「E3 2008」これだけ読めば大丈夫?(前編):E3を総括――存在意義を問う(2/3 ページ)
任天堂――任天堂はあくまでも任天堂として
「ママが任天堂で働いているのはうれしいけど、それよりもママが大好きだよ。ママが新しいゲームを持って帰ってきてくれるのはうれしいけど、それよりもママが大好きだよ。何よりもママが大好きだよ!」という息子Davis君からの手紙ハリウッドのKodak Theaterで7月15日午前9時から開催された「任天堂 E3 Media Briefing」。昨年のサンタモニカから1年ぶりに戻ってきたかっこうだ。Nintendo of Americaのキャミー・ダナウェイ氏がメインのプレゼンテーターとなり、同社社長のレジー・フィザメイ氏、任天堂の岩田聡代表取締役社長や、宮本茂代表取締役専務と、オールスターキャストがそろって行われた。
冒頭から任天堂の姿勢は一貫している――「人々に笑顔を」。ダナウェイ氏は自らの息子さんについて語るなど、自らの仕事が常にスマイルをもたらすと言う。
また、ダナウェイ氏はここでUBIソフトが開発中のWiiバランスボードを使った「Shaun White Snowboarding」を紹介。2006年冬のオリンピック金メダリストのショーン・ホワイト氏が自ら登場し、腕前を見せる。任天堂のプレスカンファレンスでサードパーティのタイトルが初めに紹介されるのは意外だった。
ここで岩田社長が登場し、あらゆる悲観的な意見の中、5年前には社内の人間も予期できなかった結果を出すことができたと語る。ニンテンドーDSでは「Nintendogs」、「Brain Age」、「New Super Mario Bros.」や「Mario Kart DS」などのようにロングランで売れるソフトが生まれたこと、そしてWiiでは「Wii Sports」や「Wii Fit」がたくさんのゲーマーたちを魅了したことを振り返る。
岩田氏は「コモンセンス」に縛られて市場の拡大を見逃してはいけない、と語る。例えば、ゲームハードは年末にギフトとして購入されることが多かったが、現在では、ギフトではなく自らのために年間を通じて買うケースが増えている。また、グラフィックが美しく、開発費をたくさん投入したソフトだけがゲーマーに受け入れられるとは限らないし、低コストでグラフィックがバリバリでなくてもユーザーに共感をあたえるソフトも出現した、と語る。
昨年、岩田氏は「ゲーマーとノンゲーマーの垣根をなくす」をテーマに語ったが、Wiiのソフトである「Mario Kart Wii」と「Wii Fit」がゲーマーとノンゲーマーの両方に受け入れられていることがその証明だと述べた。また、その中でも、マルチプラットフォームで発売された「Guitar Hero III」が、他のプラットフォームではなくWii版が他を圧倒したというのが一番の証明ではないか、と語った。
岩田氏は、3つの“E”――Engaged(集中)、Enriched(リッチに)、Enthused(熱狂的)を掲げ、「任天堂は新しいパラダイムを提供するパイオニアであり続けるために常に変化をしていく」と締めくくった。単なるゲーム業界における勝利宣言ではなく、ゲーマーのすそ野をひろげ、任天堂がゲーム業界自体の底上げを使命として担っていくという企業としての信念を明らかにしたとも言えよう。
1:Wii
フィザメイ氏から、北米においてWiiが1000万台以上の売上を達成したとの報告があった(後日NPDデータがXbox 360を抜き去ったとのニュースがあった)。また、11社のサードパーティから発売されている19タイトルについては、タイトル当たり40万本以上売り上げたと語る。
今後のラインアップとして、任天堂の「Animal Crossing: City Fork」、「Wii Resort」、「Wii Music」に加え、サードパーティからも「Star Wars: THE CLONE WARS LIGHTSABERDUELS」(Lucas Arts)、「RAYMAN RAVING RABBIDS」(UBIソフト)、「Call of Duty World at WAR」(Activision Blizard)などのソフトが登場すると発表した。
- 「Animal Crossing: City Fork」(どうぶつの森):2008年末発売予定。プロデューサーの江口勝也氏が映像で登場し、新作に対する思いと魅力を語った。本作での新しいところは「街(City)」。オークションへの参加やグレースのお店での洋服の購入、ビューティサロンで髪型を変えたりもできるようになる。また、コミュニケーション用のペリフェラル「WiiSpeak」に対応している。
- Wii Speak:Wii「Animal Crossing: City Fork」でオプションとして接続できるペリフェラル。同タイトルと同じタイミングで29.99ドルで発売される。テレビの上に常時セットされ、ユーザー同士が音声チャットができるもの。ヘッドセットマイクと異なり複数人でコミュニケーションできるのも魅力だ。会場では、「Animal Crossing City Folk」でのつり大会でお互いに声をかけながらプレイする様子が披露された。今後サードパーティタイトルでの対応も期待される。
- 「Wii Sports Resort」:北米でハードに同梱されている「Wii Sports」の続編という位置づけのソフト。フリスビー「Disc Dog」やジェットスキー「Power Cruising」、Wiiリモコンを刀に見立てる「Swordplay」などが紹介された。このソフトに同梱される「Wii MotionPlus」は現在のWiiリモコンに接続するペリフェラル。
