQL Server 2005が同梱されており、すべてのデータリポジトリとしてSQL Server 2005を使用する。具体的に言うと、開発者が実装するコードはもちろんのこと、アーキテクトが作成する設計、現場から上がってくる要求、プロジェクト全体の計画やその進捗、テストの結果やバグ報告など、開発チームの抱えるすべてのデータを一元管理する。そのデータをMicrosoft ProjectやExcelと連携させることができるようになっている。
従来のVisual Studioでも、ソースコードの一元管理を行うためのツールとしてVisual SourceSafeが提供されており、新バージョンのVisual SourceSafe 2005も用意される。だが、コードのチェックイン時に、チームで定めたルールを満たしていなければチェックインできないようにするポリシー設定機能や、チェックインされたコードと担当者のタスクを関連付けて管理できる機能、タスクを含む作業項目の管理、ビルドの自動化、リポジトリデータをビジュアルに表示するレポーティング機能など、プロジェクトマネージャが仕事をする上で役に立つさまざまな機能があるという点で、Team Foundation Serverのほうが優位だ。
いま紹介したVisual Studio 2005 Team Systemの機能を利用することで、開発生産性の向上および開発しているシステムの信頼性や堅牢性を確保するための助けとなり、開発チーム全体としての成功へと導くツールとして期待がもたれる。
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