人は痛い思いが身に染みなくては、本質に近づけない――「ゼルダ」シリーズの青沼英二氏講演リポート:GDC 2007(2/3 ページ)
リアルゼルダは突破口が見つからず窮地に
DS版のゼルダは、タッチスクリーンによって新たな遊びが考案され新たな方向性が確立された。しかし、ゲームキューブ用として開発を進めていたリアルゼルダの方は、ハードによる新たな遊びの実現は難しく、DS版のようなアイデアはなかなか出てこなかったそうだ。かといって、ゼルダの遊び方を根本的に変えてしまうことは、すでに確立しているゼルダのスタイルを崩すことになるため、既存のゼルダユーザーすら失ってしまう可能性がある。
そこで青沼氏は、リアルゼルダにユーザーの期待が高まっていることも受け、過去にも展開した、表と裏、過去と未来という世界の対比を遊びの要素にし、さらにその世界でリンクがオオカミに姿を変える、という提案を行った。世界の変化に加えて姿の変化も加わることで、新たな遊びに対する突破口になるのでは、と考えてのものだ。
ただ、後にこの提案について宮本氏から、「3Dの世界では、2本足のリンクですら処理が難しいのに、4本足のオオカミを入れようと考えるのは素人のやることだ!」と叱られ、大いに反省することになる。
ただ、その提案後青沼氏は、カプコン製作のゲームボーイアドバンス向け「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」(以下、「ふしぎのぼうし」)の監修に熱を入れるようになった。これは、「ふしぎのぼうし」が、普通の世界とこびとの世界を行き来するという、リアルゼルダで設定した方向性に近いものだったため、リアルゼルダにも良い影響が与えられるのではないか、と考えたからだそうだ。
とはいえ、青沼氏自身、「今考えると、わたしがこの『ふしぎのぼうし』の製作に熱を入れたのは、リアルゼルダに新たな突破口が見いだせない状況から逃げ出し、スタッフにその答えを出してもらおうという、自分勝手な心理が働いていたからではないかと反省するのです」と言っていたように、好転しない状況から無意識のうちに逃げていたのである。そして、このことが、後に青沼氏自身を危機的な状況に陥れることになったそうだ。
「ふしぎのぼうし」の製作完了後、青沼氏は2005年のE3に向けてリアルゼルダのプレイアブル版の製作に向けた検討に入った。しかしその時点では、細かな遊びは多数用意されてはいたものの、代表となる遊びがなく、細かな遊びをまとめ上げる設計もなかったそうだ。また、2世界やオオカミでの遊びの検討を優先させた結果、リアルになったリンクの動きに魅力が感じられなかった。しかも、宮本氏からは、「やるなら120%のゼルダを目指せ!」という指示が出ていたのだ。
120%のゼルダどころか、実際は危機的な状況。そこで青沼氏は、結果はどうあれ、今考えられる新規性のある遊びや魅力のあるリンクの動きをE3までに作って、E3を乗り切ってから考えることにし、それ以降はプロデューサーではなくディレクターとして関与していくことになる。
2005年のE3で、このリアルゼルダは「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」(以下、「トワイライトプリンセス」)という正式名称で発表され、非常に高い評価を得た。ただ、その高評価とは裏腹に、青沼氏にとっては、絵が新しくなって魅力的には見えるものの、DS版のような新しい遊びの要素がなく、その部分が超えられない壁として立ちはだかっていた。
Wiiの登場でリアルゼルダにも変化が
2005年のE3帰国後、青沼氏は宮本氏より「レボリューションのポインティング操作は、ゼルダの弓矢の操作を快適にするために設計したようなもの。これを使ったゼルダを検討してみないか?」という話を持ちかけられる。
青沼氏も、レボリューション(当時のWiiのコードネーム)が実現する直感的なポインティングとモーションセンサーによる体感的な操作は、いつかはゼルダに取り入れたいと考えていたが、それは「トワイライトプリンセス」完成後のことと思っていたそうで、宮本氏の、今検討するという提案に驚いたそうだ。しかし、決定打の欠ける現状に役に立つのではないかと考え、ポインティングによる弓矢の操作を実験的に実現してみることになった。
できあがったものは、まだまだ検討すべき部分の多い不完全なものだったが、対象物に直感的に狙いを定められる手応えは、ゼルダが生まれ変わった感覚を十分に感じさせるものだったそうだ。ただ、「トワイライトプリンセス」をレボリューション対応にするということは、ゲームキューブで出ることを期待しているユーザーを裏切ることになる。となると、ゲームキューブ版とレボリューション版を同時に作る必要があるが、期日までには到底不可能だった。そこで宮本氏が上層部に掛けあい、「2005年のリリースを待ってくれているユーザーには残念な思いをさせてしまうけど、120%のゼルダをゲームキューブとレボリューションの両方で遊べるのなら、それらの発売はレボリューションのローンチとして2006年になってしまっても、ユーザーは喜んでくれるのではないか」という社長の岩田聡氏の決断をもって、「トワイライトプリンセス」はゲームキューブ版とレボリューション版の2つを製作することになった。
ただ、青沼氏はそれまでローンチタイトルの経験がなく、どのように製作の舵取りをすればいいのか、また2ハード向けを同時に製作するにはどれだけの時間が必要になるのか、全く検討がついていなかったそうだ。そこで、まずゲームキューブ版の試用が安定した段階でWii版(講演ではここから呼称がWiiに変わった)への本格的な対応を取ることにした。また、青沼氏と宮本氏は、平行してどんな要素をWiiのオペレーションに置き換えればいいのか、という部分の検討に入った。
まずはポインティング。宮本氏がポインティングによって実現したかったのは、ゲームキューブ版での、3Dスティックを使ったカメラコントロールの操作を完全になくし、ポインティングだけでカメラを動かすというシンプルな操作だったそうだ。3Dスティックを利用したカメラコントロールでは、スティックを上下に倒したときのカメラの動きに2パターンあるが、宮本氏はそれをかねてよりシンプルな方法に統一したいと考えていたからだ。
その考えを実現した結果、ブーメランを使う場面の操作では、ブーメランを中心とした一定範囲内にカーソルがある場合には対象物をポイントし、その範囲外にカーソルが出るとその方向にカメラが動く、という操作法を実現。
次にモーションセンサー。青沼氏は、Wiiリモコンを振る操作をリンクの剣を振る操作に採用したいと考えていたため、普段は客観視点のところ、戦闘時にはリンクの主観視点に切り替わる方式を採用し試してみたそうだ。ただ、この主観視点の戦闘は良くないと感じたそうだ。なぜなら、普段さまざまなアクションを見せるリンクが、キモとなるシーンである戦闘時にアクションの要素がなくなってしまうからだ。ただ、客観視点に戻したとしても、リンクが左利きであることから、基本的に右手に持つWiiリモコンによる操作と画面内のリンクの動作が異なり、こちらも違和感を感じてしまう。そこで、この時点ではモーションセンサーによる剣振りをあきらめるという結論を出し、Bボタンを利用するようにした。
またゲームキューブ版でアイテムボタンとして利用していたXYボタンがWiiリモコンにはないため、十字ボタンで代用。これによってWiiへの対応を一応完了させ、2006年のE3にプレイアブル版として出展することになった。
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