インタビュー

「大神」はアートじゃない。すごく間口の広い、質の高いアクションアドベンチャーなんです「大神」発売記念インタビュー(1/3 ページ)

世界に命と緑を取り戻すために冒険を繰り広げるネイチャーアドベンチャー「大神」。その独特なグラフィックや、どこかで見たことのある登場キャラクターなど、見どころの多い本作について、クローバースタジオのキーマン2人に話を聞くことができた。

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 ついに発売を迎えたプレイステーション 2用ソフト「大神」。本作は「デビル メイ クライ」、「バイオハザード」、「鉄騎」などを世に送り出してきたカプコン第4開発部から、“もっと新しくて面白いモノを創り出す”という考えに共鳴したスタッフが集まって生まれたカプコンの開発子会社「クローバースタジオ」のオリジナル第1弾となるタイトルだ。

 のどかな大自然を舞台に、人間や動物との触れ合いを楽しみ、和紙や筆といったアナログだが暖かみのある、日本の「和」を存分に感じることができるネイチャーアドベンチャー。そんな一風変わったジャンルに位置する本作には、筆タッチで描かれた独特なグラフィックを始め、主人公「アマテラス」が使う森羅万象を操る神の力「筆しらべ」といった斬新なゲームシステム、日本人であれば誰でも聞いたことがある昔話をモチーフとした登場キャラクターなど、語るべき部分がとても多い(詳しいゲーム内容は本記事最後にある各リンク先を参照してもらいたい)。

筆しらべのひとつ「桜花~花咲の力~」を使えば、枯れていたはずの木がよみがえり、花が咲き乱れる

 あまりに多すぎて、どこをフィーチャーするべきか迷うぐらいだ。これは開発陣に直接聞いてみるのが一番だろう。そこで大神を生み出すにいたった経緯や、作品に込められた思いを尋ねるべく、大神のプロデューサーを務める稲葉敦志氏、ディレクターを務める神谷英樹氏の元を訪れ、いろいろと話を聞いてみた。

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“大自然を描く”からスタートした

―― クローバースタジオ設立から約2年。大神は長く温め続けてきた作品です。改めて開発に至ったきっかけを教えてください。

稲葉敦志氏

稲葉敦志氏(以下、稲葉) 「ビューティフル ジョー」の開発が終わった時、神谷に“次のネタは何かありますか?”と聞いたのがきっかけです。あればそれをクローバースタジオのオリジナル第1弾として出そうと思っていました。なくても何か考えてもらおうかなと(笑)。とにかくクローバースタジオの第1弾は、神谷にディレクターをやってもらおうと考えていたんです。そこで“落ちモノパズルがやりたい”とか言われるのはもちろん想像していなくて、何か神谷らしいものが出てくると思っていました。
 そうしたら“大自然を描きたい”という、別の意味で想像していなった答えが返ってきた。印象のギャップってあるじゃないですか? 「バイオハザード」や「デビル メイ クライ」、ビューティフル ジョーにかかわってきたクリエイターが、大自然って(笑)。ただ、その発言のギャップに食いついちゃったんですよ。

―― ビューティフル ジョーの後でしたし、そのギャップは相当なものであったことが想像できます。神谷さんは“大自然”というものに対して、何か思うところがあったということですか?

神谷英樹氏

神谷英樹氏(以下、神谷) 僕が田舎の出身だからだと思います。高校卒業後に東京に来て、それから大阪に移ったんですけど、どちらも大都市ですよね? そこで生活するようになって、改めて自然の良さを感じたんです。都会は便利ですし、じゃあ今から田舎に戻れと言われても難しいと思いますけど、気持ちが落ち着かない面がありました。どんどん郷愁が膨らんでいったというか、自然に対する思いが強くなっていったんです。

―― “自然を描きたい”というのは、稲葉さんからアイディアを求められたから出てきたんですか? それともいつか作品として世に出したいという気持ちを初めから持っていたのでしょうか?

