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» 2007年09月19日 14時16分 公開

欧州市場を語ってみた!くねくねハニィの「最近どうよ?」(その15)(2/2 ページ)

[くねくねハニィ,ITmedia]
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欧州向けローカライズの難易度

 ハイデフにおいてはあんまり関係ないかもだけど、欧州は言わずと知れたPAL(Phase Alternation by Line)地域。PALの説明をすると、「走査線数が625本、毎秒25フレームのインターレース方式を取る地上波アナログカラーTV放送方式」のこと。毎秒30フレームの日本、北米のNTSC(National Television Standards Committee)方式とは異なるため、その方式にあわせてゲームを開発せねばならなかったのですわ。

 TVゲームとしてはTV方式に翻弄されるのは止むを得ないことですがね。日本でNTSC向けに開発されたソフトをPAL版にするのは実は結構大変で、フレーム数を落とすのだって難儀なのに、垂直同期周波数が60HzのNTSCに対して、60Hz/50Hzの切り替え可能バージョンにしてくれってパターンが多くて(欧州ではコンパチTVも普及しているため)、これが全世界同時発売を阻むひとつの要因とも言えるのですわ。

 また、もうひとつ大きなハードルとしては言語数の多さ。北米版を米語版のみのままPAL変換だけする、でもマニュアルはちゃんと多言語化するから大丈夫よ〜ってソリューションは、残念ながらすでに通用しなくなってるのですわ。フランスで売るならフランス語を、ドイツで売るならドイツ語を入れよ、ということですね。あらあら、PAL対応に加えてますます日本版からのローカライズは大変そう。

 ひと昔前は、欧州市場で発売するために、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語の5カ国語(EFIGS=English、French、Italian、German、Spanish:イーフィグズと発音してね)は必須よね〜と言われていたもんですが、最近では14カ国語必要なんて言う人もいるとか……。ひぇぇぇ。市場としては確かに日本の数倍の市場に成長している欧州市場ではありまするが、言語1つあたりの売上本数を考えるとツラいのも事実。思い切って英国だけに英語版だけで勝負! ってのも手だけど、せっかくPAL版にするならPAL地域でできるだけ発売したいって欲も出るし、悩ましいところなのだ。

 ユーザーインタフェース(UI:メニューとか操作系の説明とか)が英語なのは日本では結構ありがちなことだけど、欧州はそうじゃない。彼らにとっては英語であることには違和感があるらしく、すべてのUIをローカライズすることを要求されることが多いのね。これがテキストベースなら差し替えりゃいいけど、GUI(グラフィックユーザーインタフェース)の場合は、すべてグラフィックに書き直しせにゃならんので、もうたいへ〜ん。ただでさえ、1つの単語の文字数が多くて、テキストでさえ入れられないんでは? と思われるドイツ語をUIにも反映しろってことになると、日本版で設定されたUIの幅に強引に入れた日にゃ〜、14インチテレビでは読めないんじゃないの? ってくらい極小になっちゃうんだろうなぁ。

 また、音声に関してもしかり……。現地化せよとの声が多いのは事実。音声まで14カ国語対応していたら欧州版はいつできるんだろう。そしていくらかかるんだろ? それも文字数の多いRPGだったらどんだけ翻訳に時間がかかるんだろー? とちょっと気が遠くなるよね〜。でも、前回も触れたように、日本びいきのフランス市場って話もあるから、一概にあきらめてしまうのはもったいないかもしれない。最近では、北米よりも文化的に日本タイトルを受け入れてくれる市場という評判もあるくらいなのだよ。

 ここでハニィが伝えたいのは、欧州市場へのアプローチがすごく難しいってことだけじゃなくて、欧州で売るかどうかは開発するときに最初に決めておこう、ってこと。プラスアルファのローカライズして売上に貢献できるって認識では「労多くして功少なし」状態になってしまう。技術的なPAL対応のみでなく、展開予定の国や言語数をあらかじめ予定してデザインをしておけば、もしかして結果的にプラスアルファな労力でローカライズができるかも! 簡単にあきらめるには大きな市場であることは事実だからね〜。

