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» 2005年08月03日 15時49分 公開

映画「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」の制作に迫る!! 水島精二監督単独インタビュー(2/2 ページ)

[福西輝明,ITmedia]
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水島 最初はハイデリヒという役について、アル役の釘宮理恵さんの一人二役も考えていたんです。ですが、アルとハイデリヒはそれぞれ別の世界で違う人生を歩んできた別人です。それに、今作のアルは別人のように明るいキャラクターで登場するじゃないですか。その2人を演じ分けるのは役者さんもディレクションする僕らも相当辛い。だから、ここは思い切って別の役者を立てた方が良いと考えたんです。

 でも、やっぱり既存の声優さんにはピンと来る方がなかなかいなくて……。それでキャラクターの実年齢に近い若手俳優さんの方が新鮮みがあって良いかもと思い至って。

 そんな中、たまたまとあるコネで小栗くんを紹介してもらえる機会がありまして、ハイデリヒ役をお願いすることにしたんです。結果、狙い通りすばらしいハイデリヒになりました。彼も今回の仕事に関して、自分から撮り直しを希望したりと、非常に熱意を持ってやってくれて、とても良いものに仕上がったと思います。

青年版のアルとも言えるハイデリヒ。小栗さんの新鮮かつ自然体の演技は、彼のキャラクター性をより引き立てていた

―― 本作品でお気に入りのシーンはどの部分でしょうか?

水島 基本的には全部好きなですが……。強いて挙げるなら、エドがアルを諭すシーン。ここは作品のテーマに関わる部分でもあるので、すごくこだわって作りました。「世界と無関係でいることなんてできない」というセリフを言ったエドの感情やアルの感情は、理想的な形で描くことができました。すごい葛藤の末のセリフだったんですが、ヒーロー然としていないところがすごく良いと思います。

兄と再会するためとはいえ、アルがとった行動は「錬金術世界」の人々に大きな被害をもたらしてしまった。その現実に耐えられないアルに、エドは兄として正しい道へと引き戻す言葉を投げかける

「ハガレン」の続編は実現なるか……!?

 本サイトの7月22日のニュースで、劇場版「ハガレン」の公開記念トークショーの模様をお伝えした。その中で水島監督は、「ハガレン」の次回作について触れていたが、その真意について直撃してみた。

―― 以前行われた渋谷でのトークイベントで、アニメ版「ハガレン」の続編について言及されていましたが……?

水島 いやいや、実際には何も決まっていません。「ハガレン」という作品は僕だけのものではないので……。今までと違う形で、とかは先々あるかもしれませんが、僕自身がすぐにということは無いです。僕としてはテレビシリーズと劇場版でやりきっちゃった感もありますし。朴さんなんかは「劇場版の2年前の話を描いて」とか言ってますが……。エドにとっての辛い2年間を淡々と映像化するのは、僕は嫌ですしね(笑)。

―― 今のところは可能性は薄いですか……。でも、いちファンとして気長に待っています。それでは最後にファンへ向けてメッセージをお願いします。

水島 スタッフ一同がんばって作ったフィルムです。ぜひ劇場まで足を運んでください。それで、当時のドイツのことなど心に引っかかったことがあったら、ぜひご自分で興味を持って調べてみてください。そうすれば、より物語の背景がわかって違う面白さが出てくると思います。

 また、「生きている限り永遠に世界と無関係でいることなんて出来ない」というエドの言葉に耳を傾けてみてください。「ハガレン」の世界にある問題は現代社会が抱えている問題と共通する部分があるので、これを機会に今自分たちが生きている社会に目を向けてもらえたら嬉しいですね。

水島精二

アニメーション演出家。サンライズ入社後、演出家を経てフリーに。代表作は「ジェネレイター・ガウル」(監督)、「地球防衛企業 ダイ・ガード」(監督)、「シャーマンキング」(監督)、「I-wish you were here」(監督)など。

作品に込められた少年少女たちへのメッセージ

 このところ、「ひきこもり」や「ニート」という言葉を頻繁に目にするようになった。面倒な人間関係などが渦巻く社会の輪から離れ、安全な「理想郷」の中で日々を過ごす。何の苦労もなく毎日を遊んで暮らしている彼らは、まるで特権階級にある王侯貴族である。

 しかし、たとえどんなに「理想郷」の居心地が良くても、人は誰も世界と無関係でいることは出来ない。今は親に養ってもらっていたとしても、その親が急に亡くなったらどうするのか? その先の収入は? それ以前に葬式はどうすればいい? 手続きはどうする……? というように、人は生きている限り世界=世間との関わりを断つことはできない。そして、そこから逃げた先に「理想郷」などない――。

 劇場版「ハガレン」の試写を見た筆者は、この作品からそんなメッセージを受け取った。エドとアルは自分たちの目的のために、「錬金術世界」に大きな破壊をもたらしてしまった。しかし、その現実に向き合い、自分たちが成すべきことから目をそらさなかった。結果的にそれがハッピーエンドといえるものにはならなかったかもしれないが、希望に満ちた結末が描かれていた。たとえ今は辛くても、立ち向かえば希望は見えてくる。水島監督はそんなことを映画を通して言いたかったのかもしれない。

  • 劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者
  • 配給:松竹
  • 丸の内プラゼールほか、全国大ヒット上映中
(C)荒川弘・HAGAREN THE MOVIE


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