韓国PSP事情――無線LANスポットで独自コンテンツを満喫（2/2 ページ）

[佐々木朋美，ITmedia]

「ゲーム機」というより「マルチメディア機器」という位置づけ

　そもそもなぜ韓国版PSPは、なぜネットワーク対応なのだろうか。同社マーケティング本部課長カン・ヒウォン氏がその質問に答えてくれた。

SCEKマーケティング本部のカン・ヒウォン氏（右）と、リュウ・ハンナ氏（左）。「来年3月末まで、50万台販売するのが目標です」。

　「たとえば音楽を聴くという1つを取り上げても、韓国のユーザーはCDよりインターネットからダウンロードして聴くことが多いほど、オンラインであることが日常化している。そこでPSPもオンライン上で楽しめるよう、KTのNespotとセットにした」（カン氏）。

　販売開始から1週間後の5月10日時点で、PSP用Nespotサービス加入者は約1万5000人。KTによると、1週間でこれほど多くの会員が集まったことは初のことという。ゲーム単体よりも、オンラインの方がより多様なコンテンツを楽しめることが、人気の理由と考えられる。

　また加入しないユーザーの場合は「中・高生など経済力のないユーザーに、月5000ウォンはやや苦しいかもしれない。加入者は20代の大学生が中心だ」（カン氏）という。

　それでもSCEK側としては、PSPを単体のゲーム機というよりは、ゲームも含めた多様なコンテンツを楽しめるマルチメディア機器としてPRしている面が強い。そのため、PSPはゲームに比較的関心の少ない女性からも好評だという。

　「PSPは新しい概念のマルチメディア機器として、メディアによく取り上げられる。高性能な3Dゲームフォンと比較されることもあるが、それらよりも画面は大きくクリアで、UMDを利用するためゲーム自体のクオリティも高いものになっている。価格は32万8000ウォン（約3万2800円）と、多くのコンテンツを一度に楽しめる割に高い方ではないと考えている。また、PDAやPMPといった機器でも音楽や動画を楽しむこともできるが、それらには高品質な3Dゲーム機能はないのはもちろん、無線LANに接続できなかったり、別途準備が必要だったりするので、PSPとはまた違うものと言える」（カン氏）。

　1つで何でもできるということは、韓国ユーザーにとって大切な要素であるようだ。韓国では外出時に音楽を聴く際、メディアをその都度替える必要のあるMDやCDよりも、そうした手間のないMP3プレーヤが人気だが、UMDを取り替えなければならないPSPは、そうした意味で韓国人には「やや面倒」な感もあるようだ。しかし多様で高品質な機能がそれに勝り、PSPの選択理由に直結している。

　現在の時点のユーザーからの反応だが、とくにゲームや動画については、画質がきれい、と好評のようだ。オンラインで楽しめるコンテンツについては、やはり物足りないとの声もあるようで、今後の課題といえるだろう。

　「PSPのヘビーユーザーに対しては、いちはやく優れたゲームを投入し評価を得ることが大事ですが、一般ユーザーに対しては、Nespotと連携している部分を強調し、さまざまな形で遊べるマルチメディア機器という触れ込みでPRしていくつもりです。最終的には、全ユーザーがゲームもオンラインサービスも楽しめるようになったらいいと思います」と、カン・ヒウォン氏が語るように、ネット対応の韓国版PSPは、日本より多彩さがいっそう強調され「ゲーム機」とは一線を画す位置づけとなっている。