「MI2」のプロデューサーになぜ大抜擢されたのか?KOFマキシマムインパクト2:FALCOON氏インタビュー(2/3 ページ)

» 2006年05月02日 20時36分 公開
[松井悠,ITmedia]

お寿司を疾走させ、ネオジオポケットを立ち上げ……

新キャラも登場

―― 今まではデザインが仕事であり、気持ちとしてはプレーヤーだったわけですよね。ある意味「ゲームに対して責任をとらなくてもいい」立場でゲーム開発に携わってきたといってもいいと思うんですが、今回責任がドンと乗ってきた事に対しては、プレッシャーなどは感じませんでしたか?

FALCOON うーん、逆に燃えましたね。僕が入社したのは1998年。まだまだ格闘ゲームが盛り上がっていた時代ですから、ゲームを作る立場になりたい、格ゲーに携わりたい、という事でSNK(当時)に入社しました。当時格ゲーが4タイトルくらいあったんですが、部署に振り分けられてみたら僕の担当がレースゲームだったんですよ。

―― そのレースゲームは?

FALCOON 「オフビートレーサー」というタイトルです。当時「ハイパーネオジオ64」という基板があって。そのチームは「ラウンドトリップRV」というタイトルを作っていて。それはお寿司が走ったりするやつだったんですけれども。ちょうど「SNKも3Dをやっていかなきゃね」という時代で研究開発の流れと、「SNKも格ゲーばかりじゃまずい」という流れがあって。ちょうどカプコンが「バイオハザード」といったタイトルを出したり、と格ゲーを作っていた会社がジャンルの幅を見せてた時期なんですね。そこで、SNKは寿司は走らせてたっていう……(笑)。

 それで、配属されたときにはもうあらかたできあがっていて、デバックの真っ最中だったんです。配属された初日に「お前らこれ一日乗り回しとけ」みたいな感じで仕事を渡されて。僕はてっきりSNKで2Dの絵を描くと思ってたんですけれど、渡されたツールは3Dだわ、やってるゲームはレースだわ……。これをやっていて何の意味があるんだろうと、すごい嫌だったんですよ。それで、まず最初に先輩に教わったのは辞表の書き方だったんです。

―― 理想と現実のギャップに悩まされていた時期だったわけですね。

FALCOON その時の上司に「僕は絵が描きたいんですよ。3Dなんていやです」ってグチっていたら、先輩から「社会人として2〜3年頑張ってみろ、これからは3Dも勉強していかなきゃならない。会社で給料をもらいながらただで勉強できると思いなさい」と言われまして。それで仕方がないな、と思って仕事を続けていたんですが、その後ハイパーネオジオがこけてしまって……。そのときには、3つくらい企画があったんですけど、どれもポシャってしまってさすがにモチベーションがゼロになってしまいましたね。

 それで、慰留してくれた先輩にどうしたものかと相談しようとしたら、その先輩が先に辞めてしまいまして。じゃあ僕も辞めようと思ってたんですが、その時にちょうどネオジオポケットが立ち上がるタイミングで「絵を描くヤツが必要だ」という話が出てきたんです。他の部署はドットの格ゲーを担当していて手が離せないので、至急2Dの絵を描けるヤツがいるということで、「じゃFALCOONやれ」ということで、立ち上げから参加していました。

 その時は「絵が描ける」というだけですごい充実してましたね。ゲームを作るのも面白かったですし……。でも、ずっと「格ゲー作りたい」という想いはあったんです。で、ネオジオポケットをやって、でも1年2年やるとそれも倒れて。会社が倒れて、僕も倒れた(笑)。

 ただ、その時は「辞めよう」とは思いませんでした。その頃から話はポロポロ出ていた「プレイモア」という会社がSNKの知的財産的な部分を全部受け継いで、今後それでゲームを作る可能性もあるし、どういったやり方でいくのかはまだわからないけれど、とにかくプレイモアという会社が立ちあがる。そこが全版権を持っているということを聞いて、そこでやりたいな、と思いまして。もう4年くらい勤めていたので、会社にも、キャラクターにも愛着がすごいわいてたんです。「テリー」や「京」が死んでしまうのは嫌だ、自分が受け継いでいきたいなというのがあって。

