インタビュー
» 2006年02月13日 17時51分 公開

寒い冬をさらに寒くする!? ホラーアニメ「地獄少女」に迫る(1/3 ページ)

昨年10月から絶賛放映中のテレビアニメ「地獄少女」。アニメでは珍しいホラーを題材にした本作が人気を呼んでいる。その人気の秘密やアニメ化の経緯に迫るべく、監督とプロデューサーにお話をうかがった。

[ひろいち,ITmedia]

 ジャパニーズホラーがメディアに定着して早数年。「リング」「呪怨」「バイオハザード」「着信アリ」「SIREN」など数え上げたらキリがないが、映画や小説、テレビドラマ、ゲームと毎年ありとあらゆるメディアでホラーを題材にしたヒット作が生まれている。

 ところが、テレビアニメにおいてのホラーは、少々元気がない。週に50タイトル以上もの作品が放映されているアニメ業界にありながら、ホラーアニメというのはほとんど見られないのである。

 そんな中、10月より放映されているテレビアニメ「地獄少女」が気をはいている。この作品は、架空の都市伝説を題材にしたホラーファンタジーで、SKY PerfecTV!とアニプレックスが共同で展開する新しいネットワーク「シンジケーション」(「キー局とその傘下の放映局のみの放映」というような、既存の枠を越えた放映を目指すネットワークの総称。そのため、本作は「毎日放送」「東京MXテレビ」「キッズステーション」「アニマックス」の4局で放映されており、週の合計放送回数はリピート放映なども含めると7回にも及ぶ)を使用して放映するという新しい試みがなされている作品でもある。

 そんな本作は、アニメ放映と同時に「月刊なかよし」(講談社刊)にてマンガの隔月連載が開始され、好評につき毎号連載に格上げ。さらにMBSでは深夜アニメとしては異例の視聴率4.8パーセントを記録している。その人気の秘密について、監督の大森貴弘氏とプロデューサーの阿部愛氏にお話をうかがってきた。

 まずは物語の内容に触れておこう。

 深夜0時にだけアクセスできるという謎のサイト「地獄通信」。そのサイトに晴らせぬ怨みを書き込むと、「地獄少女」と呼ばれる少女が現れて、憎い相手を地獄に堕としてくれるという……。そんな架空の都市伝説を題材に、やり場のない苦しみに追い詰められた登場人物たちの思いの行く末を描いていく。

 物語の中では、イジメ、確執、ねたみなど、さまざまな(しかもかなりヘビーな)要因で怨みを抱いた登場人物たちが、その思いを晴らしてもらうために「地獄通信」にアクセスをしてくる。そして、地獄少女・閻魔あいが登場し、依頼された人物を地獄に堕としていく。颯爽とはいかないが、次々と依頼者の要求に応えていく様は、さしずめ「ホラー版必殺仕事人」といったところか。しかし、本作では「人を呪わば穴ふたつ」という地獄通信独自のルールがあり、他人を地獄に堕とした人間は、やがて自らが死んだときに自分自身も地獄に堕ちてしまう。そのルールが依頼者に決断を迫らせ、本作をより恐ろしく、どこか不条理に描き出していく。

閻魔あい
−AI ENMA−
(声/能登麻美子)
普段はおとなしく目立たない少女。しかし、地獄通信へのアクセスを受けると、地獄少女に変身し、依頼された人物を地獄流しにする
柴田 一
−HAZIME SHIBATA−
(声/うえだゆうじ)
フリーの記者。とは言いながらも、スキャンダラスな写真を撮っては、本人に高額で買い取らせるなどのあくどい商売もしている。「地獄少女」の噂を聞きつけ、その真相を独自に探っている
柴田つぐみ
−THUGUMI SHIBATA−
(声/水樹奈々)
一の娘。母親はおらず2人で生活している。そのため大人びた態度や物言いをするが本当は寂しがり屋。とある不思議な能力を持っている

“チャレンジ”がぎっしり詰まったテレビアニメ、それが「地獄少女」

 先に好調であることを述べたばかりだが、実は元々「地獄少女」は人気を見越していた作品ではなかったように思える。失礼を承知で言わせてもらえば、人気が出ないまま終了を迎えることも想定していたのではないだろうか。というのも、2005年9月に行われた「地獄少女」製作発表会で、アニプレックスの竹内成和代表取締役社長とスカパーウェルシンクの清水賢治取締役部長は「(シンジケーションでの放映という新しい試みに)期待と不安の両方をもっています。地上波での放映は電波料が高く、現在主流となっているようなDVDマーケットだけで利益を回収するのは難しい。アニメの作品数がとても多い現状を踏まえてみると、これからのアニメビジネスはより厳しいものになってしまうのではないかと思われます。そんな状況を打破していこうというのが今回のチャレンジです。ただ、この形を定着させるためには、この後も4〜5本はチャレンジを続けていかければいけないと考えています」と語っていた。

 竹内氏、清水氏両名の発言からもわかるとおり、本作は視聴率を得るためというよりは「シンジゲーション」の放映形態を浸透させるという意味合いが強く、チャレンジの要素が大きい作品であった。「4〜5本はチャレンジを続けていく」という今後の構想に関する発言も、チャレンジする立場やもろもろの事情を踏まえての発言だったはずだ。そんな作品が、MBS放映の第3話で4.4パーセントという高視聴率を記録し、それ以降も第9話で4.8パーセント、第17話で4.5パーセントと好調を維持している。これには製作スタッフも驚きだったのではないだろうか。プロデューサーの阿部愛さんは「驚きも喜びもありましたが、それよりもほっとした部分のほうが強かったですね」と語っていたが。

大森貴弘監督(左)と阿部愛プロデューサー(右)。キワドイ質問にも熱心に返答してくださり、感謝!!

 その人気の要因はどこにあったのだろうか。監督の大森貴弘氏はこう分析する。「ひとつは、見やすいというのがあると思います。たしかに内容は“怨みつらみ”という重いものですが、物語を構成するネタは現代人の等身大の姿を描くようにしているんです」。

 たしかに「不登校の少女」「ストーカー」「近所付き合いに悩む主婦」「部活内のイジメに耐える少年」「悪徳獣医」など、登場人物たちが直面している問題は、実際に我々のごく身近に潜んでいる。そうした問題を扱うことで、ファンタジーな物語が現実味を帯び、感情移入しやすくなっているのだ。

 また、ネタだけではなく「現実の肌触りを残すために、見せ方にもこだわっているんですよ」と大森氏は続けて――「アニメーション的ではない見せ方で、サスペンス劇みたいなことをやれたらなと思っているんです。たとえば、特殊効果的な見せ方は極力省く。もちろん意図的に使っている場合もありますが、基本的には実写的なアプローチで描こうとしています」と答える。そうした試みのひとつひとつが、効果的に視聴者の元へ届いたということだろう。

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