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神谷 稲葉から話が来たタイミングというのはもちろんありますが、それだけではありません。大神の前に開発していたビューティフル ジョーは、すごく小さいチームで作ったタイトルでした。一方の大神はクローバースタジオの第1弾ということで大きいチームになります。大自然というダイナミックなものの場合、大きいチームでないと表現できないんですよ。稲葉から話が来たタイミング、クローバースタジオの第1弾で大きいチームでの開発だったこと、ほかにもいろんな要素のタイミングが合致したというのがあります。

―― なるほど、さまざまな思いを抱えていて、それらがうまく組み合わさったということですね。そして稲葉さんはそのギャップに見事に食いついてしまったと。最初に聞いた時には、ゲームとしてどのようなイメージを持たれたんですか?

稲葉 ゲームとしてのイメージはまったくわきませんでした。ただ勝手に思い描く情景ってあるじゃないですか? これまで自分たちが蓄積してきた技術を使って大自然を描く、そういうのもきれいでいいなぁ~と。剣で斬ったり、銃で撃ったり、これまではそういう殺伐とした画面ばかりを見てきたので、単純にいいなと思いました。

―― ゲームとしてのイメージがわかなかったとのことですが、大神のゲーム性はどのように詰めていったのでしょうか?

稲葉 僕のほうから神谷に、どのようなゲーム性を持たせるのか考えてくださいと投げました。“きれいな大自然”という作品の方向性さえ破らなければ、後はどう味付けするのも監督(ディレクター)次第ですから。

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神谷 “白いオオカミ(大神)のアマテラスが大自然を取り戻すために戦う”。この作品の核となる部分は、最初から揺らいでないです。ただ、その言葉だけではゲームにはなりません。“大神が走るとその道に大自然が生まれていく”というプロモーションビデオをチーム向けに作ったんですけど、それも単なる映像デモに過ぎない。
 僕がスタッフに伝えたのはあくまでイメージの部分だけで、僕の中にもそれをどうゲームにするのかというイメージは、まったくありませんでした。やっていけばうまく作れるんじゃないかと漠然と思っていただけで……。映像を最初に作ってから、ゲームを作っていきましたね。

―― ネイチャーアドベンチャー(アクションアドベンチャー)というのも、最初からは決まっていなかったんですか?

見た目はただの白いオオカミ、しかしその実体は神である主人公のアマテラス

神谷 ジャンルをどうこうというよりも、プレーヤーをオオカミにしたいというのが最初から決まっていたことです。白いオオカミの写真集を大学時代に見たんですけど、それがすごく良い写真集で。写真家自体がオオカミの群に混じって写真を撮ったというものなんですけど、オオカミの生態が生々しく分かるというか、自然そのものの生々しさがすごく伝わってくる写真集だったんですよ。そのような経験もあって、絶対に白いオオカミを主人公にしたいと思っていました。
 そうなるとオオカミを題材にして動かさない手はないというか、人間以上に躍動感のある生き物なので、アクションはおのずと出てきたという感じです。ただ完成した大神を見て思うのは、純粋なアクションゲームとは違うのかなと。タイミングを図ってシビアに何かしなきゃいけないというゲームにはなっていないんですよ。オオカミの躍動感を手軽に味わってもらいたかったですし、そこは表現できたと思います。自然も平らな地形だけじゃなくて、起伏にとんでいるので、そこを人間でとことこ登るというよりも、オオカミで跳ぶように登る。大自然ともマッチしてる主人公だと考えています。

―― 稲葉さんは先ほど“ゲームとしてのイメージがわかなかった”と言いましたが、神谷さんの中では、大神のイメージは結構固まっていたようですね。

神谷 ビューティフル ジョーもそうでしたけど、大神も絵には苦労しませんでしたよ。イメージも固まっていましたし、問題はそれをゲーム機上で表現できるかどうかだけでした。最初はリアルタッチにいこうということで、すごくリアルな、写実的な絵で作っていたんですけど、ハードの制約もあって、それだと自分たちの思うものが生み出せませんでした。そんな時に、デザイナーのひとりが筆タッチの日本画っぽいものをイメージイラストとして出してきたんです。これがきっかけとなり、今の筆タッチの日本画っぽいグラフィックになりました。
 でも、ここからが長かった。プロモーションビデオを何本か作っていますけど、2本目ぐらいまでは筆しらべの“ふ”の字も出てきてないんですよ。3本目で初めて筆しらべが出てきて、ためにためてようやく出したぞ、と見えるように作ってはいるんですけど、実はアイディアが固まっていなかったというのが正直なところでした。

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