「大神」はアートじゃない。すごく間口の広い、質の高いアクションアドベンチャーなんです「大神」発売記念インタビュー(3/3 ページ)

» 2006年04月20日 15時53分 公開
[遠藤学,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

実験作でも1発ネタでもない

―― その独特なグラフィックはもちろん、筆しらべというゲームシステムも相まって、注目を集めている大神ですが、新規タイトルであるだけに及び腰になっているユーザーが多いのも事実です。そういった人たちに何か伝えたいことはありますか?

稲葉 大神はアートじゃないんですよ。絵がすごく良いとか、筆しらべもとっぴなもののように思われることがあって、すべてが難しくてすべてが取っつきづらいみたいなイメージを持っている人もいると聞きます。ただ、新規タイトルとは言え、本当に新しい要素はこの2つだけで、後は安心して遊べるすごく質の高いアクションアドベンチャーなんです。
 グラフィックと筆しらべが飛び抜けてすごく新規性があるように見えるので、ゲーム全体が一般人では付いていけない、アーティスティックな作品かのように見えてしまう。でも、そんなことはまったくないんです。むしろその2つぐらいしかハードルがないので、何の構えもいらない。訴えたい面白い仕掛けや要素はたくさんありますけど、純粋に気になったところに飛びついてもらえれば損はさせない、と言いたいですね。面白そうと思って飛びついたら、実験作の1発ネタみたいなタイトルだった、ということもありますけど、大神はそれらに分類されるゲームじゃないです。

―― ただ、パッと見てほかと違うと、新しいものなんじゃないかと思ってしまうユーザーもいます。そういうところで敬遠して欲しくないと?

稲葉 そうですね。むしろものすごく入りやすいゲームだと思いますよ。なじむのに時間が掛かりそうとか、クセのある人だけが楽しめる、アーティスティックな人たちが楽しめるとかではないです。今回は本当にいろんな人が楽しめる作品を作ったと自信を持って言えます。それは神谷を始めとしたスタッフもそう思っているはずです。取っつきにくいんじゃないかとか、本当にいらない心配はしないで欲しいと、強く言いたいですね。

神谷 ビューティフル ジョーに関しては確かに突っ走っちゃいましたけど……。ゲームセンターでギャラリーを背負いながらプレイすることに快感を覚える人にはストライクなんですよ、ビューティフル ジョーは。というよりも、僕はそこだけを見て作っていたんです。ただ、大神はそうじゃない。広く一般の方にも楽しめるものにしています。ビューティフル ジョーも間口が狭いわけじゃないんですけど、入ってもはじき飛ばされる。デビル メイ クライは辛いと思いつつも食べられますけど、ビューティフル ジョーは最初から激辛ですから(笑)。

―― その反動もあって大神は甘口だと?

稲葉 ことあるごとに“ビューティフル ジョーみたいに(激辛に)しないでくださいよ”って神谷に言い続けましたからね。その時は分かったよとは言うんですけど、本当に口だけなんですよ。“分かってるよ。でも、ここはこうしたほうが良くない?”とか、すぐに言い出すんです。

photo 地中に埋まっている宝箱。まっすぐ進むのも良いが、寄り道すればした分だけ新たな発見がある

神谷 作ってるうちにちょっと攻めたくなっちゃうんですよね。このくらいはユーザーにやってもらってもいんじゃないの、とか思ってしまうんですけど、それはハードルが高いと。なので、ビューティフル ジョーみたいなアクション的な部分で喜ばせるんじゃなくて、そんなにすごいアクションは求められないけど、深みにハマっていく仕掛けというのがいろいろ入っています。こっちの隅っこのほうに何かあるんじゃないかと思って行ってみれば何かあるとか、ここでちょっと掘ったら何か出てくるかなとか、テクニックとは関係ない部分ですね。そういうところで深みにハメていく仕掛けがたくさんあるので、やり込もうと思えばどこまでもやり込めますよ。

稲葉 そこまで行くには相当もめましたけどね。ビューティフル ジョーみたいなゲームは、ユーザーのレベルが上がってもどこか1歩届かない。ただ、あと1歩で届くからもっとうまくなろうと思って、すごく力を入れてプレイするんです。ところが大神は最初からしっかりと届くんですよ。プレイさえすれば大神はプレーヤーのやりたいことが楽しめるように作ってあります。
 ただ、ゲーマーと呼ばれるプレーヤーはそれを簡単に飛び超えちゃうのも事実ですから、そういうユーザーには、余裕のできた分での違った遊び、楽しみ方を見つけることができるように作っています。1本道ではなく、自分には余裕があるからこれを試してみよう、あれを試してみようと、いろんな深い遊びや脇道がある。足りてる感覚の中で、どんなレベルのプレーヤーでも楽しめるというゲームですね。

―― ものすごくユーザーフレンドリーに作っているということですか?

