今度の「聖剣伝説」は軍を育てる――まるで別物のように変化した「聖剣」の魅力とは「聖剣伝説 HEROES of MANA」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年04月11日 00時26分 公開
[板橋舟人,ITmedia]
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短時間で最適な軍を構築するのが熱い!

各MOBには強弱関係が設定されている。敵の主力MOBに対して有利に戦えるMOBを中心に、軍を編成したい

 戦闘MOBは4種類に大別されると述べたが、実はこれらには強弱関係が設定されている。飛翔MOBは重装MOBに2倍のダメージを与えられるが、弓MOBからは逆に2倍のダメージを受けてしまう……という感じだ。ミッションに登場する敵にあわせ、最適なMOBで軍を編成するという戦略の楽しさが味わえるのだ。

 ただし、得意なユニットに攻撃するからといって、油断は禁物だ。たとえ飛翔MOBに強い弓MOBでも、さすがに10倍の数の敵は倒せないだろう。つまり、ユニット間で優劣があったとしても、数でその優劣をひっくり返すことが可能なのだ。これを逆に考えると、有利なユニットに立ち向かうとき、なるべく大人数で攻めたほうが、こちらの被害を最小限に抑えることが可能だ。

 また、敵はこちらから攻撃するのを待っているワケではない。相手からこちらに向かって攻めてくる場合も多いのだ。そのため、いかに早く軍を編成できるかも勝敗に重要な影響を及ぼす。さらに、ミッションの途中で予期せぬ場所から敵の増援部隊が登場することもある。実際筆者も、目前の敵に気を取られて、気がつけば母艦がピンチ……という、手に汗握る状況を何度か経験した。ミッションが終了するまで終始気を抜けない、緊張感あふれる戦いが楽しめるのも、本作の大きな魅力であろう。

 ちなみに本作は、マップ上に登場させられる最大ユニット数が決められている。そのため、際限なしに大軍を編成する、ということは不可能だ。「相手は飛翔MOBが多いから、弓MOBを6体ぐらい作成して……」というように、どのユニットをどれくらい作成すれば丁度よいか、という戦略性もあるのだ。

スクエニらしい召喚シーンも登場

シナリオの中盤あたりから神獣の召喚が可能になる。DSらしからぬ美しいムービーは一見の価値ありだ

 「ファイナルファンタジー」シリーズに代表されるスクウェア・エニックスのRPGで、登場頻度が高いシステムの“召喚獣”。バハムートやオーディンといった神話上の強力なキャラクターを召喚し、ドハデな演出とともに大ダメージを与えるというあのシステムは、本作にも組み込まれている。

 ゲームを進めると、ノームやウィスプといった精霊が味方になり、同時に召喚施設が作成可能になる。この召喚施設を使用すると、対応する神獣を召喚でき、ドハデなムービーとともにマップ上の敵すべてに大ダメージを与えられるのだ。ただし他の施設とは異なり、召喚施設は使用すると消滅してしまうという、使い切りタイプだ。加えて施設の作成に必要なコストが非常に高いため、おいそれと使用できるモノではない。ここぞという局面で使用する、文字通り切り札的なシステムとして役立ってくれるだろう。

キャラクターの強化は装備で行う

キャラクターの強化は装備で行う。ユニットの強弱関係が変わる特殊効果が付属した装備もあるため、意外と自由にカスタマイズできる
ミッション中に拾った装備は、ミッション終了時に表示される。新しいアイテムを入手したときは、やっぱりワクワクしてしまう

 本編の「聖剣伝説」シリーズはRPGだったため、キャラクターを成長させる楽しみがあった。だが本作はRTSのため、基本的にキャラクターは成長しない。数々のアイテムを装備して、キャラクターを強化する仕組みだ。

 アイテムはマップ上に隠されており、その上をキャラクターが移動すると入手できる。ただし、どこに隠されているのかは移動してみないと分からず、さらに入手できたかは、プレイ中は画面下に表示される小さなアイコンが一定時間変わるだけなので、見逃すことが多い。ミッション終了後のリザルト画面で「こんなアイテムを入手していたんだ」と判明することが大半であろう。また、良い成績でミッションを終了すると、褒章という形でアイテムを入手できることもある。

 戦闘を繰り返しこなしてキャラクターを育てるのが好きなプレーヤーは、この仕様は残念かもしれない。ただし筆者にとっては、こちらの方が好ましく思えた。というのも、筆者はステージクリアタイプのRPGでは、勝敗以外に、お気に入りのキャラクターを十分に育てられたかどうかにこだわるからだ。

 本作では、仮に少し失敗しても、その失敗が次のステージに持ち越されないため、良い結果が出るまで“同じステージをプレイし直す”必要を感じない。本作の長所であるテンポの良さは、この部分によるところも大きいと思う。

スコアアタック的な楽しみ方もアリ!

