3Dオンラインコミュニティ「Home」で実現する「GAME 3.0」――WWS社長フィル・ハリソン氏基調講演(1/3 ページ)
北米サンフランシスコで開催しているGame Developers Conference 2007の基調講演に立ったWWS社長フィル・ハリソン氏は、新たなビジョンを体現したユーザーコミュニティ「Home」を、2007年秋から順次PS3の販売地域に向けて展開していくと発表した。
Game Developers Conference 2007も会期3日目となり、本日より本格的な技術セッションが開始となった。それに合わせ、ソニー・コンピュータエンタテインメント・ワールドワイドスタジオ社長フィル・ハリソン氏の基調講演が開催された。ハリソン氏は、「GAME 3.0」という新たなビジョンを示しつつ、GAME 3.0のビジョンに沿ったプレイステーション 3(以下、PS3)向け新サービスおよび新タイトルを発表した。
将来のビデオゲームビジネスは“GAME 3.0”に移行する
基調講演の冒頭、ハリソン氏は、次世代Webサービスの総称である“Web 2.0”の例を示しつつ、これからの新たなビデオゲームビジネスのビジョンとして“GAME 3.0”というコンセプトを示した。
この、GAME 3.0とはどういったものなのか。ハリソン氏は、「GAME 3.0世代では、ネットワークに接続された強力なゲームコンソールにより、ユーザーが主体となったこれまでにないゲーム体験が実現される世代になる」と語った。
1970年代から始まった初期のゲームコンソールは、ネットワークに接続されることなくスタンドアロンで利用され、ゲームカートリッジやゲームディスクによって消費者にゲームが提供されていた。ゲームカートリッジやゲームディスクは内容が決まっており、内容を加えることができず、プレーヤーはそれらに用意されている内容以上のことは何もできなかった。これが“GAME 1.0”世代。また“GAME 2.0”世代では、ネットワークに接続して利用できるゲームコンソールまたはPCが中心となり、インターネットを介した対戦プレイが可能となった。ただし、その世代でもまだゲームはディスクによって提供されており、ユーザーはゲーム開発会社が作り上げたものを楽しむだけに過ぎなかった。
それに対しGAME 3.0世代では、ネットワーク接続された強力なパワーを持つゲームコンソールで、プレーヤーが自由に内容をカスタマイズして独自の体験ができるようになるだけでなく、オンラインで接続された世界中のプレーヤーとその体験を共有することが可能となる。つまり、プレーヤーは与えられたもののみを楽しむのではなく、プレーヤーが新たな楽しみを作り出せるようになる。これがGAME 3.0というわけだ。
リアルタイム3D描画のソーシャルネットワーキングサービス「Home」
GAME 3.0のコンセプトをベースとした具体例として、ハリソン氏は「Home」というプレイステーション 3向けの新しいサービスを発表した。
Homeは、リアルタイム3D描画で描かれる仮想空間内で、プレーヤーの分身となるアバターを操作し、他のユーザーとの交流を行ったり、自分だけの部屋をカスタマイズして楽しむ、ソーシャルネットワーキングサービスをベースとしたサービスだ。「Home」は、PLAYSTATION Storeから無料ダウンロードの上、PS3上のXMB(クロスメディアバー)から直接起動できるようになる。
プレーヤーの分身となるアバターは、非常に細かな部分まで自由にカスタマイズ可能となっている。顔や体の形、肌の色、髪型などはもちろん、首の長さまでも自由にカスタマイズできる。また、Homeにはプレーヤーごとの固有スペースとなる個人の部屋と、全ユーザーが自由に行き交うパブリックスペースが用意されるが、もちろん個人の部屋も自由にカスタマイズ可能となっている。部屋のカスタマイズ用として用意される家具や装飾品は、ダウンロードコンテンツとして提供される。
他のプレーヤーとの会話は、キーボードを利用したテキストベースのチャットだけでなく、ヘッドセットを接続してボイスチャットも可能。また、アバターにはエモートや踊りなどの感情表現アニメーションも用意されている。他のプレーヤーとの交流はパブリックスペースが基本となるが、カスタマイズした自分の部屋に招き入れ、固有スペース内での交流も可能。例えば、特定のゲームでクランを組んでいる友人たちを招いて、次のゲームプレイについて語り合ったりできる。しかも、Homeから特定のゲームを直接起動してプレイしたり、ゲームプレイ終了後に直接Homeに戻ることも可能となっている。ゲーム開始直前にクランのメンバーを集めてプレイ内容を話し合い、直接ゲームに飛んでプレイ、その後またhomeに戻って反省会。こういったこともHomeなら簡単に実現できるそうだ。
Home内では、様々な場所でムービーが表示される。例えば、パブリックスペースの映像表示スペースや、自分の部屋に置いたテレビなどだ。それら映像表示スペースには、最新ゲームや映画の予告編、またプレイステーション 3のHDDに保存されているムービーデータ、DVDやBlu-ray DISKの映像などを再生できる。さらに、「Theater」というパブリックスペースは、シネマコンプレックスのような構造となっており、プレイステーションネットワークで配信される映画やテレビ番組などを映画館さながらに楽しめる。しかも、それら映像は全てHDクオリティのデータを再生可能となっている。
映像以外にも、HDDに保存されているMP3ファイルや静止画ファイルなども再生・表示可能。例えば、自分の部屋にジュークボックスを設置してHDDに保存されている音楽を再生したり、額縁を置いてデジカメで撮影した恋人の写真を飾る、といったこともできる。
Homeで実現しようとしていること自体は、特に目新しいというものではない。実際、MMORPGのロビーシステムなどで実現されているものと大きく変わるものではない。ただ、これだけのクオリティのサービスが無料で提供され、プレイステーション 3ユーザーすべてが利用できるという点は、これまでにない試みと言っていいだろう。もちろん、Homeをどう活用してどう楽しむかという部分は、すべてユーザーに委ねられているわけで、GAME 3.0のコンセプトを具現化するものであるということは間違いない。Homeは2007年4月から大規模なβテストが開始され、2007年秋に正式サービスが開始される予定となっている。
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