怒りと憎しみが織りなす壮大なる叙事詩――反逆の英雄が咆吼する「ゴッド・オブ・ウォーII 終焉への序曲」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年11月09日 00時00分 公開
[水野隆志,ITmedia]
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ギリシャ神話の枠を逸脱しないことへのこだわり

 ストーリーだけを見ても、ギリシャ神話らしさが十分に感じられるのだが、それをより完璧に仕上げているのが美術である。広い意味ではゴッド・オブ・ウォーシリーズはファンタジーに属する。ファンタジーであれば、基本的に世界観にはかなりの自由さがある。仮に中世ヨーロッパ風の世界をベースとしながらも、アラビア、インド、中国、日本などのテイストを持ち込んでもいいのだ。というより、日本のファンタジーRPGなどでは、こうした要素を意図的に入れることで、ユーザーの目を楽しませてくれるのが普通。実際、いろいろな雰囲気の街が出てくることで、プレイ感覚もその都度新鮮になる。

 ところが、ゴッド・オブ・ウォーシリーズはそれを真っ向から拒否する。何をするにも古代ギリシャ風という枠を外さないのだ。もちろん、あくまで古代ギリシャ風であって、史実にこだわっているわけではない。古代にはそぐわない大仕掛けの機械も出てくる。しかし、それでも古代ギリシャらしさが失われることはない。徹底したコンセプトワークのなせる技といえようが、これは非常に難しい。それをやり遂げてしまっている。特筆すべき能力を持つ、素晴らしいアートチームだ。

 中でも、アイディアの宝庫なのが敵であるモンスターのデザインだろう。

 ギリシャ神話には数多くのモンスターが登場する。ミノタウルス、グリフィン、ケルベロス、メデューサ、ハーピー、サイクロプスなどなど。どれもファンタジーファンにはおなじみのモンスターだろう。だが、見慣れているだけにインパクトという点では弱い。モンスターの魅力は鮮度とも大いに関わっているから、こうしたいわばファンタジーのレギュラークラスしかいないのはデザイン側から見ると選択肢が少なくてキビシイのだ。ところが、さすがは卓越したチームだけに、こういう難問もきっちり乗り越えている。

 そのためにはいくつもの手法が組み合わされているが、そのひとつがデザインの細部を変えて前作と見た目の差異を作る方法。サイクロプスなどはその代表格だ。また別なアプローチといえるのが、岩の体と溶岩の血を持つミノタウロス型モンスター。厳密に言えばオリジナルモンスター。ギリシャ神話世界を逸脱する、いわば反則的存在だ。ところがその外見をミノタウロスそっくりにすることでギリギリのところを維持している。巧い解決法だ。

あちこちに用意されている機械的な仕掛け。石と金属を組み合わせたデザインにより、違和感なく世界に溶け込んでいる
トレードマークとも言うべき目玉が強調されたデザインに変わったサイクロプス。この目玉を集めることで特典の封印が解除されるという趣向も盛り込まれている

 このようにデザインコンセプトがかっちりと貫かれているから、世界観がぶれない。何でもアリの幕の内弁当型ファンタジーも楽しいが、ひとつにこだわって創られた世界も楽しい。かつ美しい。

戦闘は豪快かつイージーに、謎解きは思いっきりハードに

 神、英雄、人間。それぞれの自分勝手な思惑が激突することで物語が紡がれるという、いかにもギリシャ神話的なシナリオ。それを補完し、視覚的に強化してくれるデザイン。この2つの巨石を土台にして、このゲームの最大の華であるアクション性が開花する。何と言ってもアクションゲームである以上、これがゲームのキモである。

 アクション性に関しては、前作からの変更点が2つある。まずはアクションパターンのバリエーションが増え、しかもそれが使いやすくなっていること。このおかげで戦闘は前作よりもずいぶん楽になっている。マップが少し大きめになったこともあって、かなり戦いやすい。回復用の宝箱もあちこちに置かれている。「II」では、戦闘でゲームオーバーにされる可能性はぐっと減ったといえる。少なくとも難易度をNormal以下にしておけば、いわゆるボス格の敵を除くと、あまり危険を感じることはないだろう。

 その一方、謎解きはかなり難しい。これにはパターンが2つある。1つは何をすればいいかは分かっているが、操作が難しいという場合。レバーを引いて扉を開け、それが締まりきるまでに駆け抜ける、というタイプで、この場合はほとんどが時間の制限を持っている。いずれも制限時間はきつめで、わずかの操作ミスも許されない。鉄串の廊下や鐘を共鳴させる神殿などは、プレイした人には忘れられないだろう。何度やったら抜けられるんだ、と苦い思いをした人も少なくないかもしれない。

 そしてもう1つが何をしたら道が開けるのか、分からない場合。この手の仕掛けでは無理押し力押しは厳禁である。端ぎりぎりからジャンプしてみる、しかし向こう岸までごくわずか足りなくて谷底へ、とこんな状況に出会った時、タイミングが悪かったのかなとリトライするのは危険な発想。「II」でその考えに陥ると絶対にハマる。周囲をよく見渡し、壊したり、動かしたりできる何かがなにかを徹底的に調べるのだ。こういう仕掛けは純粋にヒラメキによるところも大きいので、思いつかないと延々進まなかったりする。ハッキリいって戦闘などよりも格段にコワイ。

 本作は前作に比べて、アクションが豪快になって難易度も下がり、代わりに謎解きが数段レベルアップした内容なのである。そのため、全体を通してプレイした時の印象が前作とは少し変わっている。この点、やや好みが分かれるかもしれない。

 しかし、謎解きが難しくなったことは、アクションゲームとしての「II」の評価を下げているわけでは決してない。むしろ、アクションに覚えのない人でも楽しめる、という点でより広いユーザーを対象とした作品になっていると言えよう。なお、腕に覚えのある向きには、そうした改良を不満に思うかもしれない。が、案ずるなかれ。そんな硬派アクションゲーマーには本編クリア後にプレイ可能になる追加モードが待っている。クリアすることで特典が入手できるというオマケモードだが、その歯ごたえは……いや、これについては深く言及すまい。実際にプレイしてみた時の衝撃をお楽しみに、とだけ言い添えておこう。

 極めて高い完成度を持つ世界観の上で縦横無尽に暴れ回る。この楽しみはまさにアクションゲームの原点に他ならない。EASYでもいいから最後までプレイすれば、なぜクレイトスがアメリカでプレイステーション 2を代表するキャラクターになれたかわかるだろう。「III」はプレイステーション 3での発売だといわれているが、それでもやはりゴッド・オブ・ウォーシリーズはPlaystatiosn2を代表するアクションゲームだ。スパルタの亡霊が次にどんな活躍を見せてくれるのか楽しみに待ちながら、当面は「II」を遊び倒そう。未来への期待に胸をときめかせながら、至福の時を過ごす。アクションゲーマーにとって最高の瞬間だ。そのお相手がメチャ濃いオヤジであることなど、さしたる問題ではない。

特定の敵との戦闘中に発生するCSアタック。タイミングよく画面に表示されるボタンを押していく攻撃方法だ。普通に倒すよりも戦闘後のご褒美が多く、ボス敵はこれを使わないと倒せない場合も多い
頻繁に使うことになる“時間を止める”機能。運命の女神の像がある場所でだけ使用可能で、画面が緑に染まっている間、時が止まってくれる
道を塞ぐ障害物をどかすには、2つのスイッチを同時に押す必要がある。部屋には死体が1つ転がっている。なんだ簡単じゃないか、と思うのは早い。ここでは地形という要素が加わって、より厄介な謎が作られているのだ
「ゴッド・オブ・ウォーII 終焉への序曲」
対応機種プレイステーション 2
ジャンルアクション
発売日2007年10月25日(発売中)
価格(税込)7340円
CEROD区分(17歳以上対象)
Designed and Developed by Sony Computer Entertainment America Inc.
God of War and The End Begins are trademarks of Sony Computer Entertainment America Inc.
(C)Sony Computer Entertainment America Inc. All rights reserved.

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プレイステーション 2 | カプコン | E3


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