- Wii MotionPlus:Wiiリモコン底部に装着する。Wiiリモコン内蔵の加速度センサーとセンサーバーとの連携よる正確な動きを感知するペリフェラル。プレイヤーの手首や腕のわずかな動きでさえ、実際と同じようにリアルタイムに画面上に表示されることになる。「Wii MotionPlus」を装着した際のWiiリモコンジャケットも同梱される。
- 「Wii Music」:宮本氏がWiiリモコンをサックスに見立てて演奏しながら登場、会場をわかせた。指示されたリズムや音階を指示通りに演奏する既存の音楽/リズムゲームと違って、ユーザーが出したい音を出したいタイミングで演奏できる、という、新しいタイプのソフトウェア。サックス、バイオリン、ギター、パーカッション、和太鼓などの紹介があったが、Wiiバランスボードを使用したドラムは圧巻で、これで練習すれば実際のドラムも数週間でたたけるようになる、と宮本氏は笑顔で語る。複数人でのセッションも可能だが、自分がすべての楽器で演奏した後、ミックスして収録できる1人セッションも可能とのこと。このソフトは「Wii MotionPlus」なしでプレイできるのがうれしい。
2:ニンテンドーDS
ダナウェイ氏より、ニンテンドーDSが2000万台以上北米で販売されたとの報告。今後のラインアップとして、EAから「Spore Creatures for DS」、Activisionの「GUITAR HERO ON TOUR」、そして任天堂の「Pokemon Rangers: Shadows of Almia」が発表された。
また、2005年にはDSユーザーの男女比が70:30で男性が優勢だったにもかかわらず、現在では52:48とほぼ半々の状況になったとのこと、日本で発売済の料理レシピ集「お料理ナビ」の発売なども発表された。
また、空港での待ち時間にDSを使って何か便利なサービスが受けられないか? との試みをしているという。「自分の荷物が着くバッゲージクレイムがどこなのか?」や、「一番近いレストランはどこか?」など、便利な案内をニンテンドーDSを通じて行えるようにしたいとのことだ。また、すでにシアトル(Nintendo of Americaのお膝元)ではマリナーズの試合観戦中に、他の試合状況を確認したり、スナックのオーダーもできるようになっているそうだ。
しかし、一番驚かされたのは、「Grand Theft Auto: Chinatown Wars」が12月に発売されるというニュースだった。会場からは歓喜の拍手喝采が施された。これまで話していたライト層向けのソフトとは一転、ハードコア向けの巨大フランチャイズのニンテンドーDSへの参入である。
3:まとめ
オールスターキャストが登場する、相変わらず圧倒的なカンファレンスであった。また、他社との競争を前面に出さず、常に「新しいものへ」と向かっている姿も他社には見られない余裕を感じた。また、マイクロソフトのカンファレンスであった「Final Fantasy XIII」に匹敵するサプライズとして挙げるとしたら、「Grand Theft Auto Chinatown Wars」であろう。「インストールベースの高いハードにソフトを供給する」のはソフトメーカーとしては当然の戦略ではあるものの、子供やライトユーザー向けをうたっているニンテンドーDSに供給されるのは興味深い。果たして現在ニンテンドーDSを持っているライトユーザーが「GTA」をプレイするようになるのか? 「GTA」をプレイするためにコアユーザーがニンテンドーDSを買うのか? 今後の結果を見守っていきたいところである。
若干不思議に思ったのが、WiiWareについてほとんど触れられなかったことだ。5月に肝いりで北米でローンチしてからというもの、何らかの報告や今後の展開などが発表されるはずと思っていたのは記者だけではないはずである。岩田社長が掲げる、オープンなプラットフォームであるためにはWiiWareの存在は必須で、展開に関しての情報はあってしかるべきだろう。
「どうぶつの森」もそうだが、今回初お目見えとなった「Wii Music」も含めて言えるのが「目的のないゲーム」であるということ。誤解していただきたくないのは、批判をしているのではない。特に指示通りに事を起こしてポイントを稼ぐものではないから、競ったり争ったりしないのにも関わらず、ゲームとして成立しているから驚きである。ユーザーは「どうぶつの森」で、クリアしなければならないステージなど持たずに、のんびりコミュニケーションをして生活を楽しんだり、「Wii Music」では指示通りの音階を押さえる必要もなく、タイミングも決められていないので、心の赴くまま演奏を楽しめばいいのだ。
いつものことながら、これらの事例を確認するまでもなく、任天堂のハードにおけるファーストパーティとしての同社のタイトルが、とても強力かつリッチなものであることを印象付けた。前述したが、Wiiにおいてサードパーティから発売された19タイトルが、タイトル当たり40万本以上売り上げたとの報告があったが、たくさんのサードパーティのタイトルの中で、40万本以上売れたタイトルが19タイトルしかないとも言える。今後の課題としては、そのバランスの悪さをどう調整できるのかではないだろうか?
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