1に企画力、2にチームワーク、そして熱意が大事――Actoz Soft CEO チェ・ウン氏「アニス&フリッキー」韓国メディアツアー(その4)

メディアツアー2日目は「アニス&フリッキー」の開発元であるActoz Softを訪問。CEOのチェ・ウン氏に話をうかがい、開発会社の代表とはどういうものなのかを聞いてみた。

» 2006年08月22日 03時58分 公開
[加藤亘,ITmedia]

 「アニス&フリッキー」メディアツアー2日目は、本作開発元のActoz Softを訪問した。ここではActoz Soft CEOのチェ・ウン氏にインタビューを試みた。お話を聞く前には「アニス&フリッキー」(以下、アニフリ)の日本版クライアントでのデモプレイも行われた(記事はこちら)。

 Actoz Softが中国のShanda Entertainmentに買収された際、創業者でもあるチェ氏は一時その座を追われていたが、今年CEOに復帰している。現在、世界展開を主軸にしているActoz Softは、中国において先述したShanda Entertainmentがサービスを行っている「ミルの伝説」で登録会員数1億人、同時接続70万人の世界記録を打ち立てている。日本ではガンホーの「A3」や、ゲームポットが「Latale」などがActoz Softが開発している。

 アニフリももちろんグローバルタイトルとして製作されている。ではどういった経緯でアニフリは開発に至ったのだろうか? チェ氏は、スタジオに参加するスタッフたちから、今までにないゲームを作ろうと自発的に企画が上がってきたと振り返る。最初のアイディア提供はイ・センミ氏(Stone studioマネージャー)となる。当初は5〜6人ほどのチームも現在は40人ほどにふくれあがっている。もちろん意見の相違もあったが、すべてはイ氏の情熱にかけてみたと言う。「アニフリの企画段階では、どんなゲームになるか判断もつかない状態だったのですが、スタッフもイ・センミに負けないほど情熱的で、自発的に仕事をしているので、私はそれを支援しているだけなんです」とチェ氏。社内テストを行った時はじめてほっとしたし、内部的にも外部的にも評判はいいので安心しているそうだ。

 アニフリのライセンス契約の際に会社に在籍していなかったチェ氏は、どういう課程で契約が行われたのかはさておき、GMO Gamesおよびネットクルーとは以前から協力体制もあり、なんの違和感もなかったと振り返る。「ゲーム市場として今一番注目しているのも日本ですし、助け合うべき大事なパートナーだと思っています」と、アニフリ発表後に株価も40%上がったなどの実績を評価する。とはいえ、アニフリに関して言えば、まだ有料化もしていないため、ビジネス的に成功かどうかは言及するには早すぎると感想を述べるが、自信はあるという。

 Actoz Softは昨年12月、韓国ソウルのCOEX大西洋ホールで発表会を行い、反抗青春ADVANCED X-RPG「ernis & fricky AD.2030」、スタイリッシュカジュアルアクションRPG「Latale」、そしてFull 3D SKY FANTASY MMORPG「LAZESKA」の3タイトルを公開した。海外での評価は高いActoz Softだが、韓国国内では市場シェアは1桁しかなく、今後の課題ともしている。しかし、アニフリのように特徴あるタイトルを提供することで、今後は伸ばしていける要素は十分あると踏んでいるそうだ。

 とはいえ、「どのゲームが事前に成功するかどうかを判断するのは難しい。ビジネス的にリスクもあるのが悩ましいところだが、先ほども強調したように“熱情”を持った開発者と、冷静にそれを受け止められる経営者が噛み合えば、新しい挑戦が可能となると思うんです」と、経営者の観点とクリエイティブなこととは違うとしながら、チェ氏のその想いは開発者よりのものなのかもしれない。

 以前のCEOからは開発に集中して多ジャンルへの対応を申し送られたと、あくまでも現状のActoz Softは以前のCEOが偉かったと謙遜する。今年秋にはオフィスも統合され、より規模を拡大する意向だ。

 「韓国のオンラインゲーム産業は成熟し、競争も激しい。MMORPGからカジュアルゲームに、そしてジャンルが細分化していく。MMORPGが主流なのは変わらないが、開発のリスクは以前に比べて高くなる。結論としては力を持ったところだけが残るでしょう。我々は現在7つの開発ラインを持っています。今後はマネをするだけのゲームでは成功しないと思っています。ユーザーのトレンドをいち早くくみ取り、多様なゲームを企画開発していかなくてはならないでしょう」とチェ氏。

 チェ氏は既存のアーケードやコンソールゲームはあくまでも日本が進んでいるものの、時代の流れはオンラインゲーム化されていくと見ている。とはいえ、オンラインゲームは10%ほどの市場規模しかない。今後拡大されていく見込みなので、今後もアニフリをはじめ、さまざまなジャンルで押していきたいと繰り返す。

GMO Gamesとネットクルーの印象を聞くと、社員1人ひとりが熱意と誠実さと責任感があり、それが両代表の印象につながっていると語る。こうした姿勢は我々も見習わないといけないと締めた

 韓国国内ではネクソンの多様化しているタイトル企画力に興味があるという。チェ氏はオンラインゲームを開発するにあたって一番大事なものは“いい企画”と答える。もちろんプログラムやサーバー、クライアントも大事だが、会社的にはこれに尽きるのではないだろうかと。開発会社の実力の差はそれほどない。となると、企画力の差が1番だろうという結論だ。もちろんそれには前述した熱意が付随しなくてはならないのだろう。だからこそ2番目にはチームワークが必要だと答える。アニフリはまさに成功するために送り出すタイトルなのだと力強い言葉をもらった。


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