単体のミッションを遊べるフリーモード。スコアを狙っても良いし、アイテム収集に精を出すのもアリだ

 本作では、ミッションクリアー後に成績が表示される。クリアーまでの時間や倒されたMOB数、入手した資源などからそのスコアが算出される仕組みだ。自分のプレイがスコアとして記録される以上、良いスコアを出したいと思うのはゲーマーのサガだろう。

 そこで活用したいのが、単体として用意されたミッションにチャレンジする“フリーモード”だ。ミッションは、シングルプレイを進めたり、Wi-Fiに接続すると、徐々に増えていく仕組みだ。

 この“フリーモード”は、シングルモードで進めたセーブデータを利用して遊ぶため、シングルモードでは序盤に登場したマップを、後半で仲間になったカリスマユニットで戦うという、一風変わった遊び方が可能だ。また、マップはシングルモードと同じでも、勝利条件や登場MOBが変わるため、新鮮な気持ちで楽しめる。

操作性やシステムは改善の余地あり

 今までにない「聖剣伝説」を目指した本作だが、残念ながらプレイしていてストレスを感じる局面があった。その多くは、ゲームシステムが原因となるものだ。

 本作のマップは格子状に区切られており(同社の「ファイナルファンタジー タクティクス」風、といえばわかるだろうか)、キャラクターはそのマス目にそって移動する。早い話、斜めに移動することができないため、対角線上の目的地へ向かう場合、かなり無駄に移動する場合が多々あるのだ。また、この移動する際の思考が少々単純で、例えば1マスだけ離れた対角線上の敵を攻撃する際は、プレーヤーユニットが右上に進み、対する敵ユニットは左下に向かい、結果的に2つのユニットがクルクル回ってなかなか戦闘が発生しない……という、もどかしい局面に何度か遭遇した。

 これに加えて、各キャラクター同士が“重なれない”というのも、ストレスを増大させる一員であった。上記のようにキャラクターはマス目にそって移動するため、敵一体に直接攻撃できるのは、その敵の上下左右にいる計4体のみだ。いくら大量のユニットを率いても、一度に戦えるのが4体だけであれば、残りのユニットは無駄な時間を過ごすことになってしまう。倒された時の予備に待機している、と考えることも可能だが、消耗戦という印象が強く、かなり不毛な戦いに感じてしまう。

 さらに、せまい通路、例えば横2マス幅の場所を大軍で移動するとしよう。その2マスが自軍のユニットでふさがれてしまうと、後続のユニットは“そこは移動できないな”と思いこみ、大きく迂回して目的地に向かおうとするのだ。ここまで規模が大きくなくとも、ある目的地へ複数のユニットを移動させようとすると、明らかにヘンなルートを通って移動しようとしている局面が多々あった。まあ一言で言えば“ユニットが思い通りに移動してくれない”のである。

 また、資源を集めたり、生産拠点を建設する必要があるなど、PC版のRTSでよく登場する“おやくそく”なシステムをそのまま採用している部分も消化不良に感じた。特に存在する必要性を感じなかったので、もっと簡略化したり、大幅に変えてしまった方が良かったのではないだろうか。このあたりのシステムは、もし次回作があるとすれば、ぜひ改善していただきたい。それだけで、本作の完成度はグッと上昇することだろう。

RTSにチャレンジしたことは評価したい

 苦言が多くなってしまったが、ゲーム専用機という市場にてほぼ認知されていない“RTS”というジャンルに挑戦したチャレンジ精神は、大きく評価したいと思う。

 また、PCのRTSに比べてシステムが簡単で(それでもまだ複雑だとは思うが)、かつ難易度が低いため、RTS初心者でも、ほとんど手詰まりすることが無いバランスは良いポイントだ。加えて1ステージが10〜20分ほどで終わるため、テンポよくサクサク遊べるのは気に入った。

 また、「聖剣伝説」ならば当然かもしれないが、RTSとしては珍しい、凝ったストーリーを楽しめるのは新鮮に感じた。PCとは異なり、まだまだ通信対戦が一般的ではない携帯型ゲーム機では、シングルプレイを重視するのは正しい方向であるため、次回作ではさらなるパワーアップに期待したい。

 総合的に見ると、目新しい戦略ゲームを楽しみたいプレーヤーには楽しめる作品といえるだろう。ただし、従来の「聖剣伝説」シリーズとは完全に別モノであるため、アクションRPGとしての「聖剣伝説」を期待したユーザーは肩すかしをくらう可能性が高い。本作が気になっているファンは、その点だけ十分に注意されたい。次回作が期待できる意欲作だ。

「聖剣伝説 HEROES of MANA」
対応機種ニンテンドーDS
メーカースクウェア・エニックス
ジャンルストラテジーRPG
発売日2007年3月8日
価格(税込み)5040円
プレイ人数1〜2人(ワイヤレス通信対応・Wi-Fi通信対応)
CEROA区分(全年齢対象)

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