周囲を良く観察して行動しましょう――災害時の知識が当たり前のように身に付くリアルサバイバル:「絶体絶命都市2 ―凍てついた記憶たち―」レビュー(1/2 ページ)
崩壊する都市からの脱出劇を描いたシリーズの最新作。押し寄せる洪水。陥没する大地。クリスマスイブの騒がしさは一瞬にして地獄のような惨状と化した! ……だが、怖いのは天災だけではなかったのだ。果たして主人公たちの運命は?
聖夜の賑わいを消し去った大洪水
2002年4月に発売され、災害時のサバイバルというテーマが注目を集めた「絶体絶命都市」。そのシリーズ最新作となるのが「絶体絶命都市2 ―凍てついた記憶たち―」(以下、絶体絶命都市2)だ。前作は地震からの脱出だったが、今回は災害が洪水になり、舞台も地方の小都市に移っている。
シナリオも、主人公の異なるエピソードが複数集まって、大きな物語が構成される形に変更された。主人公たちは基本的に新キャラクターだが、前作のキャラクターも重要な脇役で再登場するなど、世界観は共有されている。
舞台となるのは富坂市。以前はどこにでもある地方都市だったが、「ジオフロンティア計画」と呼ばれる大規模な改造計画のおかげで、飛躍的な発展を遂げた。ジオフロンティア計画を推進したのは、当時の市長で、今では知事に就任している田辺宗一郎という政治家だ。華やかな活動と裏腹に、大手製薬会社との癒着が噂されており、一部のマスコミなどは独自の調査を開始している。
事件は田辺がクリスマスイブのパーティに参加している時に起こる。連日降り続いた豪雨により、市の中央部を流れる羽代川が決壊してしまったのだ。ジオフロンティア計画によって、半地下部分が多く造られた富坂市にとっては、まさに致命的な災害。あふれる水が、市内を浸食していく。この状況で第1話、篠原一弥編が幕を開ける。
複数の主人公が織りなす群像劇
絶体絶命都市2の主人公たちは、みな偶然事件に巻き込まれてしまったただの一般人となる。特別な知識も装備もなく、訓練も受けていない。もちろん格別身体能力が優れているわけでもない。それだけにサバイバルは困難を極める。プレーヤーは、第1話からそれを痛感することになるだろう。
篠原編では、パートナーとして藤宮春香という大学生が登場する。有名な大資産家の娘で、美人だがどこか影のある女性だ。伏し目がちで暗い表情をしていることが多い彼女だが、原因は洪水のためだけではないらしい。何か深刻な悩みがあるようだ。
篠原編は脱出だけでなく、彼女とのロマンスも楽しめる作りになっている。何かと精神的に動揺しやすい女性を、時にはみずからの命を危険にさらしながらも助ける一弥はなかなかのナイトぶり。進め方次第では春香も彼のことを憎からず思ってくれるようになる。−−
また、どうしても彼女のことが好きになれなければ、春香が迷惑な行動を取ったり、足手まといになった時に、罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせることもできる。ひとりの人間としてはどうかと思う行動だが、声優さんのオーバーアクション気味の演技がちょっとブラックな笑いを誘う。2度目のプレイ時には、試してみるのも面白いかもしれない。
篠原編に続くのは、佐伯優子編。兄を訪ねて富坂市にやってきた大学生だ。彼女のシナリオは、始まると同時に回想シーンが挿入される。そこで彼女の兄が何者かに殺されたこと、警察が優子を犯人だと勘違いして逮捕、留置場に収容されたことが明かされる。その後、洪水のおかげで運良く留置場を出られた優子は、災害から身を守りながら、兄殺しの犯人を探すことになる。しかも、自分を犯人だと信じている警察に捕まらないようにしながら……。
このシナリオでもっとも強烈なのは、優子を追ってくる刑事だろう。この人、過去に女性にひどい目に遭わされたんじゃないかと思うくらい、偏執的に優子を追ってくる。まっとうに市民の避難誘導などをしている警官を怒鳴りつけて優子追跡をやらせてしまう徹底ぶりは、ある意味で感動モノだ。
優子は女性ということもあり、篠原編とは逆に不幸な境遇に陥った彼女の味方となる存在が登場する。ところが、この男はナイトではなく相当なヘタレなのだ。敵にちょっとサイコ系な刑事、味方にヘタレ系のナイト。兄を殺され、洪水に襲われた上に、これ!? ちょっと優子が可哀想すぎる。みなさん、ぜひ助けてあげましょう!
次第に明らかになる陰謀の影
イメージ的には第1話が「ロマンス」、第2話が「ミステリー」といった感じだろうか。では、続く第3話は何かというと「アクション」だ。主人公は柘植明というタクシーの運転手。タクシー=カーアクションの連続となる。
ただ、この明もツイていないというか、なかなか気の毒な男だ。洪水が起こっている最中、彼が乗せたのは本多涼子というジャーナリストだった。彼女は市内のあちこちが水没する状況で、あっちへ行け、こっちへ行けと、かなり厳しい注文を出してくる。しかも財布を忘れたらしく、なんとすべて後払いで。
明は金をもらうために涼子の指示に従うわけだが、その時に表示される選択肢が面白い。災害の危険を顧みず社会正義を貫こうとする使命感から、小銭が欲しいだけのボヤキまで、実にいろいろなパターンが用意されている。
物語はさらに続き、しだいに涼子が追っていた陰謀が明らかになっていくのだが、第以降の話でも、サバイバルの緊迫感と、ブラックな笑いは背中合わせになっている。詳しく書くとプレイ時の楽しみがなくなるので伏せるが、こうして見てくると、絶体絶命都市2が、災害からのサバイバルというテーマに捕らわれることなく、自由にいろいろな要素を採り入れていることが分かる。特にブラックなユーモアセンスは、宣伝などではあまり言われていなかったが、間違いなく、見逃せない本作の魅力だ。
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