突然の販売開始、予想もしなかった低価格、フルHD対応――サプライズ尽くしのプレイステーション 3版「鉄拳5DR」:「鉄拳5 DARK RESURRECTION」レビュー(1/2 ページ)
このゲーム業界、発売延期の報は珍しくないが、発売が早まることは滅多になく、ましてや事前に何のアナウンスもなく発売されるソフトなんて聞いたことがない。年の暮れにバンダイナムコが仕掛けたサプライズ。見事なお手並み、いやはや参りました。
去る12月27日、それはPLAYSTATION Storeに置かれていた
年の瀬も押し迫った12月27日のこと。プレイステーション 3の購入以来、すっかり日課となった「まいにちいっしょ」を楽しんだ後、「何か新しいアイテムの配信はないかな?」とPLAYSTATION Storeを開いてみて……のけ反った。「鉄拳5 DARK RESURRECTION、フルHD対応でダウンロード販売開始!!!」とある。え?何で?もう売ってるの!?
バンダイナムコゲームスの3D対戦格闘ゲーム「鉄拳5 DARK RESURRECTION」(以下、鉄拳5DR)が、プレイステーション 3のダウンロードコンテンツとして有料配信されることは、12月8日に発表されていた。ただ、その時点で発売日(ダウンロード開始日)と価格は「未定」。発表の時期から考えて、3月頃の発売だろうと予想していた。それに、過去、プレイステーションとプレイステーション 2に投入された鉄拳シリーズも、すべて3月に発売されているから、やはり3月が濃厚だろう、と。それが、まさか発表からわずか3週間足らずで、しかも前もって発売日が知らされることなく販売開始になるとは……。わたしの予想、大ハズレ。
まあ、早く遊べるに越したことはないわけで、さっそく購入するべく心浮き立ちながらもページを開いて……、またものけ反った。価格は、何と2000円。しかも税込み。特に根拠があったわけでもないが、漠然と「3000円から3800円の範囲かな」と考えていただけに、2000円という価格設定はあまりに意外だった。
今回のプレイステーション 3版「鉄拳5DR」は、2005年11月に稼働を開始したアーケード版からの移植作。アーケードとプレイステーション 2で好評を博した「鉄拳5」のパワーアップバージョンにあたる作品で、「リリ」と「ドラグノフ」という2人の新キャラが追加されたほか、「アーマーキング」も復活。キャラクターカスタマイズ用の新アイテムや、新ステージも追加されている。プレイステーション 3版では、これらの要素に加え、鉄拳シリーズで初めて720p、1080i、1080pのHD出力に対応したほか、ボスキャラの「三島 仁八」も使用可能になったことが大きなセールスポイントだ。
PLAYSTATION Storeで購入手続きを済ませると、プレイステーション 3のHDDにダウンロードされるが、そのファイルサイズは829Mバイト。インストール時にその2倍(約1.6Gバイト)の空き容量を必要とするが、インストール完了後のHDD占有容量はダウンロードしたファイルと同じ829Mバイトになる。収録されているムービーやゲームモードが異なるので、単純に比較はできないものの、DVD-ROMで発売されたプレイステーション 2版「鉄拳5」が約3.8Gバイトだったことを考えると、意外と小さいなという印象を受ける。
注意しておきたいのは、この「鉄拳5DR」を含め、PLAYSTATION Storeで販売されているコンテンツを購入するのに、クレジットカードが必要になること。具体的にいうと、自分のウォレット(電子マネーを入れておく財布に相当するもの)にチャージ(入金)しておき、その残高を使ってコンテンツの代金を決済するのだが、ウォレットにチャージする方法が現時点でクレジットカードしか用意されていない。
アーケード版以上に鮮明で精細なフルHD出力
プレイステーション 3版「鉄拳5DR」の最大の注目点は、フルHD映像出力に対応したこと。TV側が対応していれば、720p(1280×720ドット)や1080i/1080p(1920×1080ドット)の高精細出力が可能になる。480pで出力されているアーケード版の映像も美しいが、プレイステーション 3版の画素数はアーケード版の約6倍(1080p)にも相当する。もちろん、秒間60フレームのなめらかな描画はフルHD出力時も維持される。
実際にプレイステーション 3版をHDTV上で見ると、アーケード版との違いは明らか。キャラクターの輪郭がなめらかで、非常に鮮明な映像が楽しめる。背景もより緻密になり、奥行き感が一段と増した印象。キャラクターのモーションもアーケード版のそれと何ら遜色がなく、処理落ちも見られない。ゲームセンターで現在も稼働中の「鉄拳5DR」が、ゲームセンターよりも美しい画質になって家庭で楽しめるというだけでも大きな魅力になる。
試しに、2005年3月に発売されたプレイステーション 2版「鉄拳5」とも画質を比較してみた。プレイステーション 2版では、オプションメニューで480p、16:9表示に切り替えることができ、プレイステーション 2の性能を使い切っていると思えるほどに映像のクオリティは高かったが、こうして見比べてみると、プレイステーション 3版の方が肌や衣服の質感が強く感じられ、背景のリアリティも大きく向上しているのがわかる。
また、今回のプレイステーション 3版「鉄拳5DR」では、「セルフシャドウ」と呼ばれる高度な映像処理も鉄拳シリーズで初めて取り入れている。これは、キャラクターに光が当たってできた影が、地面だけでなく、キャラクター自身の体にも落ちるというもの。単にフルHD化で解像感を高めただけでなく、セルフシャドウも用いることでキャラクターの実存感をいっそう強めている。
ただ、プレイステーション 3のソフトとしてどうかというと、決して突出したクオリティではないように感じる。例えば、キャラクターのモデリングデータはアーケード版のものをほぼそのまま使っているようで、部分的にまだ角張ったところが見てとれるのと、衣服などのテクスチャでも一部だが粗さが目立つところがある。もっとも、キャラクターのモデリングやテクスチャをプレイステーション 3向けに一から作り直したなら、プレイステーション 3でこれほど早く「鉄拳5DR」をリリースすることはできなかっただろうし、ファイルサイズが大きくなってダウンロード販売が困難になったかもしれない。アーケード版のデータを流用しながらも、これだけの短期間でグラフィックを調整してフルHD画質を実現したことの方に、むしろ驚きを覚える。
サウンド面については、出力がちょっと変わっている。他のプレイステーション 3ソフトと同様にドルビーデジタルで出力され、その信号自体は5.1chなのだが、サウンドオプションの「SPEAKER OUTPUT」を見ると、選択できる項目がステレオとモノラルの2種類しかない。実際にスピーカーから出ている音は、ムービーシーンはフロント2chのみ、ゲーム中は気がつかないほどかすかだがリア2chからも音が出ている。4chステレオというわけでもないようだが、バトル中のボイスや打撃音などが反響音のようにきわめて小さく鳴っている程度なので、部屋中を音が飛び交うようなサラウンド感はない。
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