連載

ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ(第1回)――東京大学 大学院情報学環 馬場章教授(1/4 ページ)

「ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ」は、ゲームを学術的に研究するさまざまな人たちにフォーカスして、その研究内容や将来の構想についてうかがっていく。第1回目は、日本デジタルゲーム学会会長でありCESAの理事をつとめる、東京大学 大学院情報学環教授の馬場章先生。日本の最高学府では、どんな研究が行われているのか……?

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 近年、ゲームを学術的にとらえ、研究を行う人々が増えている。日本でも、東京大学、お茶の水大学、立命館大学、早稲田大学、東京工科大学、大阪電気通信大学など、さまざまな大学で「ゲーム」に関する取り組みが行われている。これらの事例はゲーム系メディアにおいても、新作発表などに比べていまひとつパンチが弱いせいか、なかなか注目されづらいという現状がある。筆者は数年前からこういった学術系の方々とご一緒する機会が多々あり、その見識の深さとゲームに対する愛情に驚かされることが多かった。

 「学術」と「ゲーム」という一見対極にありそうに思われるこの2つ、組み合わさると(失礼な言い方かもしれないが)実は面白い。今回からスタートする「ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ」では、ゲームを研究するさまざまな方にお話をうかがっていく。これから大学に進もうと考えている人はもちろん、学生時代が遠い昔に過ぎ去ってしまった人も、改めて「学問とは何か」、ゲームを通して見つめてみるのも良いのではないだろうか?

プロフィール

馬場 章(ばば あきら)

1958年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学史料編纂所助手を経て、同所助教授。2005年4月、東京大学大学院情報学環教授。

2003年、学生とともに制作したゲーム「組んでなんぼ」がゲーム学会第1回ゲーム作品コンペティションアカデミック部門大賞を受賞したことをきっかけに本格的にゲーム研究を始める。ゲーム研究として取り組んでいるテーマには、ゲームの面白さの定義や開発ツールの研究、ゲームが子供に与える影響など、学際情報学の概念を体現するようなテーマが多い。また、独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)では、「オンラインゲームの教育目的利用のための研究」を韓国と共同で進めている。2006年4月には日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)を設立して初代会長に就任、月例研究会や公開講座などを開催している。2007年9月には学際的ゲーム研究の国際会議DiGRA2007(Digital Games Research Association’s The 3rd International Conference)を東京大学で開催し、その組織委員長を務めた。さらに、歴史資料をもとにした「デジタルアーカイブプロジェクト」「歴史写真研究プロジェクト」など、アーカイブズスタディーズを基礎に、多岐にわたるプロジェクトを研究指導する。

東大で人気爆発? 国際色豊かな馬場研究室

―― まずは馬場研究室の成り立ちから教えてください。

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馬場章教授(以下、馬場/敬称略) 2000年の4月1日に現在所属している大学院情報学環という新しい部局が立ち上がりまして、そのタイミングで研究室を構えたのが直接の起源になりますね。デジタルゲームの研究を本格的に始めたのは2003年からになりますが、それ以前も少しずついろいろなことをやっていました。今で言うところの「シリアスゲーム(社会的に有用なデジタルゲーム)」研究の範疇に入るような研究です。しかし、デジタルゲームの授業など、教育も含めて本格的に始めるのは2003年からになります。

―― 今年になって、研究室の引越しもされ、徐々に規模が大きくなっているようですが……。

馬場 今、爆発的に研究室の規模が大きくなっています。もともとこの研究室は「デジタルアーカイブ」という、歴史資料のデジタル化、デジタルコンテンツ化ということを主なテーマにしていたんですが、2003年にデジタルゲーム研究の看板をはっきりと掲げました。それ以降特に学生が増えまして、今ではおそらく情報学環としては5本の指に入るくらい大きな研究室になってしまったのではないかと思います。

 先日、大学院修士課程の入学試験がありまして、その結果、来年度もさらに大きくなっていくことは確実だと思います。現在、研究室に所属している人はざっと40名程度ですが、すべてが学生ではありません。特任助教などの教員や研究室事務員、リサーチアシスタント(研究補助職の学生)や学術支援専門職員などのスタッフを入れて、約40名です。実は多すぎてもう収集がつかなくなっています(笑)。

―― 学生の方が希望される研究対象はデジタルゲームについてが多いのでしょうか。

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馬場 従来からのデジタルアーカイブについて研究したいという学生もいますが、増えているのはデジタルコンテンツですね。それもエンターテインメントコンテンツ。私のところではゲームだけではなくて、映画やアニメなどの研究も行っていますが、確実に学生が増えているのはゲームの研究です。

―― 学生は海外からも受け入れを行ってらっしゃいますね。

馬場 一番遠いところからはベネズエラから、近いところでは台湾、中国からですね。来年以降はアメリカやブラジルからも来ることになっているので、さらに国際色豊かな研究室になるでしょう。もともと東大は留学生が多いですし、その中でも私の研究室が所属している情報学環も留学生の割合は高いところではあるんですけれども、最近、急速に増えているという点ではこの研究室が1番でしょうか。

―― 「日本デジタルゲーム学会」と聞くと「いったい何をするところなんだろう?」という疑問を覚えますが……。

馬場 「学会」とは研究をする場所、あるいは研究の交流をする場所です。ただ、研究というものをお堅く捉えられてしまうとまずいと思うんです。研究といってもかなり幅がありますし、深みも違うわけです。ノーベル賞を取るような研究に限らずもっと広い、ちょっと図書館に行って調べる程度、そういった研究も含めて、いろいろなことをやっています。要は研究の成果や過程を交流しあうところが学会と思っていただければいいと思います。   

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―― 「研究」というと白衣を着た人がしかめっ面でビーカーを見ていたりとか、頭に電極をくっつけて研究しているイメージが……。

馬場 もちろんそういう研究もありますが、例えば私のゲームの研究というのは、この研究室でいろいろなゲームをやりまくることから始まりますから(笑)。それも研究だと思っているんです。難しく言ってしまうと社会学で参与観察という方法がありまして、自分でやってみる、またはゲームをしているプレイヤーを観察する。もちろんそこから何を成果として得るかが問題ですが、ただプレイするだけというのも研究になるんです。

馬場研究室では、海外からの学生受け入れも多い。研究対象もさまざまだ
資料の量が非常に多いことを除けば、まるで会社のオフィスのよう
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