今度の「聖剣伝説」は軍を育てる――まるで別物のように変化した「聖剣」の魅力とは:「聖剣伝説 HEROES of MANA」レビュー(2/2 ページ)
短時間で最適な軍を構築するのが熱い!
戦闘MOBは4種類に大別されると述べたが、実はこれらには強弱関係が設定されている。飛翔MOBは重装MOBに2倍のダメージを与えられるが、弓MOBからは逆に2倍のダメージを受けてしまう……という感じだ。ミッションに登場する敵にあわせ、最適なMOBで軍を編成するという戦略の楽しさが味わえるのだ。
ただし、得意なユニットに攻撃するからといって、油断は禁物だ。たとえ飛翔MOBに強い弓MOBでも、さすがに10倍の数の敵は倒せないだろう。つまり、ユニット間で優劣があったとしても、数でその優劣をひっくり返すことが可能なのだ。これを逆に考えると、有利なユニットに立ち向かうとき、なるべく大人数で攻めたほうが、こちらの被害を最小限に抑えることが可能だ。
また、敵はこちらから攻撃するのを待っているワケではない。相手からこちらに向かって攻めてくる場合も多いのだ。そのため、いかに早く軍を編成できるかも勝敗に重要な影響を及ぼす。さらに、ミッションの途中で予期せぬ場所から敵の増援部隊が登場することもある。実際筆者も、目前の敵に気を取られて、気がつけば母艦がピンチ……という、手に汗握る状況を何度か経験した。ミッションが終了するまで終始気を抜けない、緊張感あふれる戦いが楽しめるのも、本作の大きな魅力であろう。
ちなみに本作は、マップ上に登場させられる最大ユニット数が決められている。そのため、際限なしに大軍を編成する、ということは不可能だ。「相手は飛翔MOBが多いから、弓MOBを6体ぐらい作成して……」というように、どのユニットをどれくらい作成すれば丁度よいか、という戦略性もあるのだ。
スクエニらしい召喚シーンも登場
「ファイナルファンタジー」シリーズに代表されるスクウェア・エニックスのRPGで、登場頻度が高いシステムの“召喚獣”。バハムートやオーディンといった神話上の強力なキャラクターを召喚し、ドハデな演出とともに大ダメージを与えるというあのシステムは、本作にも組み込まれている。
ゲームを進めると、ノームやウィスプといった精霊が味方になり、同時に召喚施設が作成可能になる。この召喚施設を使用すると、対応する神獣を召喚でき、ドハデなムービーとともにマップ上の敵すべてに大ダメージを与えられるのだ。ただし他の施設とは異なり、召喚施設は使用すると消滅してしまうという、使い切りタイプだ。加えて施設の作成に必要なコストが非常に高いため、おいそれと使用できるモノではない。ここぞという局面で使用する、文字通り切り札的なシステムとして役立ってくれるだろう。
キャラクターの強化は装備で行う
本編の「聖剣伝説」シリーズはRPGだったため、キャラクターを成長させる楽しみがあった。だが本作はRTSのため、基本的にキャラクターは成長しない。数々のアイテムを装備して、キャラクターを強化する仕組みだ。
アイテムはマップ上に隠されており、その上をキャラクターが移動すると入手できる。ただし、どこに隠されているのかは移動してみないと分からず、さらに入手できたかは、プレイ中は画面下に表示される小さなアイコンが一定時間変わるだけなので、見逃すことが多い。ミッション終了後のリザルト画面で「こんなアイテムを入手していたんだ」と判明することが大半であろう。また、良い成績でミッションを終了すると、褒章という形でアイテムを入手できることもある。
戦闘を繰り返しこなしてキャラクターを育てるのが好きなプレーヤーは、この仕様は残念かもしれない。ただし筆者にとっては、こちらの方が好ましく思えた。というのも、筆者はステージクリアタイプのRPGでは、勝敗以外に、お気に入りのキャラクターを十分に育てられたかどうかにこだわるからだ。
本作では、仮に少し失敗しても、その失敗が次のステージに持ち越されないため、良い結果が出るまで“同じステージをプレイし直す”必要を感じない。本作の長所であるテンポの良さは、この部分によるところも大きいと思う。
スコアアタック的な楽しみ方もアリ!
