連載
» 2008年08月08日 16時00分 公開

究極のプログラマーは「真田さん」!?――技術者のあり方とは ヒライタケシの「投げる前から変化球」(その2)(3/3 ページ)

[ヒライタケシ/ITmedia +D Games編集部,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

次の世代へ―――これからのゲーム業界へ入ってくる人に期待すること

画像

平井 これからゲーム業界に参加する若い人に、松下さんが期待してることって何ですか?

松下 プログラマーでも最近は、学生の時からメインプログラマーを目指したいと言う人が増えています。それはいいことなんですが、スーパーサブと呼ばれる縁の下の力持ち的な存在も必要なんです。メインプログラマーというのは、決して偉いわけではないですから。ですので、若い人には仕事の表の部分だけを見て欲しくない、と思っています。

 ゲームを面白くする部分を作るプログラマーや、シェーダーや物理エンジンなどの技術面を支える人も素晴らしいんです。ただ、メディアなどにはどうしても、メインプログラマーやディレクターという肩書きの人が出てきますから。

平井 確かにディレクター、プロデューサー志望の人にはよくお会いしますね。どうしても露出が多いし、クレジットでは名前が目立ちやすいですし。

松下 まだ、ディレクターとかプロデューサーの仕事そのものが、誤解されているような気がします。プログラマーのままでいたとしても、ゲーム制作には深く関わっていられます。

平井 メインプログラマーになるのが最終目的ではなくて、枠にとらわれず何をしたいのか、どんなプログラムをしたいのかという主張をきちんとできる人が理想です。例えばアニメーションに強くなりたい、フレームワークをやりたいといった、1つの要素のエキスパートを目指す人が、メインプログラマーとして業界で生き残っていると思います。幅も深さも両方意識できる人といいますか。

 そういう意味では、日常でも開発に集中するだけではなく、基礎研究がセットになることがベターですね。開発の中に全てがあるわけではないからです。今やりたいこと、やるべきことが、手がけているタイトルの開発の中にそろっているわけではない状況下でいかに基礎研究にもチャレンジできるか、です。開発ばかりやっていると、物は見えるけれど研究意識がなくなって古くなってしまう。研究ばかりやっているとサービス意識がなくなってアウトプットができなくなってしまいます。ここの、両方のバランスを取れる人が将来的に生き残れる。若い人はここを目指してほしいと思うんです。

松下 それは本当にその通りですね。加えて、プログラマーの仕事はプログラミングだけじゃないということは強く意識したほうがいいです。ゲームを面白くするためなら、良くてアウトプットが伴えばある意味手段は何でもいいんです。もっとみんな、“攻めの姿勢”でやってほしいですね。

平井 プログラムの話で伝え忘れたことがありました。厳しくスタッフに言ってるのは「データ依存するプログラムを書くな」という点です。必ずプログラムの中にデータを入れろと。あとはUIには厳しい目でチェックをします。人間の目線の流れは決まっているので、それを忘れずにUIを設計しろ。座標がプログラムの中に入ってたりすると「これはやめてください」と言います。

松下 ユーザー視点を忘れないということですね。これはわたしも先輩からずっと言われてきたことですが、たまに「パラメーターを全部外に出して調整してください」という人がいるんですよ。それはダメだと。プログラマーたるもの、ある程度「これ面白いですよね」ぐらいまで調整した物をプランナーに渡せ、と。小・中・大の攻撃が全部同じダメージだったら、それが面白いとは決して思えない。つまり、プログラムとして完成してるとは言えないでしょう。

平井 コーディング意識とアウトプット意識は違いますからね。プログラミングって料理と似ていて、素晴らしいスパイスがあったとしても、それだけ食べても美味いかどうかわかりません。そのスパイスに最適な料理を作って一緒に出さないと意味がないんですよ。

松下 アウトプットにこだわるのはプログラマーにとって大切ですよね。途中の過程にも、もちろんこだわりますが、途中って修正ききますから。

画像

平井 僕の経験でも、自分が作ったシステムの中で、自分が想像している以上のことをやるプログラマーというのはいるんですよね。

 「シェンムー」の時の話ですけれど、イベントプログラマーとシステムプログラマーは別枠で、イベントプログラマーはシステムプログラムのインタフェースを使ってしかコーディングできないんです。これは、システムが更新されても、全てのイベントをコンパイルし直さないといけない、ということが起きないように切り分けていたんです。

