4月から大学での講義もスタートする「シリアスゲーム」って知ってますか?ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ(第3回)(3/4 ページ)

» 2009年03月04日 19時12分 公開
[松井悠,ITmedia]

―― こういった授業はもちろん日本では初めてのことになりますが、海外ではシリアスゲームを題材にした授業などはあるのでしょうか。

藤本 やっているところはいくつかあります。ただし、シリアスゲームのゲーム開発者向けの修士コースなど大学院生向けが中心で、一般の学部生向けにはあまりやっていないですね。

―― シラバス案を拝見したところ、ワークショップも予定されているということですが。

藤本 私は、教育方法や教育工学分野の人間なので「学習」というものをより掘り下げてもらうことを目標としています。自分の経験からゲーム開発の強みを発見してもらって、そこをベースにクリエイターとしての自分というのを見極めてもらって、社会へインパクトを与えるゲームの企画を考える時に、シリアスゲームの知識、あるいはフレームワークみたいなものを使って考えてもらいたいと思っています。

 授業の日程は今のシラバス案から変更が入ると思いますが、興味のあるところを見に来ていただいても構わないです。ゲストの講師もお呼びする予定です。学外の方についても、興味のある方がいらっしゃいましたら、お問い合わせをいただければと思います。

―― 成績評価を見ると「定期試験は実施せず、次の項目で成績評価する…授業参加(5%)、授業時の小課題(50%)、グループプロジェクト成果物(35%)、グループプロジェクト相互評価(10%)」とあります。これは積極的に書かせるとか作らせるとか、手を動かすという感じですね。

藤本 そういう作業をして、自分で考え抜いて、表現するという数をこなす、プランナーとして企画を繰り返すのがトレーニングになると思いますので、それを意識した構成にしています。グループワークもそれがひとつ重要なところです。

―― それは、今までの研究のアウトプットとして……?

藤本 そうです、今まで教育方法の研究、あるいは学習環境デザインということをやってきたので、自分が研究してきた中で色々温めていたアイデアがいくつもあります。また、自分が今まで経てきた学習体験で、良かったと思ったことや一番良く学べたということを、うまくデザインできたらと思って取り組んでいます。小課題は基本的に授業内で完結するものを中心にして、授業中にしっかり集中して書いてもらえばできる程度、これが出席チェック代わりになる形ですね。たまに、家に帰ってもう少し考えてきてメールで出してもらうようなものも想定していますが、基本的には負担のバランスがやはり大事ではないかと考えています。他の授業で忙しくやっている中で、負担ばかりかけると消化不良になりますから。そこで、他の授業の状態はどうなのか、様子を見ながらやっていこうと思っています。

―― シリアスゲームという考え方が概念広がったのが2004年ですね。それからたった5年と言っていいのか分からないのですが、大学でそういった授業ができるというのは結構早い印象を受けますが。

藤本 シリアスゲームという名前ではそれぐらいの短いスパンになるのですが「ゲームと学習」ですとか、「教育用ゲームのデザイン」という観点で言えばもう少し長い歴史があるので、その中で最近の流れとしてシリアスゲームが考え方として入ってくると「こういう講座になりますよ」というところですね。そこは私の専門が講座開発とか、教育コンテンツのデザインだという強みをいかして工夫してます。

―― 「こういう授業をやってみたい」あるいは「ゼミ研究をこういった内容で生徒と一緒に長期間やりたい」といったプランはあるのでしょうか。

藤本 実際にそういう社会的な課題を持った企業や組織から共同研究や委託研究という形でテーマを与えてもらい、そのテーマに沿ってシリアスゲームとして実用化できるようなプロジェクト型の学習活動をしたいですね。プロジェクト学習をもう少し先鋭化させて……今回は最初なので様子を見ながらやるのですが、これでうまく回るようでしたら、そういうプロトタイプを作るところまで企画をしたいと思っています。

―― 学生さん、あるいはこれから東京工芸大学のゲームコースに行こうという人たちに対して、何かアドバイスはありますか?

藤本 ゲームクリエイターになりたい人達は、おそらく「自分の好きなゲームを作りたい」という人が多いと思います。その中でも私の講義は主にプランナー向けになります。

 プランナーは、企画を行う時に頭の中の引き出しが多くないといけないですよね。例えば同じロールプレイングゲームを作るとしても、その途中の面白さを演出する時の引き出しは、自分の好きなゲームだけをやっていたらなかなか広がらないと思います。その時に、社会の色々な現象や問題をクリエイターとして見る、読み解いていく、という視点をまず持つといいのではないか。その助けとなるような枠組みを提供する講座として、このシリアスゲーム論をデザインしています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  2. /nl/articles/2411/20/news049.jpg 高校生の時に出会った2人→つらい闘病生活を経て、10年後…… 山あり谷ありを乗り越えた“現在の姿”が話題
  3. /nl/articles/2411/20/news222.jpg ディズニーシーのお菓子が「異様に美味しい」→実は……“驚愕の事実”に9.6万いいね 「納得した」「これはガチ」
  4. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  5. /nl/articles/2411/20/news054.jpg 「防音室を買ったVTuberの末路」 本格的な防音室を導入したら居住空間がとんでもないことになった新人VTuberにその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/20/news050.jpg プロが教える「PCをオフにする時はシャットダウンとスリープ、どっちがいいの?」 理想の選択肢は意外にも…… 「有益な情報ありがとう」「感動しました
  7. /nl/articles/2411/21/news083.jpg 間寛平、33年間乗り続ける“希少な国産愛車”を披露 大の車好きで「スカイラインGT-R R34」も所有
  8. /nl/articles/2411/21/news085.jpg 「もしかしてネタバレ?」 “timeleszオーディション”候補者がテレビ局を退社 ディズニーの“船長”としても話題
  9. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
  10. /nl/articles/2411/21/news018.jpg グルーミングが出来ない生まれたての子猫、とんでもない体勢になり…… 想像以上のへたくそっぷりに「どこにも届いてないww」「反則級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた