連載

ゲームはチャレンジャブルな仕事。“ノー”からは何も生まれない――セガ 鈴木裕氏(前編)ヒライタケシの「投げる前から変化球」(その1)(1/3 ページ)

わたしたちは普段“ゲーム”をプレイすることはあっても、それを作り上げている“開発者”の素顔を知ることはあまりないかもしれない。そこで、ゲーム開発現場の生の声を、キューエンタテインメントの平井武史氏が直撃インタビュー。第1回目はセガの鈴木裕氏にご登場いただいた。

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 わたしたちは普段“ゲーム”を目にすることはあっても、それを作り上げている“開発者”の素顔を知ることはあまりないかもしれない。開発者はどのようなプロセスでゲームを作っているのか、またどのような思いで作り上げているのか……。そこで、ゲーム開発現場の生の声を、キューエンタテインメント最高技術責任者(CTO)である平井武史氏が直撃インタビューする形でお届けしよう。ゲームの開発現場に興味がある読者はもちろん、次代の開発者を目指す人たちにも必見となる連載にしていこうと思っている。

 その第1回として、セガ R&Dクリエイティブオフィサーであり、AMプラス研究開発部 部長の鈴木裕氏にご登場いただいた。鈴木氏は話すまでもなく、読者としてはおなじみの方かと思う。まずは平井氏との出会いから始め、現在の開発者が目指すべき方向について語っていただいた。なお、2時間もの長時間にわたりお話しいただいたので、前後編の2回に分けて掲載するので、読者の方もおつきあいのほどをお願いしたい。(ITmedia +D Games編集部)



キューエンタテインメント最高技術責任者 平井武史氏(左)、セガ R&Dクリエイティブオフィサー AMプラス研究開発部 部長 鈴木裕氏(右)

いきなり命じられた“シャドーボクシング”

平井武史氏(以下、敬称略) 僕と裕さんが最初に出会ったのは、僕はすごく覚えてるんですけど、1996年の春なんですよ。関西の拠点でとあるプロジェクトに配属されまして。軍隊で言ったら三階級以上上の方だったので、とても緊張した記憶があります。確か裕さんはR&Dで技術チーフをやってましたよね。

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鈴木裕氏(以下、敬称略) あーそういえば関西の出身だって言ってたんだよね。思い出しました。

平井 そうですそうです。あのプロジェクトに入って、今後半年間、この作業手伝ってもらいたいと、完成させたいと。当時はドリームキャストの前の、セガサターンの時代だったと思うんですが。で、4月から開始して、たぶん裕さんと直接お話したのが、秋ぐらいですかね。ちょうど「SGL」ていうライブラリがありましたよね、それの描画まわりを修正するときに、僕がカツ丼をおごってもらったんですよ。

鈴木 カツ丼……(苦笑)。

平井 夜中まで仕事してると、裕さんが「飯でも食えよ」みたいな感じで。あー名前覚えてくれてるんだなと。裕さんはいつくらいから覚えてますか? 僕と話したとか、仕事とかで。

鈴木 一緒に動いてる人はいっぱいますからね……。大体名前覚えない方なんですよ。年齢も教えられた時の年齢で覚えてるんですね。だから女性なんて年を取らないんですよ(笑)。

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平井 女性からしたら、すごくいいですね(笑)。

鈴木 聞いた時に25歳ならずっとそのまんまなわけです。おかしいよなーなんて思いながら。そんな感じなので、平井君については……彼いい仕事するとか、周りの噂で聞いていましたよね。彼は信頼できるとか、優秀だとか……。

平井 そこ強調して下さい(笑)。

鈴木 まあいろいろな話ですね(笑)。印象に残ってるのは、部下からも信頼されているっていう話と、あとはボクシングやっているって話かな。

平井 そうでしたね。金曜日に部長ミーティングがあったんですよね。部長ミーティングで、ホワイトボードに向かって、シャドーボクシングやってくれって言われたんですよね。ホワイトボードですよ。あんまり反射率がよくない、自分が見えにくい場所で、しかも10年ぶりくらいに。でも裕さんからの頼みなので、真面目にやらなきゃいけない。で、けっこう本気でやりましたね。そのときのボクシングや格闘とかのイメージを表すのに、周りの方に裕さんが伝えたかった。それでなんとなく、ですね。

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鈴木 いやぁ、喧嘩が強いんだろうなと思って(笑)。

平井 そんなことはないですよ(笑)。

鈴木 強い男ってのは、男なら誰もがあこがれるわけじゃないですか。よくテレビドラマにも出てくる、悪い奴をバシバシっとやっつけるとことか。見てみたいなーと思って。だから、何だろうね。意外性があるかどうかは別として、かっこいいじゃないですか。なんか「シェンムー」か何かのチームにもいたんですよ、1人。ちょっとずんぐりむっくりで、どちらかというとスポーツをする感じでもないと。その人が飲みの席で、ちょっとした演舞みたいなことをしてくれたんだけど、すごかったですね。すごいスピードで。振り上げた脚がパーっと頭の上に上がる感じで。なんか見違えましたね。

平井 その演舞をキャプチャーしようとか思ったんですか?

鈴木 もちろん思いましたね。これは本当に技だなと思って。なめて喧嘩なんてふったら確実にやられると(笑)。中途半端な人が弱そうだと思ってかかったら分からないですよ。そんなことがあってしばらくしてからだったから、ボクシングやるって言っていたので、見たいなと(笑)。

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平井 シャドーボクシングを(笑)。

鈴木 仕事ができるだけじゃなくて、やっぱり強い男ってのはかっこいいじゃないですか。で、ちょっとやってみて、ってことで(笑)。

平井 もう急に言われたんでね、びっくりしましたけど。

鈴木 はあはあ言ってましたよね(笑)。

平井 けっこう体力の限界でした(笑)。

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鈴木 ……今もう一度やってもらうってのも……(爆笑)。

平井 いやいやいや、もう勘弁してもらいたいです(爆笑)。でも僕もイメージはすごく残っていますね。今までの人生でも、いろいろな注文をされてきたとは思うんですけど、“裕さんはどんなところから変化球を投げてくるんだ?”という感じは初めてでした。

鈴木 さっき話した人はほんとにすごかったですね。回し蹴りもすごかったし、すごいスピードで。やっぱりいつもやってるってのは違うんですよね。でも、昔やってただけでもすごい自信になるだろうし、いろんな面で、仕事にも良い影響があるでしょうね。

平井 昔やっていたのって、精神的な部分で生かされてる気はしますね。心技体の心の部分で。

鈴木 部下と揉めても負けないぞ、みたいな(笑)。

平井 裕さんも武道とかお好きなんですよね?

鈴木 見ることはするんですよ。格好だけね。型とか。中国でも散々見たし。モーションキャプチャーの人に教えるために型を覚えたり。

平井 ヒクソンさん(格闘家のヒクソン・グレイシー氏)とお会いになったときは?

鈴木 ヒクソンさんの部屋に呼ばれてね。泊まっている部屋まで来てくれって言われて。取材終わった後かなり盛り上がっちゃって。

平井 立ち向かったらやられそうなオーラみたいなのってありました?

鈴木 それがあまりないんですよ。「八極拳」の老師もヒクソン氏も、立ち向かったらやられるっていうような、殺気みたいなのはないですね。ゼロと言っていかもしれません。老師の手を見ると、いい農民の手みたいな、分厚くて、暖かい感じだったのを覚えていますね。ヒクソン氏も決して大きな人じゃないし。だからどちらも“術”なんでしょうね。「柔よく剛を制し、剛よく柔を断つ」という言葉がありますよね、力に対して技で勝てるし、技に対しては力で押し切ることもできるという。ただしこのお2人はどちらも柔ですね。柔術だし、力じゃないですね。でもあれは力に勝つと思いましたね。あれだけ術が優れていれば。

平井 やっぱりリングに上がった瞬間違うんですかね。

鈴木 全然違うんでしょうね。

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