レボリューションでの開発を表明――ポケットの中のフランチャイズ? 「おいでよ どうぶつの森」のケーススタディGame Developers Conference 2006(1/2 ページ)

現地時間の23日、米国サンノゼで開催されているGDC 2006において、任天堂の江口勝也氏によるセッションが行われ、据え置き機だったゲームをいかにしてワイヤレス対応の携帯ゲーム向けに再構築していったのかが語られ、今後のレボリューションへの展開を語った。

» 2006年03月25日 07時46分 公開
[加藤亘,ITmedia]

どうぶつの森同様、難しさとは無縁のセッション内容ですと江口氏

任天堂情報開発本部制作部・江口勝也氏

 北米サンノゼで開催されているGame Developers Conference 2006(GDC 2006)において、現地時間の3月23日、任天堂の江口勝也氏により「おいでよ どうぶつの森」(英題:ANIMAL CROSSING:WILD WORLD)が、どのようにして家庭用ゲーム機向けからワイヤレス対応携帯ゲーム機向けへと作り直されたのかを、技術的・思想的に「ポケットの中のフランチャイズ? 『おいでよ どうぶつの森』のケーススタディ」と題して語られた。この中で江口氏は任天堂の次世代ゲーム機レボリューションでの開発に意欲があることを表明した。


 「おいでよ どうぶつの森」は、昨年発売以来日本国内だけで出荷本数248万本を記録し、今なお売れ続けているビッグタイトルへと成長した。誰しもが認める大ヒット作品となった本作だが、ディレクターを務める江口氏は開発当初、任天堂社内での反応がいまいちだった明かす。

 どうぶつの森は、ニンテンドー64DD(64DD)向けのタイトルとして開発がスタートした。64DDは、ニンテンドー64に接続して使う、書き換え可能なディスクメディアの記録媒体で、当時としては大容量の約64MBのセーブ容量があり、時計機能があったのも特徴のひとつだった。この容量の大きさと時計機能を使って、新しいソフトを企画しようとしたのがすべての始まりだったと振り返る。

 ここで当時の企画書を紹介。そこには「複数のプレーヤーが互いに関わり合いながら、目的を達成していくコミュニケーションフィールドを提供する」と書かれている。ここで疑問に思う人もいると思う。本作は決まった目的が特になく、自由に振る舞うことが信条のソフトである。つまり企画段階では確固たる目的のあるソフトだったのだ。

 とはいえあくまでも“クリアをする”という目的ではなく、“コミュニケーションフィールドの形成”という目的だった。しかし、ユーザーに馴染みのない、このようなゲームが受け入れられるという自信がまだ持てず、まずは定石といえる内容で始めるのがいいのではないかと江口氏は考えた。だが、強い勇者が主人公のゲームは任天堂にも多く存在していたため、ここでは非力で、自分で戦う代わりに動物を操ることで難関に立ち向かうという内容にしようと思い立ったと明かす。

犬は埋まっているアイテムを探し出したり、鳥は障害物を飛び越えて軽々と向こう側のアイテムを持ってきたりと現在とはまったく違う企画書。ここでは64DDの時計機能を使って現実の時間とシンクロ。時間によって活動が制限される動物などが設定されていた。どうぶつの森に登場する動物たちは当初まったく普通の動物だったというから驚きだ

 「動物たちを操りながら複数のプレーヤーが協力して巨大な悪を倒そうとしているうちに、お互いコミュニケーションを取ることが楽しくなって、魔王のことなど忘れてしまう」――そんなゲームを江口氏は思い描いていたのだ。しかし、64DDのビジネス自体がうまくいかず、この企画がニンテンドー64向けに作らなくてはならないという方向転換を迫らることになる。大容量の64DDのセーブデータを念頭に作られていたものが、あっさり引っくり返されたわけだ。

 ニンテンドー64で与えられたセーブ容量はたった1Mビット、128KBのフラッシュロムだけだった。さらにセーブデータの安全を確保するために二重に容量が取られるため、使えるのは64KBだけになってしまった。そうなると「何をやって何をやらないか」と厳選しなくてはならなくなり、再度江口氏は原点に立ち返り、何をこのソフトで遊んでほしいかを考えるキッカケになったそうだ。

 「本当にやりたかったことは、コミュニケーションのためのフィールドを提供すること。大冒険をして目的達成ということは、あくまでもプレーヤーを引き込むことの興味喚起でしかない」という思いに至った。

 必要なのは、「あるプレーヤーのやったことが残っているフィールドと、それに対して何かをやりたくなるモチベーション、プレーヤー同士が話のネタにできる要素とプレーヤー同士を結びつけるさまざまな仲介要素、そして毎日遊びたくなる変化」と、元々想定していた大きな規模のものから、とても小さい規模に変更しなくてはならなくなった。ことが本作が今のようなゲームとなるきっかけだというから面白い。これは据え置き機であるゲームキューブから携帯ゲーム機であるニンテンドーDSへ舞台を移す際にも活かされた。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/22/news047.jpg 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. /nl/articles/2412/18/news207.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. /nl/articles/2412/21/news040.jpg 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  4. /nl/articles/2412/22/news034.jpg 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  5. /nl/articles/2412/21/news019.jpg 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. /nl/articles/2412/22/news036.jpg 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. /nl/articles/2412/21/news023.jpg 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. /nl/articles/2412/17/news042.jpg 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. /nl/articles/2412/22/news020.jpg 余りがちなクリアファイルをリメイクしたら…… 暮らしや旅先で必ず役に立つアイテムに大変身「目からウロコ」「使いやすそう!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」