PCゲームと恋愛シミュレーションと、そのコンシューマー化について考えてみたCEDEC 2006(2/2 ページ)

» 2006年08月30日 19時59分 公開
[今藤弘一,ITmedia]
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恋愛シミュレーションは「背景+テキスト+立ち絵キャラ」だから想像力をかき立てる

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 続いて登壇した東氏は、現在の恋愛シミュレーション(ノベルゲーム)は1990年代後半から2000年代に発展してきたが、その原型はリーフの「雫」にあると語る。テキストと背景、そして立ち絵型のインタフェースで構成され、選択肢以外の自由度がプレーヤー側にないのが特徴だ。これは現在に至るまでほとんど変わっていなく、逆に選択肢が消滅し、むしろ徹底化されされる傾向にあると分析する。「背景+テキスト+立ち絵キャラという、このインタフェースに何か、想像力を喚起するものがあるのかもしれない」(東氏)。

 こうした中で、恋愛シミュレーションのユーザーは別のところにゲーム性を見いだしているのでは、と東氏。「インタラクション性よりも、中に描かれているものに対してゲーム性を感じている。また、作品の消化方法としてインターネットが活用されているのも重要」(東氏)。

 また東氏は、インターネットの普及により、ユーザーコミュニティの空間が広がったことも大きいと考える。「ネット環境がない時代は、作品同士について意見を交換するためにはサークルなどに入る必要があった。しかしいまではユーザーのブログなどで簡単に情報共有ができるとともに、意見交換ができる。おしゃべりが楽しいからゲームをプレイするという場合もあるだろう。ここからゲーム的感覚で二次創作が作られていく。ここから恋愛シミュレーションのゲーム性自体を考えていく必要がある」(東氏)。

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原作を大事にしながらもユーザーの目線で

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 アルケミストの浦野社長は、同社が展開するPCゲームの移植ビジネスについて概要を解説。PCゲームを家庭用ゲームに移植するのは、17歳以下のユーザーと女性に、原作のおもしろさを知ってもらうためだという。「アダルトゲームや同人ゲームにも、本質的におもしろいゲームは存在する。これを多くの人に知ってもらうことで、新たなビジネスチャンスが広がる」(浦野氏)。

 また、アダルトゲームの場合、アニメやコミック、ゲームといったメディアミックス展開を考えたときの調整役として、移植会社の占める役割は大きい、と浦野氏。ゲームを原作とするアニメやコミックが急増しているが、それぞれの商慣習が違うため、原作側とのトラブルも多いとのこと。「『アルケミストは分かってくれているのでよかった』と言われることが多いが、アルケミストの場合は“仲良くビジネスができる人と組む”のが原則」と、浦野氏。

 「移植ビジネスで重要なのは、原作を大事にしながらもユーザーの目線でものを作ること。原作の本数が出ているとか、数字だけを考えてビジネスを展開すると必ず失敗する。円満に解決する方法を模索することが大事で、必要なのはコミュニケーション能力」(浦野氏)。

5年以内に大手がPCゲームに参入?

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 最後に登壇者と芝村氏を交えてのラウンドテーブルが開催された。芝村氏はこれまでのセッションを振り返りながら「PCゲームが展開されてきた歴史は、制作側の立場から見ていくと分かりやすい。ゲームを作る上では差別化がなされないといけないので、これまでの商品とどう差別化するかの繰り返しで作品が作られてきただけ」と語る。「差別化の時に重要になるのはキーワード。セールストークは30秒以内、とよく言われるが、このため、これからは美少年ですよ、妹ですよ、といったキーワードが必要になる。このキーワードそれぞれに対してお互いに差別化を図ってきたのが歴史」(芝村氏)。

 ただし差別化が進むと、わけの分からないものになってしまうこともある、と芝村氏。「日本市場では分かるが、海外市場から見ると“ふしぎの国ニッポン”のようになりがち。浮世絵がいい例で、お互いの絵師が差別化を繰り返した結果、人物やキャラクターについては評価されなかったが、構図や背景、小物だけが評価されることとなった。我々の世界でも歴史が繰り返してしまうかもしれない」(芝村氏)。

 またゲーム性の喪失という点については「作り手としては“おもしろければよい”のであって、純粋にゲーム性がどうとか、数学的組み合わせの最適解がどこだと言ったことはユーザーには関係ないのでは。ソフトを買ってどれだけ満足度を得られるかが大事で、それに対してどういう価値を提供できるかによる」と述べ、本当の意味でのゲーム性の定義にはあまり意味はないと思う、と語った。

 恋愛シミュレーションの背景画が写真であったりするのも「それ自身が差別化の対象にはならないし、それ自身が攻撃的な商力、インパクトにならないと考えているから」(芝村氏)。限られた予算の中では、商品的キーワードや差別化に可能な限りマンパワーを割いているのがふつうであると語る。「同人ソフトの場合は予算がもっと少ないし、もっと先鋭化した予算配分比率になっているのでは。それが形になっているだけだと思う」(芝村氏)。

 また芝村氏は、海外に比べて日本のPCゲーム市場が小さいため、PCゲーム会社の力が弱いので手が回っていないのが現状であると語る。「小規模の企業が集まったり、協力プレイをして移植しているのが日本の市場。あるいは海外の有力案件を取ってきて移植していることもあるだろう」(芝村氏)。

 しかし今後を考えると、移植ビジネスが堅調に成長すれば、PCゲームの世界にも大手企業が進出してくる可能性が高い、と芝村氏。「今のところは同人ソフトや小規模のソフトハウスがPCゲームを制作しているが、商売の取っかかりが見えていないので逆上陸していなだけで、それも時間の問題だろう。最初からメディアミックスを考えて仕掛けてくる可能性も高い。移植ビジネスについては、資本のことを考えていくと未来が見えやすくなる」(芝村氏)。

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