2度の挫折を経て「FFXI」にハマりつつある独身男性の物語(その1):ヴァナ・ディールをもう一度(1/2 ページ)
今や世界中の冒険者たちが集う超巨大MMORPG「ファイナルファンタジーXI」。絶頂期のブームに乗り遅れた1人の冒険者が、時代の波に追いつこうと粉骨砕身でプレイする。目指すは異文化コミュニケーション?
「ファイナルファンタジーXI」(以下FFXI)。言わずと知れたプレイステーション 2初の、そしてFFシリーズ初のMMORPGだ。2002年5月に発売された本作はFFシリーズのファンはもちろん、MMORPGを初めてプレイするユーザーをも魅了し、発売されてから4年以上経つ今でも根強い人気を誇っている。
当時、ゲーム雑誌でほとんどのFFシリーズに携わってきた僕もその1人だった。「ヴァナ・ディール」という名の広大な世界を冒険し、時にはほかのプレーヤーとパーティを組み、難解なミッションをクリアしたりボスを倒したりと、仕事ではあるものの寝る間を惜しんでプレイに没頭した。
だが、ある日突然、僕はヴァナ・ディールへ行くのがすごく億劫になってしまった。面倒臭くなってしまったのだ。高レベルになるほどソロでのプレイが厳しくなり、レベルを上げるのにも膨大な時間がかかってしまう。クエストやミッションも同じで、とてもソロではクリアできないものが目白押し。必然的にパーティを組まなくては先のストーリーが楽しめない。パーティもすぐに組めるときもあれば、それだけで結構な時間を費やしたりするときもあった。MMORPGそのものが初プレイで、従来のオフラインゲームに慣れ親しんでいた僕は、何をするにも時間がかかるのがすごく嫌だった。
それは決して「FFXI」がつまらないというわけではない。MMORPGというジャンルに僕がついていけなかっただけで、言うならばそれに順応できなかった僕に非がある。そして仕事であるにも関わらず、適当な理由をつけて「FFXI」から足を洗うことにした。それから数年後、とある人の「FFXI」プレイ日記を読んでヴァナ・ディールの素晴らしさに感銘し(体験したはずなのに……)、もう一度あの世界へ旅立つことを決意する。
その頃は初の拡張ディスク「ジラートの幻影」がすでに発売されており、前回のコンテンツID利用期間がとうに過ぎていた僕は同梱版を買うことにした。そしていざ、懐かしのヴァナ・ディールへと冒険に出る。一見しただけではリタイアした頃と何ら変わらない見慣れた景色。しかし、ログウィンドウを見ると確かな違い、時間の流れを感じた。英語が混じっている。話には聞いていたが「FFXI」も今や世界進出を果たし、それに伴い外国人プレーヤーも数多く参加しているのだ。とくに低レベル層は外国人プレーヤーが多く、始めたばかりの僕はよく外国人のみで編成されたパーティに誘われる機会が多かった。
つたない英語も話せない僕は、ネットで英語を翻訳しつつプレイするも、やはり何を言っているのか100パーセント理解することができず、自分が言いたいことも伝えることができない。そもそも、一度ネットの翻訳機を介して会話するという手間が、元来面倒臭がりの僕にはやはり面倒臭く、次第に物静かな日本人へとなっていった。そして最終的に日本人と一度も会話することなく、またヴァナ・ディールから立ち去ったのである。
それからさらに月日が経った今年の10月。僕は3度目の挑戦状をヴァナ・ディールへ叩き込んだ。サービス開始から現在まで「FFXI」をプレイし続けている、ヴァナ・ディール大好きっ子の知人に強く勧められたのがきっかけだ。発売から4年以上経ち、幾度もバージョンアップを重ね、さらには3枚目の拡張ディスク「アトルガンの秘宝」も発売された現在、目まぐるしく移り変わったヴァナ・ディールを楽しむことができるのだろうか……。
いささか不安はあったものの、知人の熱いトークに押し切られ、半ば仕方なくプレイを再開した。その結果、僕は時代のギャップにとまどいを感じながらも楽しくプレイを続けている。MMORPGというジャンルは、発売されてから時間が経ち過ぎるとその世界についていけなくて、敷居が高いと感じるユーザーはたくさんいると思う。僕もその1人だった。
今さら確立した文化ができあがった「FFXI」になじめるのかと疑問に思った。だが、不思議なことに今のところはすごく楽しめている。ネットゲームを介して人とつながることのおもしろさを、何度も挫折を繰り返してようやく理解できたからだろう。システムやストーリーが良い、悪いではなく、人とのつながりがおもしろさを無限に広げてくれる。
当たり前だが同じ目的を持ったプレーヤーと一緒にパーティを組んでプレイしたほうが、ソロでプレイするよりも俄然楽しい。そして、そのためにはコミュニケーションをとる努力をしなければならない。これはすべてのMMORPGに言えることだろうが、ほかのオフラインゲームをプレイしていた頃はそんなこと考えもしなかった。初めてそれに気づかせてくれたのは「FFXI」だった。
少々前置きが長くなってしまったが、つまり何が言いたいのかというと、「今からでもFFXIをプレイするのは遅くない」ということ。この連載では、僕がとまどいながらもヴァナ・ディールを闊歩する実体験を、赤っ恥要素をふまえて紹介していこうと思う。今から「FFXI」を始めようかどうか考えている人はもちろん、百戦錬磨のユーザーも昔を懐かしむような気持ちで楽しんでもらえれば幸いだ。
街中にモンスターがひしめき合う!?
挫折はしたもののさすがに3度目のプレイなだけあり、1から始めるプレーヤーよりはいく分システム、世界観、文化に順応しやすいはずだ。とりあえず自分の所属国であるバストゥークを歩いてみると、街中にモンスターがたくさんいるではないか。
プレイ開始早々に時代に取り残された感が否めなかったが、これはすぐに解決した。初めてログインした日がハロウィン・イベントの真っ只中で、特定のNPCにお菓子を渡すとモンスターに仮装できるのだ。まだ始めたばかりの僕は、もちろんお菓子を持っていないのでハロウィンを楽しむことなくその光景をただうらやましそうに見ていた。
そもそもお菓子は、僕がプレイしていた頃にはなかったアイテムだ。そこでアイテムの移り変わりが気になった僕は、とりあえず競売所のラインアップをのぞいてみることにした。やはり当然のように見慣れぬ名前のアイテムがずらりと並んでいる。特に驚いたのは装備品で、「エンチャント」やら「潜在能力」やらと、特殊効果のあるものが数多く取り揃えられている。そのほとんどが高額で取引されており、当然そんなギルを持ち合わせてない僕は、初期装備で街を飛び出し冒険に出た。(絶対いつか買いそろえてやる!)そんな野望を胸に秘め……。
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