日本が再び世界のリーダーとなるために必要なこと――和田洋一氏基調講演東京ゲームショウ2008

東京ゲームショウ2008の基調講演に社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の和田洋一氏が登場。日本のゲーム業界が世界のリーダーではなくなってしまった理由などを語った。

» 2008年10月09日 23時52分 公開
[ITmedia]
photo 和田洋一氏

 「日本ゲーム産業新世代 世界は日本のゲームメーカーに何を求めるのか」と題された基調講演において、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の和田洋一氏はまず、日本のゲーム業界が世界のリーダーではなくなってしまった理由を考察した。

 世間的には“日本のゲームは欧米向けに作られていないので売れない”といった嗜好の問題や、“ゲーム機が高度になって開発コストが高騰した”という資金の問題が挙げられているとした和田氏だったが、「世界的なコンテンツというのは、ゲームにしろアニメにしろ映画にしろマンガにしろ、世界的に売れている。嗜好というのは言い訳にはならない。また、コストが上がっているのは日本だけではなく、世界中で上がっている。むしろ日本のゲーム企業の財務は非常に強固で、バランスシートは世界でトップレベルの強さを誇る」と話すなど、これには否定的な見解を示す。

 和田氏曰く、日本のゲーム業界が欧米に遅れを取っている本当の理由は、「我々の作る能力自体が、欧米に上回られた」とのことで、「20年ほど前は、モノを作るうえで非常に豊かなコミュニティが、極めてアクティブな状態で発達していた。この時、私どもゲーム業界がもっと色々とやれば良かったんです。日本から海外に向けてコミュニティを伸ばしていく努力を怠ったというか、例えば、アメリカのゲーム業界がハリウッドとの交流を高めたように、テレビや映画など、他業種とのコミュニケーションをもっと取ればよかったかもしれません。マンガやアニメといったポップカルチャーとは交流できたが、それ以外については必ずしもできていなかった」と、日本が欧米に追い抜かれたことに関して、独自の考えを披露した。

 また、モノを作るという根源的なところにおいて、日本のゲーム業界は構造的な問題を抱えていると和田氏は指摘する。この構造的な問題を解決するために「ゲーム産業をネットワーク構造にする必要がある」と続けた和田氏は、克服すべき課題として“概念の混乱”“心理的抵抗”“制度上の不整合”“実務的困難さ”の4つを挙げるとともに、何より大事なことは「まず危機だと思うこと」だと話した。

 「危機の本質はお金のことではない。モノ作りに対する日本の土壌がやせ始めているということで、これはゲーム業界に限らず、日本全体の問題だと思っている。あるタイミングがきたら解決する問題ではなく、意識して相当無理しなくてはならない」(和田氏)

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 最後にまとめとして、「世界は日本のゲーム業界が、世界のコミュニティに積極的に関わり、すばらしいコンテンツを供給することを期待している(ハズ)」と話した和田氏。続けて、「ハズというのは、我々に残されている時間が非常に短いということです。数年の後に、我々が決定的に変わっていかないと、ハズが取れて、期待していないとなるかもしれません」と話すなど、業界全体に対して苦言を呈した。

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