いざ空想科学の世界へ! 南洋の珊瑚礁に秘められた謎を解き明かせ:「アクアノーツホリデイ 隠された記録」レビュー(2/2 ページ)
追跡者を想定した失踪者の足跡
ビルが失踪した理由を探るのが主人公の目的だが、調査を始めると比較的早く意外な事実が判明する。それはビル自身が自分の行動を追跡してくる者がいることを想定し、そのための手がかりをあらかじめ残してくれていたということだ。なぜビルがそんなことをしたのかはさておき、そのおかげで主人公はビルが失踪に至った経緯をトレースしやすくなっている。しかもビルの仕掛けた道筋を辿っていくと、それにともなって潜水艇に施されたロックが解除されていくのだ。
ビルが残した手がかりのうち、もっとも基本的な仕掛けが“ソノブイ”と呼ばれる装置だ。舞台となる環礁海域では地質的な影響で電波装置やコンパスが使えない。そのため、ソノブイから発信されるシグナルを探知して位置を把握しなければならない。言い換えるならば、ソノブイのシグナルが届かない海域は自分の位置を見失う恐れがありため、航行できないというわけだ。
ソノブイはバッテリーで起動する仕組みになっているが、ビルが失踪し、その後のメンテナンスが行われていないため、動作停止状態になっている。このままではアクアヘブン周辺のごく狭い海域しか調査できず、失踪原因の解明などできるはずがない。そこで主人公は自らバッテリーの再装填をすることになる。ただし、バッテリーはタダではない。研究所に申請して購入しなければならないのだ。その資金をどこから持ってくるかというと、環礁海域の調査によって捻出する。海域にどんな生物が棲息しているかを報告すると、発見した生物に応じて一定の報酬が出るので、それを購入費に充てるのである。
なぜ主人公がそんなことをせねばならないのかとか、どう考えてもこの調査は研究所の仕事じゃないのかとか思うかもしれないが、まあ、細かいことを言うのはやめておこう。それにジェシカはかよわき女性、ロバートは老齢。海に潜れなんて苛酷なことを言っては男がすたる。それにビル失踪の謎を解こうとしているのは主人公なのだから、それでいいではないか。南洋の楽園である。あんまり考えすぎて脳味噌がゆだってもナンだし、元気な主人公が頑張れば、みんな幸せになれる、ということで。
ともあれ、海域の生物を調べて報告し、集めた資金でバッテリーを購入してソノブイの機能を復活させる。それによって調査可能海域を広げていく。これがゲームの基本的な進め方になる。
海の中には不思議がいっぱい
エリアを広げながら捜索を進めていくという構成を聞いて、アクション・アドベンチャーゲームみたいだなと思った人がいたら、それが正解。つまり、環礁全体が屋敷、ソノブイは扉、バッテリーが鍵というわけだ。ソノブイを復活させることで進めるようになる各海域は部屋に該当する。
となると、アクション・アドベンチャーゲームが好きな人なら、次の展開も予想がつくだろう。一般的なアクション・アドベンチャーゲームであれば、部屋にはオブジェクトがあり、オブジェクトを調べることでフラグが立ってシナリオが進む。アクアノートホリディもまったく同じ。海域にはいろいろなオブジェクトがある。ただオブジェクトというとアイテムみたいなので、ここでは浪漫も込めて“不思議”と呼んでおこう。不思議には発見すれば報酬がもらえるというタイプと、ビル失踪に絡む事象に分かれる。ボーナスとメインという分類もアクション・アドベンチャーゲームではおなじみだろう。
ところで主人公には専門的な知識はないから、不思議を発見してもその意味が分からないということがしばしば起こる。そんな時こそベースにいるふたりの出番だ。特にジェシカは科学者とは思えないほどオカルトや超科学に造詣が深い。相当胡散臭い話を持っていっても嫌な顔ひとつせずに聞いてくれ、いろいろな解説をしてくれる。SFに興味がない人はこういう話を聞くと引いてしまうかもしれないが、案ずることはない。実質的にアクション・アドベンチャーゲームである以上、重要なのはジェシカと話したという事実。フラグはそれで立つ。関心のある人は彼女の話を詳細に聞いてもいいだろうが、適当に流しておいてもストーリーは進む。超科学的な要素を採り入れているからといって、それにべったりなわけではない。あくまでエンターテイメントを盛り上げるためのピースに過ぎないのだ。過度な警戒は無用。
調査可能海域が広がるといきおいベースとの距離も広がり、いちいち往復しているのが面倒になってくる。そんな時に重宝するのが“NaSU”という装置だ。これもシグナルを発信するが、ソノブイとは違ってエリアをカバーするのではなく、設置場所を伝達する機能を持つ。潜水艇はシグナルを受けると現在地点からNaSUがある地点までの最短距離を自動判定してくれる。ゲーム的に言えば、NaSUを設置した場所へは自動航行という形でワープできるようというわけだ。しかも何度でも回収して再設置できるので、調査を進めながら設置場所を移動できる。ストーリーが進むに連れて同時に設置できる個数が増えていくので移動の手間はずいぶん軽くなる。
NaSUを効果的に使いながら数々の不思議を見つけ、ストーリーを進めていく。発見した生物や不思議は“アクアライブラリ”に登録されていくので、図鑑をコンプリートする楽しみも付加される。話の進行と図鑑の完成を並行的に進めていけば、海はその中に隠した秘密をどんどん明らかにしてくれることだろう。
目立たないこだわりにも注目
アクアノーツホリデイは、大自然の魅力を満喫するというエコあるいはヒーリングを対象とした作品ではない。謎の海域を調査し、そこでさまざまな不思議に触れることを目的としている。ミステリースポットに対して人間が覚える普遍的な関心を踏まえたエンターテイメントといえるだろう。しかし、制作したのは国内有数のシミュレーションゲーム・メーカーであるアートディンク。それだけに目立たないところにも細かな作り込みが感じられる。
例えば海流。ベース付近の凪いだ海域にはほとんど海水の流れがない。しかし沖に進むと海流が発生し、場所によってはそれがかなり強い。こうした海域では潜水艇の移動速度は低下し、しかも流されるようになる。それによって調査にもの凄い支障が出ることはないのだが、自分のいる海域へのイメージが変わってくる。また深度も考慮されている。垂直移動をしながら海の色を見ていると、陽光がどこまで届くかを計算して、微妙な変化が起こるのだ。
謎を追い求めるだけでなく、時には作り手のこうした細かなこだわりに目を向けると、ゲームの楽しさが増し、映像表現メディアとしてのプレイステーション3への興味もいっそう増すことだろう。
「アクアノーツホリデイ 隠された記録」 | |
対応機種 | プレイステーション 3 |
ジャンル | 海洋アドベンチャー |
発売日 | 2008年9月25日 |
価格(税込) | 5980円 |
関連記事
- 「リトルビッグプラネット」などが遊べる――体験型イベント「体験!プレイステーション」開催
- そこに海があるという幸せと未知への好奇心――「AQUANOAUT’S HOLIDAY 〜隠された記録〜」
海にたゆたう「アクアノートの休日」がPS3でよみがえる。美しすぎる環礁の底に眠る謎を求めて、ひと味違う海洋探索はいかが?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
-
ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
-
夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
-
ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
-
妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
-
人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
-
「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
-
「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
-
160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
-
「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた