アオイシロ――神秘的な伝奇物語と少女たちの恋愛に感じる妖しい魅力に悶えるべし!「アオイシロ」レビュー(1/3 ページ)

少女たちの絆を描いた和風伝奇アドベンチャーゲーム「アオイシロ」がPS2で登場。女の子同士の恋愛模様(または友情)を描いた、いわゆる“百合”要素満点の本作の萌え度はいかに!?

» 2008年05月20日 00時00分 公開
[雛見沢秀一,ITmedia]

伝奇ファンと百合ファンが待ち望んだ新作

 2004年に発売されたサクセスの人気アドベンチャーゲーム「アカイイト」は、古事記などに基づいた神話や伝承をストーリーに盛り込んだ、サスペンス色の強い伝奇作品である。しかし、ファンの間ではこの作品を“伝奇作品”というよりも、女の子同士の気持ちの繋がりを描いた“百合作品”として捉えている人の方が多い。というのも、主人公(女の子)が妖怪(もちろん女の子)に吸血されるシーンなど、女の子同士の色っぽさを描いた描写が多く、“百合好き”のファンを熱狂させたのが原因のひとつといえる。

 そして、4年の歳月を経て発売されたのが本作「アオイシロ」である。「アカイイト」の制作スタッフが再び結集して作られた本作は、「アカイイト」の“姉妹作”として世界観や一部の設定を引き継いでいる。また、エンディング数も50以上に増えており、シナリオのボリュームもアップしているのだ。

画像 鬼や妖怪との戦闘では選択肢を間違えることで命を落とし、即バッドエンドのものも
画像 主人公を含むほとんどの登場キャラクターが女の子

 また、ゲーム発売前には「コミック百合姫」や「月刊コミックラッシュ」などの雑誌でマンガを連載。さらに、Webラジオや携帯コンテンツでのサービスを行うなど、ファンの期待を存分に高めている。

 男性同士の恋愛を描いたいわゆる「ボーイズラブ」作品はコンシューマ版で数多く発売されているにもかかわらず、女性同士の恋愛を描いた「ガールズラブ」(百合)作品は、ほとんど見かけない。そんな中、百合要素を色濃く含んだ本作の登場は、いち百合ファンにとっては朗報だろう。百合の代名詞といえる小説「マリア様がみてる」が愛読書の筆者も、密かに注目していた。

新しく紡がれるシナリオと受け継がれた親切システム

画像 合宿先までの道すがら、物語のキーワードとなる卯奈咲に伝わる鬼退治の伝承について、剣道部顧問の葵先生から聞かされる

 物語の舞台となるのは、海に面した田舎町・卯奈咲(うなさか)。古くからの伝承や習慣が根付いたこの土地で、部長を務める主人公の小山内梢子(おさないしょうこ)率いる青城女学院剣道部は、合宿を行うことになる。

 張り切って合宿のスケジュールをこなす梢子は、合宿初日の夜、浜辺にうちあげられた不思議な少女・ナミと出会う。彼女との出会いを境に、不思議な出来事へと巻き込まれながらも、卯奈咲の伝承に残る古き因習の謎に迫る、というストーリーだ。

 ゲームの流れは、ほかのキャラクターとの会話を進めたり、選択肢を選ぶことで物語が進行していく、オーソドックスなタイプ。どの選択肢を選んだかによってルートが分岐し、各ヒロインとの個別のシナリオが楽しめるのだ。エンディングを見ることで、今までなかった選択肢が増えることもあるので、あえてバッドエンドを迎えることで、遊べるルートが増えるという場合もあるのだ。

 また、ルートの分岐図や、作中に登場したキーワードを調べることができる用語辞典など、「アカイイト」にあった補助システムは本作でも健在。現在どのルートを進んでいるのかや、あの言葉の意味ってなんだっけ? と確認するにはもってこい。

さらに、エンディングを見た回数によって、オプションでイベントCGをすべて閲覧可能にできたり、用語辞典を完成させるという強力なネタバレ機能を搭載している。

画像 ボロさが印象的な咲森寺(しょうしんじ)が剣道部の合宿先。平家物語の有名な出だし文句「祇園精舎の鐘の声〜」でおなじみ“沙羅双樹(さらそうじゅ)の花”の別名である夏椿がそこかしこに咲いている
画像 テキストボックス内の文字の色が水色の単語が用語辞典で調べられるキーワード
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