 あの頃はやっぱり、社内が散り散りになってしまっていたんです。みんないろいろな会社に集団で流れていってしまって。だけど、僕は「最後までここにいたい」という気持ちがありました。

―― 今までの会社人生で一番辞めてもおかしくないタイミングだったと。

FALCOON そこからの新しい人生というのも、いくつか模索はしていたんですけども……。プレイモアという会社がすでに立ち上がっていたので結構スムーズに移行できました。それで今回、やっと本当に初めて格闘ゲームに携わっていると。8年越しの夢が叶いました。

「KOF」ならではのゲームプロデュースの手法

―― 私の持論で、「ハードなプレーヤーがゲームを作るとだいたいダメになる」というのがあったんですが、今回は結構バランスがとれていますね。プレーヤーの声を取り込みすぎて、結局システムが破綻したっていうタイトルが数多くある中で、まさにプレーヤーであるFALCOONさんが初プロデュース作品で、それでバランスが取れているっていうのがすごく珍しい。

FALCOON ありがとうございます。作っていた最中に一番気を使っていたのが「独りよがりにならないこと」ですね。僕の好きなものだけで構成すると、初めからヤバイってのは分かっていたんですよ。だからといって、自分の意見を入れていないわけじゃないですけれども。

―― プロデューサーはプロジェクトメンバー全員に全体の指針を見せて「こういうものが作りたい」というビジョンを見せていくことが必要になると思いますが、その中でも、自分で意図的に押さえた部分はありますか。

FALCOON ありますね。それはもう技の設定から、基本のシステムに至るまで、ありとあらゆるところで自分の好みを抑えています。プレーヤーの人たちはどんなところで「格闘ゲームが面白いと」思うのか、いろいろ調査もしました。プレーヤーさんに来てもらって、座談会をしてみたり、実際作ってる人を集めて何かやってみたり、さらにはギャラリーの人たちを集めて、どこの部分を見たときにスカッとしているのか、聞いてみたり。

 自分とプレーヤーの人たちとの感覚にどれだけ誤差があるのかということを知りたかったので、そういうサンプリングにはかなり時間をかけました。もちろん、ネットでチャットしたり、掲示板を使ったりもしましたし。東京に来たときにはプレーヤーを見にゲーセンを回ったりもしてました。

―― それをやるのは、ゲーム以外のビジネス世界では当たり前のことですよね。何かを作るにあたってマーケティングを行って、ニーズのリサーチをして、どうしていくべきかという分析をして。今までそれをやってないゲームクリエーターが多すぎたのかな、と。もちろん、「ゲームはクリエイティブなものである。だから、マーケティングは必要ない」という考え方もあるとは思いますが。

FALCOON 憧れの目で見ていた「格ゲーを作ってる人たちへのアンチテーゼ」でもありますね。僕のやり方っていうのは。マーケティングについてもそうですけど、「KOFのプロデューサー」という立場を、うまく使えたなというのはあります。

―― もともとKOFは94から始まって、結構ファンの声によってキャラクターの出入りがあったりとか、それは新しい解釈の仕方の1つとして、やり方として。システムないしはゲームの感覚の部分までくみこんでいくという。でもその固定のファン層を持っているKOFのやり方なのかなという感じはしますね。

―― 今回は、隠しキャラがいろいろ出てくるということですが。

FALCOON 売れさえすれば今後もMIはシリーズ化していくとは思うんですが。隠しキャラの選抜をしていく上で、ファンの期待は、ある意味裏切りたいですし、ある意味かなえてあげたい。「出してくれ」っていう思いとか「こんなやつが出んの?」とか。

 今回はキャラクターにさまざまな枠を作って実験的に試してるんですよね。例えばストーリ上ではすでに死んでしまっているキャラを出してみたり、サムライスピリッツから持ってきたり。「MIってなんでもアリなんだ」っていう認識をファンに持ってもらいたい。この次に、MI3を出すことになったときに、ファンの方にはどこからキャラを持ってくるんだろう?と期待してもらいたい。

―― SNKの知的財産の部分につながってくるんですね。

FALCOON ええ、今までSNKが作り出してきたキャラクターは300〜400以上なんです。それをふまえた上で、今回の隠しキャラクターたちは2の“KOF”とは全然違うところから持ってきている。だから、これからも隠しキャラクターに関してはいろいろとドキドキしてもらえるんじゃないか、と。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた