PCゲームと恋愛シミュレーションと、そのコンシューマー化について考えてみた:CEDEC 2006(2/2 ページ)
恋愛シミュレーションは「背景+テキスト+立ち絵キャラ」だから想像力をかき立てる
続いて登壇した東氏は、現在の恋愛シミュレーション(ノベルゲーム)は1990年代後半から2000年代に発展してきたが、その原型はリーフの「雫」にあると語る。テキストと背景、そして立ち絵型のインタフェースで構成され、選択肢以外の自由度がプレーヤー側にないのが特徴だ。これは現在に至るまでほとんど変わっていなく、逆に選択肢が消滅し、むしろ徹底化されされる傾向にあると分析する。「背景+テキスト+立ち絵キャラという、このインタフェースに何か、想像力を喚起するものがあるのかもしれない」(東氏)。
こうした中で、恋愛シミュレーションのユーザーは別のところにゲーム性を見いだしているのでは、と東氏。「インタラクション性よりも、中に描かれているものに対してゲーム性を感じている。また、作品の消化方法としてインターネットが活用されているのも重要」(東氏)。
また東氏は、インターネットの普及により、ユーザーコミュニティの空間が広がったことも大きいと考える。「ネット環境がない時代は、作品同士について意見を交換するためにはサークルなどに入る必要があった。しかしいまではユーザーのブログなどで簡単に情報共有ができるとともに、意見交換ができる。おしゃべりが楽しいからゲームをプレイするという場合もあるだろう。ここからゲーム的感覚で二次創作が作られていく。ここから恋愛シミュレーションのゲーム性自体を考えていく必要がある」(東氏)。
原作を大事にしながらもユーザーの目線で
アルケミストの浦野社長は、同社が展開するPCゲームの移植ビジネスについて概要を解説。PCゲームを家庭用ゲームに移植するのは、17歳以下のユーザーと女性に、原作のおもしろさを知ってもらうためだという。「アダルトゲームや同人ゲームにも、本質的におもしろいゲームは存在する。これを多くの人に知ってもらうことで、新たなビジネスチャンスが広がる」(浦野氏)。
また、アダルトゲームの場合、アニメやコミック、ゲームといったメディアミックス展開を考えたときの調整役として、移植会社の占める役割は大きい、と浦野氏。ゲームを原作とするアニメやコミックが急増しているが、それぞれの商慣習が違うため、原作側とのトラブルも多いとのこと。「『アルケミストは分かってくれているのでよかった』と言われることが多いが、アルケミストの場合は“仲良くビジネスができる人と組む”のが原則」と、浦野氏。
「移植ビジネスで重要なのは、原作を大事にしながらもユーザーの目線でものを作ること。原作の本数が出ているとか、数字だけを考えてビジネスを展開すると必ず失敗する。円満に解決する方法を模索することが大事で、必要なのはコミュニケーション能力」(浦野氏)。
5年以内に大手がPCゲームに参入?
最後に登壇者と芝村氏を交えてのラウンドテーブルが開催された。芝村氏はこれまでのセッションを振り返りながら「PCゲームが展開されてきた歴史は、制作側の立場から見ていくと分かりやすい。ゲームを作る上では差別化がなされないといけないので、これまでの商品とどう差別化するかの繰り返しで作品が作られてきただけ」と語る。「差別化の時に重要になるのはキーワード。セールストークは30秒以内、とよく言われるが、このため、これからは美少年ですよ、妹ですよ、といったキーワードが必要になる。このキーワードそれぞれに対してお互いに差別化を図ってきたのが歴史」(芝村氏)。
ただし差別化が進むと、わけの分からないものになってしまうこともある、と芝村氏。「日本市場では分かるが、海外市場から見ると“ふしぎの国ニッポン”のようになりがち。浮世絵がいい例で、お互いの絵師が差別化を繰り返した結果、人物やキャラクターについては評価されなかったが、構図や背景、小物だけが評価されることとなった。我々の世界でも歴史が繰り返してしまうかもしれない」(芝村氏)。
またゲーム性の喪失という点については「作り手としては“おもしろければよい”のであって、純粋にゲーム性がどうとか、数学的組み合わせの最適解がどこだと言ったことはユーザーには関係ないのでは。ソフトを買ってどれだけ満足度を得られるかが大事で、それに対してどういう価値を提供できるかによる」と述べ、本当の意味でのゲーム性の定義にはあまり意味はないと思う、と語った。
恋愛シミュレーションの背景画が写真であったりするのも「それ自身が差別化の対象にはならないし、それ自身が攻撃的な商力、インパクトにならないと考えているから」(芝村氏)。限られた予算の中では、商品的キーワードや差別化に可能な限りマンパワーを割いているのがふつうであると語る。「同人ソフトの場合は予算がもっと少ないし、もっと先鋭化した予算配分比率になっているのでは。それが形になっているだけだと思う」(芝村氏)。
また芝村氏は、海外に比べて日本のPCゲーム市場が小さいため、PCゲーム会社の力が弱いので手が回っていないのが現状であると語る。「小規模の企業が集まったり、協力プレイをして移植しているのが日本の市場。あるいは海外の有力案件を取ってきて移植していることもあるだろう」(芝村氏)。
しかし今後を考えると、移植ビジネスが堅調に成長すれば、PCゲームの世界にも大手企業が進出してくる可能性が高い、と芝村氏。「今のところは同人ソフトや小規模のソフトハウスがPCゲームを制作しているが、商売の取っかかりが見えていないので逆上陸していなだけで、それも時間の問題だろう。最初からメディアミックスを考えて仕掛けてくる可能性も高い。移植ビジネスについては、資本のことを考えていくと未来が見えやすくなる」(芝村氏)。
関連記事
- CEDEC 2006:CEDEC 2006開幕――スクエニ和田氏「ゲーム産業は第2の成長段階へ移行し質的変化を求める」
8月30日〜9月1日の期間中、東京世田谷区の昭和女子大学において「CEDEC 2006」が開幕。スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏の基調講演を皮切りに、ゲーム業界の“知”の共有が行われる。 - CEDEC 2006カンファレンスプログラム決定――テ−マは「VISION OF GAMES」
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
-
「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
-
フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
-
「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
-
「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
-
鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
-
【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
-
おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
- 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
- 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
- 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
- コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
- 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」