本作では、ミッションクリアー後に成績が表示される。クリアーまでの時間や倒されたMOB数、入手した資源などからそのスコアが算出される仕組みだ。自分のプレイがスコアとして記録される以上、良いスコアを出したいと思うのはゲーマーのサガだろう。
そこで活用したいのが、単体として用意されたミッションにチャレンジする“フリーモード”だ。ミッションは、シングルプレイを進めたり、Wi-Fiに接続すると、徐々に増えていく仕組みだ。
この“フリーモード”は、シングルモードで進めたセーブデータを利用して遊ぶため、シングルモードでは序盤に登場したマップを、後半で仲間になったカリスマユニットで戦うという、一風変わった遊び方が可能だ。また、マップはシングルモードと同じでも、勝利条件や登場MOBが変わるため、新鮮な気持ちで楽しめる。
操作性やシステムは改善の余地あり
今までにない「聖剣伝説」を目指した本作だが、残念ながらプレイしていてストレスを感じる局面があった。その多くは、ゲームシステムが原因となるものだ。
本作のマップは格子状に区切られており(同社の「ファイナルファンタジー タクティクス」風、といえばわかるだろうか)、キャラクターはそのマス目にそって移動する。早い話、斜めに移動することができないため、対角線上の目的地へ向かう場合、かなり無駄に移動する場合が多々あるのだ。また、この移動する際の思考が少々単純で、例えば1マスだけ離れた対角線上の敵を攻撃する際は、プレーヤーユニットが右上に進み、対する敵ユニットは左下に向かい、結果的に2つのユニットがクルクル回ってなかなか戦闘が発生しない……という、もどかしい局面に何度か遭遇した。
これに加えて、各キャラクター同士が“重なれない”というのも、ストレスを増大させる一員であった。上記のようにキャラクターはマス目にそって移動するため、敵一体に直接攻撃できるのは、その敵の上下左右にいる計4体のみだ。いくら大量のユニットを率いても、一度に戦えるのが4体だけであれば、残りのユニットは無駄な時間を過ごすことになってしまう。倒された時の予備に待機している、と考えることも可能だが、消耗戦という印象が強く、かなり不毛な戦いに感じてしまう。
さらに、せまい通路、例えば横2マス幅の場所を大軍で移動するとしよう。その2マスが自軍のユニットでふさがれてしまうと、後続のユニットは“そこは移動できないな”と思いこみ、大きく迂回して目的地に向かおうとするのだ。ここまで規模が大きくなくとも、ある目的地へ複数のユニットを移動させようとすると、明らかにヘンなルートを通って移動しようとしている局面が多々あった。まあ一言で言えば“ユニットが思い通りに移動してくれない”のである。
また、資源を集めたり、生産拠点を建設する必要があるなど、PC版のRTSでよく登場する“おやくそく”なシステムをそのまま採用している部分も消化不良に感じた。特に存在する必要性を感じなかったので、もっと簡略化したり、大幅に変えてしまった方が良かったのではないだろうか。このあたりのシステムは、もし次回作があるとすれば、ぜひ改善していただきたい。それだけで、本作の完成度はグッと上昇することだろう。
RTSにチャレンジしたことは評価したい
苦言が多くなってしまったが、ゲーム専用機という市場にてほぼ認知されていない“RTS”というジャンルに挑戦したチャレンジ精神は、大きく評価したいと思う。
また、PCのRTSに比べてシステムが簡単で(それでもまだ複雑だとは思うが)、かつ難易度が低いため、RTS初心者でも、ほとんど手詰まりすることが無いバランスは良いポイントだ。加えて1ステージが10〜20分ほどで終わるため、テンポよくサクサク遊べるのは気に入った。
また、「聖剣伝説」ならば当然かもしれないが、RTSとしては珍しい、凝ったストーリーを楽しめるのは新鮮に感じた。PCとは異なり、まだまだ通信対戦が一般的ではない携帯型ゲーム機では、シングルプレイを重視するのは正しい方向であるため、次回作ではさらなるパワーアップに期待したい。
総合的に見ると、目新しい戦略ゲームを楽しみたいプレーヤーには楽しめる作品といえるだろう。ただし、従来の「聖剣伝説」シリーズとは完全に別モノであるため、アクションRPGとしての「聖剣伝説」を期待したユーザーは肩すかしをくらう可能性が高い。本作が気になっているファンは、その点だけ十分に注意されたい。次回作が期待できる意欲作だ。
「聖剣伝説 HEROES of MANA」 | |
対応機種 | ニンテンドーDS |
メーカー | スクウェア・エニックス |
ジャンル | ストラテジーRPG |
発売日 | 2007年3月8日 |
価格(税込み) | 5040円 |
プレイ人数 | 1〜2人(ワイヤレス通信対応・Wi-Fi通信対応) |
CERO | A区分(全年齢対象) |
このレビュー記事を読んでいただいた方2名に、ニンテンドーDSソフト「聖剣伝説 HEROES of MANA」をプレゼントします。以下のフォームにメールアドレスと、ITmedia +D Gamesへのご意見・ご感想(必須)をご記入のうえご応募ください。締切は4月17日午前0時です。なお当選の発表は、当選された方のメールアドレスへのご連絡を持って代えさせていただきます。
関連記事
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
-
「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
-
「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
-
餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
-
毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
-
「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
-
放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
-
脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
-
父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
- 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
- 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
- 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
- コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
- 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」