 ところが、この環境ではまだできないだろうということを、いい意味で裏切ってくれるんです。セッションにも似た関係で、それができるなら、じゃあこの環境ならどうなんだろうといろいろと試せて楽しかったですよ。

松下 今はツールベースの開発環境に対して、みんなが効率を求め出しているので……。セッションみたいっていうのはいいですね。ある種の理想です。

平井 効率化という意味をエンジニアじゃない人にも分かりやすく伝えるためには、どうしたらいいんでしょう。

松下 ツール込みのシステムにして、なるべく画面上にその情報を出すとかになっちゃいますよね。

平井 僕も最終的なアウトプットがグラフィックになるのがいい形なんだと思います。客観的に判断できるし一目瞭然でしょう。

松下 昔はデザイナーもプランナーも、プログラマーに任せて信じるしかなかったんですが、客観的に判断してもらえるシステムやツールを作ることで作品の精度はあがります。プログラマーはしんどくなりますけど。

平井 そうですよね。さて、ここまでも強引にまとめますと、やはり「プランナー視点に立ち、ユーザー視点に立ち、料理を見据えたスパイスを」といった部分がお話として印象深いのですが、つまり、どういうことでしょう?

松下 そうですね……。やはり「真田さん」であることが必要なんだと思います(笑)。

平井 (笑)。それでは最後に、今後の抱負を聞かせていただけますか。

松下 ヘキサドライブも設立してから1年と4カ月しかたっておらず、チャレンジを始めたばかりです。このチャレンジをもっともっと続けて、新しいアウトプットをしていきたいですね。

平井 これまでとは違うコラボレーションを松下さんの会社とは一緒にやっていきたいですし、僕自身もその時が楽しみです。本日はありがとうございました。

ヒライからのひと言

 第2回はヘキサドライブ代表取締役の松下さんにご登場頂きました。 大手企業エースプログラマーが独立してエンジニア集団を率いておりその体制に技術者として純粋にうらやましく思います。

 ボクと松下さんはゲーム業界でいえばちょうど第二次世代といってもよいのではないでしょうか。

 3D全盛期以前から業界に入って今まさにその渦中で技術とサービスの両面からプロダクションを創造する同志といっても過言ではないでしょう。今回の対談ではプログラマーとしての心構えや考え方、メインプログラマーの要素にフォーカスしたディスカッションとなりました。

 日本ではゲーム業界だけでなく、かなり珍しいエンジニア同士の対談で内容としても、エンジニアだけでなく開発者や開発者を目指す方々に分かりやすいものになっていると思います。

 改めて内容を読み返してみて、プログラマーというファンクションにしばられてお見合いすることなく、最終形を想像してコミュニケーションすることが大切なんだと再認識しました。皆さんに少しでも響くところがあれば大変うれしいです。

 次回の対談候補はエンターテインメント業界というキーワードは一緒ですが、いわゆるゲーム機業界ではない一流の技術者とサービス、アウトプットにフォーカスしたディスカッションをしていきたいと思います。また違ったエンジニアの考え方や可能性を知ることができるのではないでしょうか。ご期待下さい。

プロフィール

平井武史(ひらい たけし)
キューエンタテインメント 最高技術責任者/CTO

代表作:「シェンムー」「スペースチャンネル5 パート2」「メテオス」「メテオスオンライン」

エンジニアとしてハイエンドからモバイル、Web、システム管理までほぼ全ての環境、言語を話す。
ヘアショーのサロン映像、音楽プロデュースを行ったり、海中での写真集を提供したりと守備範囲は広い。
海をこよなく愛するMSD(マスター・スクーバ・ダイバー)である。



画像

取材協力:CHUM APARTMENT

下目黒にあるCHUM APARTMENTは、ゆったりとした空間でおいしい料理が楽しめるお店。新メニューとして「イサキのカルパッチョ」「自家製スモークとイタリア生ハムの盛り合わせ」「焼きなすのマリネ 和風ジュレがけ」「マルゲリータ」「唐きび牛バラ肉のグリル フレッシュサルサ」が加わりました。


