誰もが知らず知らずのうちに誰かの運命に干渉している――パズル的な要素が面白い“実写”サウンドノベル:「428」レビュー(2/2 ページ)
遊びやすくなったシステム
さて、ここからはシステムをチェックしていきたい。といっても、文章を読み進み、選択肢を選んでいくのは既存のサウンドノベル通り。そして、428は街と同様、複数のシナリオがお互いに影響し合うザッピング前提の構造となっている。
各主人公のシナリオは「11:00-12:00」といったように、1時間ごとに区切られた「タイムエリア」でまとめられている。タイムエリアの各シナリオが最後までたどり着くと、次の1時間に進める。しかし、普通にプレイしていては、バッドエンドに到達してしまう。プレイヤーはほかのシナリオも考慮しつつ、主人公たちの行動を選択しなければならない。これが運命を操るゲームと呼ばれるゆえんだ。
例えば冒頭、身代金の引き渡しを待つ女子大生のひとみに近づいてきた若い男を、張り込んでいた刑事の加納が逮捕する。だが、この男は事件には無関係の、亜智だった。これではバッドエンドに……。ここを回避するためには、亜智のシナリオで、ひとみに関わらない選択肢を選べばいい、といった具合だ。
終盤はバッドエンドを迎えることが多くなり、難易度も上がってくる。どの選択肢がどこに関係しているのか、見極めるのはパズル的な面白さがある。
選択肢以外では、テキスト中に表示される赤い文字を選んで「JUMP」するザッピング的システムも重要だ。シナリオを読み進めるうちに、突然「KEEP OUT」と表示され、話がストップしてしまう。これは、ほかのシナリオからJUMPしてこなければ解除されない。
こうした要素は、街にも見られたが、先ほども触れたタイムチャートが非常に優秀で、敷居がかなり下がった。ゲームを進めると自動的に作られるタイムチャートによって、主人公たちの物語が5分刻みのチャプターで確認できる。選択肢やJUMPがどこにあるかも一目瞭然(りょうぜん)だ。詰まったら十字ボタンの左右で主人公、上下で時間を切り替え、サクサクと調べていこう。タイムチャートとにらめっこすれば、打開策も見えてくるはず。クリア後のバッドエンド探しも楽だ。
ちなみに、テキスト中、青い文字で表示される単語は「TIP」と呼ばれ、ここに合わせてボタンを押すと、その単語についての豆知識や詳しいコメントを読むことができる。真面目な用語解説もあるが、クイズや占い、ギャグ、マニアックすぎるうんちくとさまざま。TIPには作り手の遊び心を感じる。
また恒例の隠しシナリオもあり、今回はかまいたちの夜の我孫子武丸氏と、TYPE-MOONの奈須きのこ氏が手がけているなど超豪華だ。特に奈須氏のパートは全編アニメでボイスつき。本編とはイメージが180度違うので、こちらも必見だ。
巧みな演出で盛り上がるドラマ
本作で特筆すべきは演出のうまさだろう。ノベルゲームは確かに文字がメインだが、もともとサウンドノベルと名乗っているように、ケータイの着信音や街角の雑音など、効果音から臨場感が良く伝わってくる。さらに、一見止め絵に見える背景の画像も、少しずつズームアウト・ズームイン、パンしているのに気づくと思う。何気ない演出だが、これもゲーム全体の躍動感につながっているのではないか。
巧みな演出のおかげで、頭の中では、まるでドラマのワンシーンのようにキャラクターが生き生きと動き回る。しかもドラマにはない文字という武器で、心の奥底までもが細やかに分かるのだ。428は、これまでになかった新たな表現方法を明示している。
全体としてサービス精神も旺盛で、ビギナーへのガイドもしっかりしている。サスペンスものが好きなら、普段ほとんどゲームをしないという人にも自信を持ってオススメできるだろう。実写ノベルゲームのブームが到来する、そんな気にさせる作品だ。
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