欧州市場での販売

 日本だけでなく、北米や、場合によっては欧州のパブリッシャーでさえ、どうしても規模の大きい北米市場に対して先行発売することが多いの。また、NTSC版をPAL版に変換するほうが比較的簡単で、PAL版からNTSC版へのコンバージョンが難しいと考えると、欧州市場へのタイトル供給は「遅れがち」になっていますね。さらに多言語対応(翻訳とかカスタマイズとか)期間を考えると、やむを得ないことなのかもしれない。EAやUBIなどは全世界同時発売というのをやりのけるすごいパブリッシャーだけど、これも相当綿密なマイルストーン管理により行っていることで、なかなか難しい技と思われまする。

 世の中がフルでハイデフ時代に突入すれば、少なくともコンバージョンのハードルはなくなるわけで、言語的な処理をいかに効率的にできるかだけが勝負ってことですね〜。この言語処理、日本のパブリッシャーやデベロッパーにとっては、「英語→その他の言語」へ変換する欧米の開発と異なり、「日本語→英語→その他の言語」となるので、さらに難易度はあがるわけですな……。

 でも、欧州での発売が遅れてしまうと、アメリカから欧州へ流れてしまうという危惧があるんですよ。現在はPAL版とNTSC版っていう垣根があるので、アメリカから流出するのはある程度防御できるんだけど、その垣根がなくなってしまったら、「早くプレイしたい」というユーザー心理の下、きっとアメリカ版が流れてしまう〜。苦労してプロモーションして販売している欧州のパブリッシャーがかわいそうだぁ。ってことで、今後は世界同時はある程度“マスト”要件になってくるかも、ですね〜。

 話は変わって、販売データのお話。北米市場においては、北米最大のPOS(Point of Sales:販売時点)データを持つリサーチ最大手NPDグループが毎月セルスルー(Sell Through:実販売)実績を発表(詳細データは有料)してくれるので、ハニィにとっては分析もしやすくてみんなにリポートもしやすかったんだけど、ヨーロッパってさぁ、国ごとにバラバラなデータでPAL地域と呼ばれる国は100カ国以上あるから、ぶっちゃけ総販売データ入手は「不可能」なんです。でも、国別に不定期に情報が入ってくることがあるのでできるだけリポートしようと思ってはいるの。どうしても欧州1カ国の情報よりは規模の大きな北米の情報を優先してしまうのもご理解くださいませませ。

 まだ、パッケージ販売している間は、こういうデータの存在があるので実態をつかむのが比較的容易だけど、ダウンロード時代になったときに、誰がこういう客観的データを発表してくれるのかと考えると、夜も眠れないわ。ケータイコンテンツのダウンロード数が公的に発表されないのと同様、パブリッシャーが私的に発表する数値だけを横並びで見る、ってことをしてもいいのか? それって客観性はあるのか?? と不安に思うハニィでしたん。

ハニィのあとがき

 今回の欧州の話はちょっと難しかったかなぁ。一口に海外市場といっても、やっぱり北米と欧州ではインフラの意味で違うってのはご理解いただけたかしらん? スケールメリットを考えると無視できない市場ではあるけど、やっぱり“やっつけ”ではなかなか難しいもんです。用意周到に臨まないと痛い目にあいますぜ。まぁ、言うは易しですけどね……。

 原稿をサボって、韓国に遊びに行ってたハニィ。その間に大きいニュースがありましたなぁ。ソニーがCellの工場を1000億円で東芝に売却! ってことは、PS3に載ってるCellは東芝製になるってことか……。確かソニーはCell開発に数千億円投資してたから、回収どころか赤字のまま売り飛ばすってことよね? ちまたでは賛否両論ですね〜。無責任発言ではありまするが、「そんな一時的な損失補てんのために事業の中核を売り飛ばしていいのか?」って声と、「これ以上大きな荷物を背負い込むよりも、早めに手放すとは英断だ!」って声を両方聞いてます。ハニィ個人としては後者かなぁ。ハードにいつまでもこだわらず、一刻も早くあの値段の高いハードを生かすようなコンテンツをお願いしますって感じ。

 ゲーム機って一般消費財ではないので、「これがないと生活ができない」ってモノじゃないと思うの。あくまでも娯楽なんだから、単なる高性能機械を持ち込んでもそれだけじゃ娯楽とは言えないんじゃないかな。って意味でもハードよりソフトへフォーカスを移行するんだったら、英断だなと思うのよね〜。ま、個人的意見ですが!

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。言ってる中身は至極マジメ。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

業務連絡:ハニィは東京ゲームショウ行くんですか? 欧州と違って近いですから、当然行かれると思いますが、そのへん次回触れてみてください。


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