原点回帰となったアトリエシリーズ最新作は、世の言うところのいわゆるツンデレ系か?「リーズのアトリエ 〜オルドールの錬金術士〜」レビュー:(2/5 ページ)

» 2007年06月07日 19時23分 公開
[篠崎薫&柚木あず,ITmedia]

シナリオも、1作目のように身近に?

 錬金術中心のタイトルは「ヴィオラート」までの5作品がラインアップとして並んでいるが、シリーズが進むほど調合などが難しくなり、結果的に投げ出してしまったという人の話を思ったより聞く。最初は材料同士を選ぶだけだったのが、0.2単位で調整できたり、アイテムが腐ったりと、よりジグソーパズルのピースが複雑に、数多く増えていったという印象を受けた人も多いだろう。とはいえ、中にはそういった方向へ進んでもらったことで、より長い間堪能できると歓迎したユーザーもいたことは事実だ。このあたりのバランスは人それぞれといったところだろうが、一番数多く売れたと言われているのが1作目だけに「マリーのアトリエ」ライクな難易度を、ユーザーが求めていたことだけは確かなのではないだろうか。

 Aというアイテムを作るためにはBとCというアイテムが欲しいが、そのためにはDという材料を採取してこなければならなくて……という、あの絶妙のバランスと、やるべきことが数多くある中毒性、それでいてイベントもほどよく発生するため飽きも来ない、あれこそが錬金術中心アトリエシリーズのあるべき姿ではないだろうか。そんな要望があったかなかったかは分からないが、今回発売された「リーズのアトリエ オルドールの錬金術士」では、これまでの複雑だったシステムが見直され、1作目以来の中毒性が復活していると筆者は感じた。

 1・2作目はアカデミーの卒業、3作目はアカデミー建築、4作目は200年前への帰還、5作目が住んでいる村の再興と、様々な趣旨を懲らしてきたシリーズ。今回は、リーズがリゼット王女として暮らしていた国、ランデル王国が負った借金の返済が目的だ。

調合はより簡単に、それでいてするべきことはこれまでと同じくらいのバランスになっているので、なかなかニンテンドーDSの蓋を閉じられない面白さがある
8億コールという莫大な額をどうやって返すのか? これはプレイしてからのお楽しみだ
残りの有り金はたいて買った家は、ユーレイ屋敷……。しかし、そんなことにめげず、リーズは借金を全額返済して国を取り戻すことを誓う

 特に何事もなく、日々平穏に過ごしていたリーズたち。ところが、リーズの父親である国王の浪費が過ぎて、銀行に莫大な借金を背負ってしまう。ランデル王国は国を丸ごと差し押さえられ、王様たちも国民たちと同じく働いて借金を返すことになるが、いっこうに金額は減らない。そんな生活から1人逃げ出したリゼット王女は、隣のオルドール王国まで何とかたどり着くことに成功する。そこで出会ったアルフから、錬金術でアイテムを創り出し、それを売ることでお金を稼げることを教えてもらう。リゼット王女はリーズと名乗り、錬金術のライセンスを見事に取得し、新しい(?)借金返済生活を始めるのだった。

 国が背負い、返せないほどの借金だけに、その金額は莫大なもので、なんと8億コールにも及ぶ(コールは、この世界でのお金の単位)。1日1コールずつ返しても8億日と、気が遠くなってしまうことをリーズは考えるのだが、さらには銀行から返済期限も提示されてしまう。その限られた期間内に、果たして借金を返せるのか?

オープニングは、マンガがコマごとに表示されていく手法を採っている。ムービーのように派手ではないものの、動きがあって見ていて楽しい
篠崎薫

ノリのいい掛け合いが楽しい

 今回のシナリオでは、従来シリーズの「ザールブルグ」や「グラムナート」の世界とは異なり、新たな舞台が用意された。ただ、ノリは相変わらずコミカルで元気でにぎやか! ちょっと冒頭をのぞいてみよう。

 ――王のぜいたくが過ぎて、借金で破綻してしまったランデル王国。王と王妃、そして可愛いリゼット王女も慣れない肉体労働をして借金を返さなくてはならなくなった。ある日、銀行の目をかいくぐって、こっそり城を抜け出したリゼット王女は、リーズと名乗り、隣国・オルドール王国の首都ミスリーンで生活を始める。

 最初に出会ったのが錬金術士の少年アルフ。「錬金術をつかえばいろんなモノが作り出せるんだ。ベンリなんだぜ」と教えられ、リーズは錬金術でお金儲けしようと決める。アルフに勉強を教わり、錬金術のライセンス試験に見事合格したリーズ。

「よーし、これから錬金術でがっぽりかせいで、あたしの国を取り戻すぞー」

 主人公のリーズは、もとはお姫さまだが、苦労を重ねているうちに、すっかりがめつくなってしまった。お金儲けの話を聞くと、目が$マークに変わる。これにはつい笑ってしまう。でも、明るく一生懸命に借金を返そうとするリーズの性格は憎めない。見ているとこっちも元気が出てくる。

 そして、町に住む人たちも魅力いっぱいだ。今回はイベントも充実していて、キャラクター同士のかけ合いも多い。真面目な顔して意外な趣味があったり、男の子から恋の相談を受けたり、いきなり告白されたり……。町の一員になったつもりで楽しもう。

  • アルフ:リーズが一番最初に町で出会った元気な錬金術士の少年。ビッグになる夢を持っているが、リーズやロロットにはまったく頭が上がらず、こき使われている。
  • ロロット:ちょっと高飛車なお金持ちのお嬢様。見た目はかわいいが、リーズには「女の外見は、男をオトす武器なんだから」とアドバイスするなど、なかなかしたたかな女の子。
  • マリウス:オルドール王国を守る騎士団ヘクセンリッターの隊長。人付き合いが苦手で、前隊長にもっと他人と交流したほうがいいといわれ、リーズと友達になる。戦闘では非常に強いので、レベル稼ぎのお供にオススメ。
  • エイリー:23歳の若さにして莫大な財産を築いた超大金持ち。キザな俺様系の青年で、お金目当てに集まってくる女性も多い。しかし、なぜかリーズに一目ぼれ。「リーズ……美しいあなたにピッタリの名前だ」と口説くが……。
  • ヒルダ:リーズの買った屋敷に住み着く管理人さん!? いつもどこからともなく現れる、おっとり優しい性格の女性。その正体は? 

 隣町のロッドマルクやフレールにも、個性的なキャラクターが住んでいる。魔法少女ヒロインになりきり、リーズを一方的にライバル視する錬金術士ポワン、図書館にいる、頭が良くて小生意気な少年マノンなど。彼らとは会話を交わすうちに仲良くなり、採集地での戦闘にも参加してくれる。パーティはリーズを含めて最大3人まで。キャラごとに装備できる武器や必殺技も変わるので、いろんなキャラと仲良くして、自分だけのお気に入りパーティを組もう。

柚木あず

 ここで本作の物語に触れている。順番的にも妥当な紹介の仕方ではないだろうか。シリーズの説明のあとは、やはり本作そのものについて触れるのは道理。ぱっと見、気がつくのは篠崎氏がここで前作の問題点などに言及している点だろうか。シリーズをすべて遊んでいるからこその視点で、本作がどう進化しているのかを俯瞰して眺めていることが分かる。こういう視点で紹介しているライターは多く、前作やシリーズを通してプレイしているライターは前作との対比を用いて、本作の魅力を解くことが常套手段となっている。篠崎氏は前作までの不満を愛してやまないからこそあえて挙げ、本作が歓迎すべき改良が施されていることに満足してみせる。

 一方、柚木氏はより世界観を紹介しようと試みている。キャラクター紹介など、これから遊ぶ人への情報を与えることに終始している。すでに発売されているタイトルのレビューの場合、すでに購入済みのユーザーがレビューを見ることもあり、この手の紹介は省かれる傾向にあるが、柚木氏はていねいにゲーム紹介から始めようとしているのは興味深い。

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