インターネットのあけぼの「ありす in Cyberland」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/3 ページ)
今回取り上げるゲームは、グラムスの「ありす in Cyberland」です。千葉麗子さんプロデュースという触れ込みで売り出された“ギャルベンチャー”。これの失敗が原因で、グラムスは倒産したといわれていますが、果たしてゲーム自体の出来はどうだったのでしょうか?
千葉麗子さんがプロデュース?
日本におけるインターネットの普及については、千葉麗子さんの功績を抜きにして語れない。
1990年代半ばにおいては珍しく、コンピュータやテレビゲームに詳しいアイドルだった千葉さんは、弱冠20歳で芸能界を離れ、チェリーベイブという会社を創業。インターネット入門書の執筆、講演やコンピュータ関連イベントへの出演、インターネットカフェの開業など、インターネットの普及に尽力された。
わたしも、千葉さんと伊藤穣一さんの「千葉麗子とつくるインターネットホームページ」という本で、サイトの作り方を勉強した。
当時のわたしは、ライターの仕事を失い、新しいゲーム雑誌に連載企画を持ち込もうとしたが、うまくいっていない状況だった。そんなわたしにとって、“誰でも情報を発信できる”インターネットは、非常に魅力的な新しいメディアだった。
わたしはこの本で勉強して個人サイトを作り、それをインターネット専門誌(インターネットマニア、ヤフーインターネットガイド、あちゃらなど)で取り上げていただいた。考えてみれば、今こうしてWebサイトで記事を書かせていただけるのも、千葉さんの本があったからこそだ。
さらに、原宿に千葉さんがオープンしたネットカフェ「オキエラビッチェ」にも通い詰めていた。当時は親と同居していて、ダイヤルアップ回線を気軽に使えなかったので、このお店があったことでずいぶん助けられた。
後にインターネットがブームになってくると、狭いオキエラビッチェは常に満席状態で、端末がなかなか空かなかった。そのためわたしは、同じ明治通り沿いにある、「サイバーネットカフェ」という別のネットカフェを利用することが多くなった。
両店舗とも、インターネット専門誌でよく取り上げられていた。この頃の原宿は、日本のインターネットの最先端基地だったのだ。千葉さんが先頭に立って紹介していたことや、ネットカフェが原宿にあり、その内装も原宿にふさわしいきれいなものだったことから、インターネットはオシャレで“クール”なものとして認識されていた。
前述の本の中でも、Hot WIREDのハワード・ラインゴールド氏が、千葉さんの活躍によって、「日本の若い女性たちがファッショナブルでかっこいいイメージを持ってコミュニティへの参加ができるようになるだろう」と賛辞を贈っている。
そんな千葉さんがプロデュースしたゲーム、という触れ込みで発売されたのが、グラムスの「ありす in Cyberland」だった。残念ながら売り上げは伸びず、そのことがグラムスの倒産につながったとうわさされる。では実際、このゲームの出来はどうだったのだろうか?
渋谷で遊ぶありすたち
ありす in Cyberlandは、1996年12月に発売されたプレイステーション用ゲーム。ジャンルはギャルゲー+アドベンチャー、略して“ギャルベンチャー”と銘打たれている。
主人公は、ミスカトニック学園に通う中学2年生、頭脳明晰でコンピュータに強い水無月ありす(CV:浅田葉子)、スポーツ万能で若干ガサツな性格の鳳麗奈(CV:荒木香恵)、かなり天然キャラな八神樹莉(CV:宮村優子)の3人。
時は21世紀。インターネットはさらなる進化を遂げ、“サイバーランド”となっていた。ありすたち3人は、サイバーランドに“ダイヴ”して「アリス3(アリススリー)」と名乗り、そこで起こる数々の事件を解決するのだ。
ストーリーは全5話から成り、それぞれ現実世界で事件が起こり、ありすたちがサイバーランドに乗り込んでそれを解決する。第1話から第3話では、現実世界で渋谷の街を回り、事件に関する情報を得たり、3人でおしゃべりしたり、ゲームセンターやカラオケ屋やブティックで楽しんだりする。
シナリオの本筋とはあまり関係がない、ゲームセンター、カラオケ、ブティックのイベントが妙に凝っている。ゲームセンターでは「ドカバキジャイケン」というミニゲームが遊べるし、カラオケでは3人それぞれの持ち歌があって、フルコーラス聴ける。
ブティックでは3人が互いに服を選び合って、それぞれの服を試着する。この時のグラフィックは、2画面分の1枚絵で表示されるという力の入れようだ。まさに“ギャルベンチャー”の、ギャルゲー的側面である。
結局3人とも、試着しただけで1着も買ってないんだけど。
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