画像 イサキのカルパッチョ
画像 焼きなすのマリネ 和風ジュレがけ
画像 唐きび牛バラ肉のグリル フレッシュサルサ

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/06/news020.jpg 柴犬「友達〜!!!」 お母さんの寝坊で散歩が遅れた柴犬、ワン友に会えず……→怒りMAXの拒否柴発動に母「スマン……」
  2. /nl/articles/2311/06/news041.jpg 素潜りでイソマグロを突いたら海に引きずり込まれ…… 水深25メートルの激闘が100万再生「怖い」「磯のダンプカー」
  3. /nl/articles/2311/05/news045.jpg カナダ留学中の光浦靖子、得意の手芸でまたしても力作を生み出す 「クオリティ高すぎ」「もープロですね」
  4. /nl/articles/2308/06/news018.jpg 柴犬がプールからあがろうとした瞬間……! 「何回見ても爆笑」「好きすぎる」コントのようなずっこけハプニングが発生
  5. /nl/articles/2311/06/news047.jpg 隣家にいった飼い主、ふと視線を感じると柴犬たちが……? じーっと監視するワンコきょうだいの圧に爆笑
  6. /nl/articles/2311/06/news117.jpg 「スト6」フランス大会決勝、モニターにペンキで中断 環境団体乱入で
  7. /nl/articles/2311/06/news068.jpg 村重杏奈の“最強遺伝子”な弟、7歳バースデーお祝いに黄色い声 姉とうり二つな姿に「幼さが抜けて更にイケメン」「可愛いしカッコイイ」
  8. /nl/articles/2311/04/news008.jpg 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. /nl/articles/2311/04/news016.jpg 突然現れた痩せて汚れた野良猫、「ごはんくだちゃい」と訴えてきて…… 距離が縮まっていく姿に「涙が出ます」と100万再生
  10. /nl/articles/2311/05/news052.jpg 「ここはあんたが座る席じゃないよ」 末期すい臓がんの叶井俊太郎、優先席に座るも高齢者から非難 妻・倉田真由美が明かす
先週の総合アクセスTOP10
  1. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  2. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  3. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!
  4. 「BreakingDown」出場の元プロボクサー、5人から一方的に暴行される 顔面数針縫うも「私は1発も攻撃してません」
  5. 「頭が大きい」「普通ではない」 パリス・ヒルトン、9カ月長男の受診勧めるコメントにぴしゃり「世の中には病んでる人がいるみたい」
  6. 「最期の最期まで闘って」 元「妄想キャリブレーション」水城夢子さん、27歳で病死 2年前には“しばらく療養が必要な病状”で休止
  7. 3児の母・杏、異次元スタイルのパンツスーツ姿が衝撃的 目を疑う脚の長さに「身長の半分股下」「えっ! 本当!? っと思っちゃうくらい」
  8. 志穂美悦子、68歳バースデーに鍛えられた筋肉バキバキの肉体美披露 「いろいろやりたいことがある」「まだ見ぬ自分へ」
  9. 柴犬と父のやりとりに「20分これ見て爆笑してます」「気持ちよすぎるいい返事」 お笑いコンビを超える関係性が100万再生
  10. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 病名不明で入院の渡邊渚、3カ月ぶりSNS更新で「表情に違和感」「そこまで酷い状況とは」 ベッド上で「人生をやり直すこともできません」
  2. 動かないイモムシを助けて1年後のある日、窓の外がありえない光景に 感動サプライズが「アゲハ蝶の恩返し」と話題
  3. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
  4. 「千鳥」大悟、大物美人俳優にバッグハグされた表情に注目集まる 「マジ照れのお顔ですね」「でれでれやん」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 神田愛花アナ、拡散された女子中学生時代ショットにスタジオ騒然「ヤバい」→“アネゴ感”でSNSもざわつく
  7. 「生きててよかった」 熊谷真実、美麗な初“袋とじ”グラビアで63歳の色気全開 真っ赤なドレス着こなす姿に「すごいプロポーション」
  8. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  9. 双子モデル・吉川ちえ、美容整形後のひたいが“コブダイ”状態へ 多額の費用要した修正手術で後悔も「傷がこんなに残りました…」
  10. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!