神谷 そうですね。ものすごくユーザーフレンドリーだと思います。そうしつつ僕たちがやりたい、ユーザーを楽しませたい遊び心は別に入れているという意味ですけど。

稲葉 難易度を低めに、というよりもみんなが届くところにするというのは難しいんですよ。ユーザーはプレイしているうちにゲームに慣れてきますし、それは作っている開発陣も一緒なんです。作っているうちにめちゃくちゃ簡単なゲームになる時期がある。そこで、じゃあもうちょっと難しくしようと言うと、一気に難易度が跳ね上がったりするんです。ROMを作るたびに難易度は変わっていきましたね。神谷は運悪く、超激ムズの時に頑張って作業をしていて……これじゃ駄目だと言ったら、心が折れてしまったこともありました(笑)。

―― 先ほどの話を聞く限り、イージー、ハードといった難易度が大神にはないということでしょうか?

神谷 難易度はないです。それをやりたくなかったんですよ。僕のイメージなんですけど、ゲームを始めた時にイージーとかハードとか、そういったものがある時点で敷居が高い気がする。あまりゲームがうまくない人はイージーを選ぶんでしょうけど、イージーを選ぶことは決して気持ちがいいものじゃないですよね? ハードならご褒美があるんじゃないのか、とか考えちゃうじゃないですか。大神は多くの人に楽しんでもらいたい作品ですから、普通に「始める」だけにしたんです。

稲葉 実は開発中、イージーモードを相談しに行ったことがあるんです。そうしたらキレられたんですよ(笑)。その時は難しくなりがちだったので、モード設定の必要があるんじゃないかという話をしに行ったんですけど、“そんなもん俺はやる気はないよ。やりたかったらおまえが勝手にやればいいじゃん”と言われたんです(笑)。ままならない難易度調整に疲れていたんだと思いますけど、抵抗感は本当にすごかったですね。

―― 難易度という点でも、間口の広い作品を意識したということですね。作品のボリュームはどれくらいになっているのでしょうか?

神谷 ボリュームはかなりあります。それはプレイしているうちにびっくりして欲しいので、具体的にどれくらいとは言いませんけど。

稲葉 大ボリュームですが、ベタ〜とした展開ではなくて、キレの良い展開です。やらされている感、まだやらなきゃならないのかといったものを感じることがないように作りました。それと、遊び終わった時には、大神のシナリオを神谷1人で書いたことにびっくりすると思いますよ。絶対にウソだろと言われる量なんですけど、本当ですから。今のうちに言っておきます(笑)。

―― なるほど、シナリオには特に注目してプレイしたいと思います。では最後に、ユーザーに向けてひと言いただけますでしょうか。

神谷 一見さんお断りのゲームじゃないから安心してください、というと何か変な気がしますね。ユーザーが自分の目を信じて遊ばないと駄目だ、じゃないとゲーム業界が駄目になるとかいうと、やっぱりビューティフル ジョーみたいなゲームなんじゃないのかと言われそうな気も(笑)。
 う〜ん……大神は特徴的なゲーム、かつオリジナルの新規タイトルなので構えてしまう部分はもちろんあると思うんですよ。そうなるとやっぱりユーザーのほうからも信じて階段を上ってきてもらうしかないかな、とは思います。面白そうだと感じてくれたのであれば、新規タイトルだからという理由で様子見だけはしてほしくないですね。階段を上ってきてもらえば、それに応えるだけの内容にはなっているので、ぜひプレイしてみてください。

photo

稲葉 ゲームは嗜好品ですから、すべての人が絶対に満足するとは言うことはできません。ただ、大神は本当にいろんな切り口があって、見る人によっていろんな顔がある。グラフィックや筆しらべにしてもそうですし、そのほかにも日本昔話風のストーリーだったり、アクションが多彩だったり……本当にたくさんあるんです。だからこそ、ちょっとでも気になったという部分があるのなら、買ってみてほしい、やってみてほしいですね。
 それがどういうきっかけで入ってきたとしても、絶対に期待はずれだと思わないはずです。一方、大神を見てどこにも引っかかりを感じない人は、プレイしても面白くないかもしれません。ただ、これは何にだって言えることですよね? 何かひとつでも気になる部分があるのなら、買っても絶対に損はさせません。これだけは、これまでにないくらい自信を持って言えます。

―― 本日はありがとうございました。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた