ぶっ飛んだ設定、ぶっ飛んだ猫「シティコネクション」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)
ウィリーには泣かされた
「シティコネクション」の操作には、ちょっと慣れを必要とする。
ジャンプはAボタンなのだが、Aボタンだけを押すと同じ段でのジャンプとなり、Aボタンと十字キーの上を同時に押すと、上の段に上がることができる。
もっとも、ゆるい角度で上昇するので、かなり手前からジャンプしなければならない。上段へ飛び移れず、天井につっかえることがしょっちゅうある。
あと、ジャンプ自体が難しい。方向転換した後や、高いところから落ちて着地した直後、クラリスカーがウィリー状態になるのだが、この間はジャンプができない。
うっかりジャンプしようと、Aボタンを押しても車が反応せず、そのまま道路の切れ目から下の段に落ちることが多々ある。パトカーや猫が下の段にいる状態では、なるべくジャンプしない方がいいと思う。
慣れないうちは、今ひとつ思い通りに動かせなくて、もどかしい操作感覚。でもこのゲームの自機は、人間ではなくて自動車。だから、多少思い通りに動かせない方が、車の挙動としてはもっともらしいと思う。
道路の端をどうやって通るかも、頭を悩ませる点。そのまま下の段に落ちるのがいちばん早いのだが、ステージが進むと、下の段から上の段への移動が難しくなってくるので、できればいちいち下りないで端を塗りつぶしたいところ。
ぎりぎりのところでジャンプするか、方向転換するかしかない。どちらもタイミングを誤ると、ちょっとだけ端っこを残してしまったり、下の段に落ちてしまったりする。
「シティコネクション」では、ステージクリアを目指すか、高得点を目指すかで、プレイのやり方がまったく違ってくる。別のゲームになると言ってもいいくらいだ。
ステージクリアを目指すなら、序盤でオイルはあまり使わず、後のステージのために取っておく。走行距離が3000キロを超えると、クラリスカーに向かって猛スピードで突っ込んでくるパトカーが、一定時間おきに出現するので、オイルが少ないとキツいのだ。
一方、得点を稼ぐなら、ステージをクリアせず、パトカーをどんどん跳ね飛ばしていったほうが早い。パトカーにオイルを当てて400点、跳ね飛ばしたら最低でも1000点。2台のパトカーをスピンさせ、まとめて吹っ飛ばすと、それだけで10000点近く稼げる。
裏技・隠れキャラがいっぱい
「シティコネクション」には、多くの裏技や隠れキャラクターがあった。
まず、裏技と言うよりテクニックというべきかもしれないが、クラリスカーが方向転換中、正面を向いた瞬間にBボタンを押すと、左右同時にオイル缶を投げることができる。
隠れキャラには、同じジャレコのゲーム「フォーメーションZ」に登場する敵(取ると残機が増える)や、ハート、ウサギなどが存在するらしいが、わたしは出すことができなかった。
出し方を書いてあるサイトもいくつかあるのだが、サイトによって書いてあることが異なるし、実際に試してみたけど出てこなかったし、ウサギなどは出てくる場所までたどり着くのがひと苦労。
でもわたしも2つだけ隠れキャラを出せた。1つはキャラというよりグラフィックの変化なのだが、タージマハールの前で左右同時にオイル缶を投げると、昼の風景から夕方の風景に変わる。
もう1つは、最も出す条件が難しい、ハレー彗星だ。何度も出そうと試みて失敗して、あきらめかけていた頃に、エッフェル塔の後ろを横切る彗星を見たときは、ホント感動した。
ただ、ネットで調べた彗星の出し方を試して、失敗したときになぜか出たので、わたしはいまだに出し方が分からない。
1980年代のはやりものクラブ
ところで、ハレー彗星が前回地球に再接近したのは1986年。「シティコネクション」が発売された翌年だ。
実はこのゲームが発売された頃、76年に一度しか来ないハレー彗星がもうすぐ来るということで、ハレーブームが起こっていた。ハイ・ファイ・セットの「星化粧ハレー」など、ハレー彗星を歌った歌もあった。
「シティコネクション」にはハレー彗星のほかにも、当時もしくはその少し前に流行したものが、いろいろと盛り込まれている。例えばクラリスカーのモデルになっているのは、ホンダの「シティ」とされている。1980年代前半、マッドネスの「シティ・イン・シティ」がBGMに使われたTVCMで、人気に火がついた車種だ。
見た目はシティだが、クラリスカーは「V8・7リッターツインターボエンジンを搭載した4WDSミッドシップのマシン」と設定されている。直列4気筒1.2リッター、FF駆動のシティとは中身が違う。(つーか、シティのボディーに8気筒と4輪駆動・4輪操舵を収めるって……)
タイトルの「シティコネクション」というのも、“街と街をつないで行き来する”という意味だけではなく、ホンダのシティを意識してつけられたネーミングだろう。
さらに、1981年のヒット曲「シティコネクション」もイメージしているかもしれない。こちらの「シティコネクション」は、クラリオンの同名のカーオーディオのCMソングで、“エマニエル坊や”が歌っていた。
このように考えると、あのオジャマ猫もひょっとしたら、1980年代前半に大流行した、なめ猫をイメージしているのかもしれない。
そして何といっても、主人公の名前である。クラリスといったら宮崎駿氏の映画初監督作品「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)で、ルパンに大切なものを盗まれるヒロインの名前である。
映画のカーチェイスシーンが印象深かったので、このゲームの主人公にこの名前がつけられたのかもしれない。もっとも、映画のクラリスが乗っていた車は、シトロエン2CVだった。
こうして、はやりのものをあれこれ盛り込んでいった結果、ゲームでしかありえないような、ぶっ飛んでてツッコミ所満載、だけどなんだか楽しい世界観が築かれたといえるだろう。
21世紀に入ってから突然復活!
「シティコネクション」のゲームシステムにも、当時もしくはその少し前に流行したゲームからの影響がみられる。
ドットイートタイプで自機が車といえば「ヘッドオン」(セガ・1979年)だが、道路を塗りつぶすという感覚は、「クラッシュローラー」(アルファ電子/クラール・1981年)に近いかもしれない。ちなみにこのゲームにも、おじゃまキャラとして猫が登場する。
(「クラッシュローラー」は、近年まで家庭用ゲーム機に移植されていなかったから知名度が低いが、1999年になって、なぜかネオジオポケットに移植されている)
画面構成は、「スペースパニック」(ユニバーサル・1980年)に似ている。もっとも「スペースパニック」の方は、マンガ「ゲームセンターあらし」で「平安京エイリアンを縦にしたようなゲーム」と形容されているとおり、穴を掘って敵を落とすゲームで、システムは「シティコネクション」とはまったく違う。
めちゃくちゃな設定や、ユーモラスな敵キャラクターは、窓から落とされる植木鉢などを避けながらビルを登っていくゲーム「クレイジークライマー」(日本物産・1980年)を連想させる。
主人公が若い女性という設定は、SNKの「アテナ」やナムコの「ワンダーモモ」、タイトーの「奇々怪界」より古く、タイトーの「タイムギャル」とほぼ同時期。ギャルゲーのはしりといえないこともない。もっともそれらのゲームと違って、自機がその女性というわけではないが。
ゲームシステムは既存のアイデアの組み合わせと言えなくもないが、それでいて強烈な個性を放っている。このゲーム特有の操作感覚と、独特の雰囲気があるグラフィックやキャラクターが、個性となっているのだろう。
その個性ゆえか、21世紀に入ってから、新しい機種への移植やリメイクが行なわれている。
1985年にアーケード版、ファミコン版、日本デクスタが発売したMSX版が出た後、しばらく新しい動きはなかった(プレイステーションのシューティングゲーム「GUNばれ!ゲーム天国」に、金髪のクラリスが登場したくらいで)。
しかし2003年、プレイステーションにファミコン版が、Windowsにアーケード版が、それぞれ移植されている(プレイステーションでは「ジャレココレクション vol.1」の収録ソフトとして)。
携帯電話では、復刻版に加えて、新作「シティコネクション・ロケット」も登場。クラリスカーには“スーパーロケット”が新たに装備されたほか、オイル缶にもホーミング機能が追加。一方で敵もパワーアップし、ボス戦まであったりする。
漫画家・脳みそホエホエさんの描くクラリスがかっこいい。かっこいいというか、正直、好みのタイプかもしれない。ステージクリアごとに、いろんな衣装を着たクラリスさんが出てくるので、それが見たくてついつい長時間プレイしてしまった。
ハマるとドップリ漬かりそうな気がするので、わたしは今まで“萌え”系には近づかないようにしていたのだが、クラリスさんをきっかけに、今後ちょっと日常生活が普通じゃなくなるかもしれない。
……つーか、今もうすでに普通の人の生活をしてないので、何を今さらなんだけど。
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