誰もが知らず知らずのうちに誰かの運命に干渉している――パズル的な要素が面白い“実写”サウンドノベル「428」レビュー(2/2 ページ)

» 2008年12月09日 12時52分 公開
[立花裕壱,ITmedia]
前のページへ 1|2       

遊びやすくなったシステム

 さて、ここからはシステムをチェックしていきたい。といっても、文章を読み進み、選択肢を選んでいくのは既存のサウンドノベル通り。そして、428は街と同様、複数のシナリオがお互いに影響し合うザッピング前提の構造となっている。

 各主人公のシナリオは「11:00-12:00」といったように、1時間ごとに区切られた「タイムエリア」でまとめられている。タイムエリアの各シナリオが最後までたどり着くと、次の1時間に進める。しかし、普通にプレイしていては、バッドエンドに到達してしまう。プレイヤーはほかのシナリオも考慮しつつ、主人公たちの行動を選択しなければならない。これが運命を操るゲームと呼ばれるゆえんだ。

 例えば冒頭、身代金の引き渡しを待つ女子大生のひとみに近づいてきた若い男を、張り込んでいた刑事の加納が逮捕する。だが、この男は事件には無関係の、亜智だった。これではバッドエンドに……。ここを回避するためには、亜智のシナリオで、ひとみに関わらない選択肢を選べばいい、といった具合だ。

 終盤はバッドエンドを迎えることが多くなり、難易度も上がってくる。どの選択肢がどこに関係しているのか、見極めるのはパズル的な面白さがある。

photo 各シナリオの選択肢をうまく選び、バッドエンドを回避していく。といってもすぐに後戻りできるので、気軽にセレクトしよう
photo バッドエンドごとにヒントがついている親切設計。猛者ならヒントを読まずにやり込むのも手か

 選択肢以外では、テキスト中に表示される赤い文字を選んで「JUMP」するザッピング的システムも重要だ。シナリオを読み進めるうちに、突然「KEEP OUT」と表示され、話がストップしてしまう。これは、ほかのシナリオからJUMPしてこなければ解除されない。

 こうした要素は、街にも見られたが、先ほども触れたタイムチャートが非常に優秀で、敷居がかなり下がった。ゲームを進めると自動的に作られるタイムチャートによって、主人公たちの物語が5分刻みのチャプターで確認できる。選択肢やJUMPがどこにあるかも一目瞭然(りょうぜん)だ。詰まったら十字ボタンの左右で主人公、上下で時間を切り替え、サクサクと調べていこう。タイムチャートとにらめっこすれば、打開策も見えてくるはず。クリア後のバッドエンド探しも楽だ。

 ちなみに、テキスト中、青い文字で表示される単語は「TIP」と呼ばれ、ここに合わせてボタンを押すと、その単語についての豆知識や詳しいコメントを読むことができる。真面目な用語解説もあるが、クイズや占い、ギャグ、マニアックすぎるうんちくとさまざま。TIPには作り手の遊び心を感じる。

 また恒例の隠しシナリオもあり、今回はかまいたちの夜の我孫子武丸氏と、TYPE-MOONの奈須きのこ氏が手がけているなど超豪華だ。特に奈須氏のパートは全編アニメでボイスつき。本編とはイメージが180度違うので、こちらも必見だ。

photo 刑事の加納のシナリオがKEEP OUTされたら、亜智が加納に突き飛ばされるシーンからJUMPしよう
photo 情報量たっぷりのTIP。TIPの中には動画が再生できるものもあって、ちょっと新鮮

巧みな演出で盛り上がるドラマ

 本作で特筆すべきは演出のうまさだろう。ノベルゲームは確かに文字がメインだが、もともとサウンドノベルと名乗っているように、ケータイの着信音や街角の雑音など、効果音から臨場感が良く伝わってくる。さらに、一見止め絵に見える背景の画像も、少しずつズームアウト・ズームイン、パンしているのに気づくと思う。何気ない演出だが、これもゲーム全体の躍動感につながっているのではないか。

 巧みな演出のおかげで、頭の中では、まるでドラマのワンシーンのようにキャラクターが生き生きと動き回る。しかもドラマにはない文字という武器で、心の奥底までもが細やかに分かるのだ。428は、これまでになかった新たな表現方法を明示している。

 全体としてサービス精神も旺盛で、ビギナーへのガイドもしっかりしている。サスペンスものが好きなら、普段ほとんどゲームをしないという人にも自信を持ってオススメできるだろう。実写ノベルゲームのブームが到来する、そんな気にさせる作品だ。

photo ゲームを進めると挟まる予告映像。この先何が起こるのか、期待を煽る
photo 10年前と比べると実写画像のクオリティも上がった。動く演出にも切れがある

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2504/18/news046.jpg 高校生の娘がいる女性、“スケバン姿”大公開→20年以上経て…… まさかの変貌ぶりに「すごい」「若くなった?」
  2. /nl/articles/2504/22/news021.jpg 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
  3. /nl/articles/2504/17/news162.jpg 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  4. /nl/articles/2504/21/news010.jpg 10年間髪を切っていない男性→婚活のためイメチェンしたら…… 「美容師さんすげぇぇ!」「鳥肌立ちました」と290万再生
  5. /nl/articles/2504/19/news039.jpg 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  6. /nl/articles/2504/22/news032.jpg ママ友が「家、きれいすぎん?」と驚がくした“秘密の間取り”  「これはすごいわ」と大反響も……今はどうなった?リアルを聞いた
  7. /nl/articles/2504/22/news091.jpg 「ここ最近の買い物で1番」 ファミリーマートの“2990円パンツ”に反響続出 「控え目に言って最高」「感動してる」
  8. /nl/articles/2504/21/news032.jpg 150万円で買ったジャングル廃墟→家族3人で本気DIYしたら……「良くなりすぎた」 見違える結果に「やばい」「憧れる」
  9. /nl/articles/2504/22/news044.jpg 「これしか履けません」 無印良品の“4990円夏向きパンツ”に称賛続出 「手放せません」「なくてはならない」
  10. /nl/articles/2504/22/news107.jpg 工藤静香、広々自宅庭とウッドデッキで愛犬たちと…… 豪邸っぷりが分かる自慢のガーデニングも公開
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  2. 【大阪万博】皇后さま、帽子から靴までブルーとピンク 天皇陛下のネクタイと“連日おそろいコーデ”
  3. 飲み終えた“コーヒーかす”→捨てずに石と混ぜると、1カ月後…… 「感動」目からウロコの裏ワザに「やってみよう」
  4. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  5. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  6. 「ウソだ…」「言葉が出ない」 幼少期から絵を描き続けた少年→15年後…… 大人になって描いた絵が100万再生【海外】
  7. 湘南の砂浜に打ちあがった“超危険生物”を飼育したら…… 貴重な姿に「初めて見ました」「かっこいい」と大反響→2年後の現在について話を聞いた
  8. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」話題になった飼い主に聞いた
  9. 万博「ミャクミャク」記念500円硬貨、金融機関での「品切れ」&高額転売相次ぐ…… 5倍以上の金額で出品される事態に
  10. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「争奪戦すごそう」 品切れや転売の懸念も「1個でいいから欲しい」「たくさん作って」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  3. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  4. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  5. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  6. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  7. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  8. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  9. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  10. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】