嵐で洋館に閉じこめられた9人の運命は?――個性派同士のコラボによる推理アドベンチャー「雨格子の館」レビュー(3/3 ページ)

» 2007年03月30日 00時00分 公開
[卯月鮎,ITmedia]
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膨大な手がかりやキーワードに目を見張る

 本作では7月21日から始まる7日間の間に、殺人を阻止し、犯人の指摘・説得を目指す。

 1日の流れは朝パートと夕方パートに分かれる。朝パートでは館の見取り図から部屋を選んで移動し、部屋の中を調べたり、人と話したりして、情報を集めていく。

 このゲームには行動力「アクションゲージ」の概念があり、ひとつ行動を取るたびにゲージは減っていく。すべて使い切るとその日の調査は終了、夕方パートに移行する。朝パートでどんな行動を取るかで、殺人が起きるかどうかが決まる。たとえ、殺人が起きないルートに入っても、夕方パートの会話中の選択肢によっては、ターゲットが殺害されてしまうこともあるので慎重に。

 主人公が調査に使うコマンドは、主に「調べる」、「話す」の2つ。「調べる」では、ポインタを動かして気になる部分をチェックしていく。「収納室A」、「開かずの部屋」、地下の「ボイラー室」など、怪しそうな部屋が多く、宝探しのような楽しみがある。

 「話す」は入手したキーワードを使って各人物に聞き込みをするコマンド。このキーワードが膨大なので、何を聞くをきちんと判断しなくてはならない。「人物」、「場所」、「物品」、「事象」、「団体」、「本」。キーワードは6のカテゴリーに分けられている。1つのキーワードを聞くと新しいキーワードが出てくることもあり、話はさらに広がっていく。意外なキーワードから思わぬ反応が飛び出すことも多く、聞き込みは単純に面白い。ゲージの制限さえなければすべて聞いてみたいところだ。

 1つ残念なのは、キーワードを1個聞くと部屋から追い出されてしまう点。いちいちほかの部屋に移動してから戻ってこなければならないのが面倒だ(好感度が高いと複数回質問ができる)。会話も事件解決の重要な糸口となるだけに、これはストレスがたまる仕様だ。

画像 ミステリー作家の名前がついた部屋が並ぶ、館の見取り図。地下には、探偵ものにつきもののお約束もあるとか!?
画像 会話の中では選択肢が登場する場合も。選んだ答えによって好感度が上下したり、話の展開が変わったりする
画像 「調べる」はオーソドックスなポインタ式。部屋のあちこちを調べると、アイテムが手に入ることもある

画像 「北速水涼介」シリーズを始め、多くのミステリー小説を書いた高遠延二郎。本棚をクリックすると詳しい内容がわかる。どれも面白そうだ

 話したり各部屋を調べたりする以外に、早めに手をつけておきたいのが、書斎に置いてある本のチェックだ。第一の殺人は推理作家・高遠延二郎の作品『黒猫の毒』とリンクしていた。小説に描かれた殺され方をなぞって、現実でも殺人が起こる。次の殺人もやはり……。ただ、本棚には高遠延二郎の著作が何十作とある。どれが関係する本なのか……。

 ほかにも書斎には、「正しいマリモの育て方」や「SAMURAI NEWS(1)〜(8)」、「ふよふよぴこん」、「アメフラシ戦記 攻略本」なんて変わった本も並んでいる。これらはまったく意味のないものから、実はヒントになるものまでさまざま。本を調べているとあっという間に行動力がなくなってしまうが、ここは避けて通れない作業だ。

アリバイ表で矛盾を突け!

 「雨格子の館」には、ミステリーらしい独自のシステムも存在する。まずひとつは「アリバイ表」。殺人が起きた際の証言から、各キャラクターがどの時間、どこにいたかをまとめた表が見られる。アリバイ表は自分の部屋で編集できるので、その後の聞き込みでおかしな点に気づいたら、アリバイ表を直しておこう。犯人を指摘する際にも必須となる。

 もうひとつは「書庫推理」。こちらは7日間、毎日起こる殺人の標的と見立てに使われる本の題名を予測する表になっている。この表が正しく作れれば、殺人はほぼ防げたといっても過言ではない。今日狙われている人物に会って警戒するように注意をしよう。

 これらの表は、探偵ゲーム好きにはゾクゾクするような小道具だろう。本編に大がかりなトリックはないが、こうした細かい部分で探偵気分を高めてくれる。

画像 事件発生前後の、各キャラクターの居場所がまとめられたアリバイ表。しかし、犯人は嘘をついている。矛盾点が見つかったら書き直しを
画像 「書庫推理」では、犯人が温室に置いた品から、どの本が暗示されているかを推理する。それがわかればあとは阻止するだけ

 ゲームクリア時には「探偵ランク」が表示される。2日目以降のターゲットを守りきり、犯人も説得して自首させれば、最高のSランクに近づく。実はかなり歯ごたえがあるので、おそらく初回プレイでは最低のDランクになってしまうだろう(筆者も恥ずかしながら初回プレイはDランクだった。いきなりAランク以上を叩き出したプレイヤーは名探偵の素質あり!)。しかし、何度も挑戦してSランクを目指す楽しみがある。

貴重な推理アドベンチャーの新作

 本作は、“山中の洋館”、“犯人の予告”、“見立て殺人”……と舞台装置がそろっており、それにあわせてどのようにストーリーが展開されるのか興味があったのだが、トリックや動機の面でやや弱い印象を持ったものの、推理アドベンチャーゲームとしては秀作だと思う。プレーヤーと等身大の、ごく平凡な大学生の和が、地道に聞き込みして事件の背景を探っていく。天才探偵がプレーヤーを置き去りにして、ズバズバ事件を解決してしまう、なんてことはない。和がこれまでの主人公像を打ち破ってあまりに怖がりで臆病だから、「自分が頑張らないといけない」という気にさせられるのだ。

 ニーズがある割には、この手のジャンルのゲームは数少ない。和と日織の、ルーキー探偵コンビは、今後どんな活躍を見せてくれるのか? ぜひとも私たちに、ゲームで報告してほしいものだ。

(C)2006 FOG/NIPPON ICHI SOFTWARE INC.


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