CEDEC 2006:クリエーターの努力次第で“新たなゲーム表現”が生まれる
昭和女子大学にて開催されている「CEDEC 2006」において、セガのR&Dクリエイティブオフィサーである名越稔洋氏によるセッション「これからのクリエーターのあり方とゲーム表現と倫理哲学の重要性について」が行われた。
2006年8月30日から9月1日の3日間、昭和女子大学にて開催されている「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006」(以下、CEDEC 2006)において、セガのR&Dクリエイティブオフィサーである名越稔洋氏によるセッション「これからのクリエーターのあり方とゲーム表現と倫理哲学の重要性について」が行われた。
セッションはプレイステーション 2用ソフト「龍が如く」を参考例として進行。「龍が如く」は、これまでにない新しいゲーム、大人のためのエンターテイメントを目指し制作が進められたタイトルで、人間の欲望、愛、人情、裏切りといったドラマの数々が胸に突き刺さるアクションアドベンチャーとなっている(レビューはこちら)。
「社内的にけなされることはあっても、褒められることはなかった」と、名越氏は「龍が如く」プロジェクトについて振り返る。ただし、どんなに否定的なことを言われても、それを不満に思ったことはなかったという。「批判は覚悟の上。逆に何かが変わるのか? という期待に対するプレッシャーのほうが大変だった」(名越氏)
「龍が如く」の制作を進めるうえで、名越氏が重点を置いたのは「マーケティングの絞り込み」、「開発費を使う」、「プロジェクトに関わったすべての人に説明をする覚悟」の3つ。「重点を絞り込むことで、表現の必然性をはっきりさせたかった。そうすることで新しいものが生まれ、それに付いてくるユーザーがいる。その証明をしたかった」(名越氏)のだという。
続いて名越氏は、ゲームの表現や倫理基準について言及する。まずは敵を倒していくアクションアドベンチャーを例に取り、現在の基準についての説明を行ってくれた。それによると、アクションアドベンチャーにおいて、プランナーがまず考えるのは“殺す対象は何なのか?”になるのだという。この時、殺す対象が人間だとNGが出てしまうが、“人間じゃないものにする”、“戦国などに時代を変える”などのような回避方法が存在するとのこと。この基準を名越氏は「非常にあいまいな線引き」と一蹴する。
「本来はその表現がなぜ必要かという必然性の部分と、対象に対する責任が考えられるべきで、その上で表現の選択をさせてもらいたい。絵だけで線引きをしていたら、あまりにできないことが多い。現在の基準で言えば、ピカチュウが血を吐きながらけいれんを起こしても問題はない。だけど誰もやらないし、やるべきでもない。そんなことをしたら子どもたちがトラウマを抱えてしまう。でも、今の基準ではOKになる。つまり対象に対する責任は考えられていないということ。ゲームの価値観が変わっている以上、そこにはしかるべき倫理基準がなければならないはずで、それによって正しい基準が生まれる。クリエーターが表現したいものがもっと引き出しやすくなる」(名越氏)
社内からの批判や、新しいものに挑戦するプレッシャーなど、さまざまな苦難を乗り越えて制作した「龍が如く」では苦労も多かったと思われるが、何よりも「勉強になった」と語った名越氏。
最後には来場した多くのクリエーターに、「エロやバイオレンスに限らず、越えなきゃいけないハードルはたくさんあるが、越えること自体を面倒くさいと思っている人が業界には多い。それをさぼりすぎていたことが、こうなった大きな要因。クリエーターは越える努力をすべき。ユーザーは新しいものを求めていて、それをクリエーターが“もうこれ以上は”としてしまったら、先にはつながらない。海外はどんどんそういうところに投資していて、このままだと日本だけ離れ小島のようになる可能性がある。表現についてもっと突きつめないといけない。たくさんの人を幸せにできるゲームを提案して、夢のある環境を作っていきましょう」と訴え、セッションの幕を閉じた。
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