海外も“ケータイFlash”の時代がやってきた――変化するFlash世界市場に挑む「CELL」
いち早くFlash対応ケータイが普及した日本でFlashコンテンツ最大手に成長したCELL。対応端末の増加やAdobeのオープン戦略など、Flashを取り巻く世界市場が変化する中、同社は今後、どのような海外戦略を採るのか。担当者に聞いた。
日本の携帯電話では日常的に利用されているFlashが、海外でも普及の兆しを見せている。海外のFlash市場は今後どのように展開していくのか。Flashコンテンツの開発では日本最大手のCELLで執行役員兼海外事業部長を務めるジェイムズ・スパーン氏に、同社の海外戦略を聞いた。
ITmedia(山根康宏): 御社は2008年10月のMobile Asia Congress 2008(中国・マカオ)、そして2009年2月のMobile World Congress 2009(スペイン・バルセロナ)と海外の大型イベントへ続けて出展しています。現在の海外ビジネスの状況や海外進出の予定について教えてください。
ジェイムズ・スパーン氏: 当社は2006年に米Verizon向けにFlash Lite用コンテンツの提供を開始しました。1年間に100万ダウンロードを記録するなど、当社のFlashコンテンツは高い人気を誇っています。現在は北米以外にも、アジア、ヨーロッパなど10カ国以上に各種Flashコンテンツを提供しています。またNokiaに端末プリセット用のFlashミニゲームを供給するなど、端末メーカーにも積極的にライセンスを提供していく予定です。
カジュアルゲームへの評価は世界共通
ITmedia: 御社のFlashコンテンツ、特にゲームの評判はいかがでしょうか。
スパーン氏: 北米に進出した当時は“日本で人気のゲームがそのまま海外でも受け入れられるのか”という不安があり、当初は様子をうかがいながらの海外進出でもありました。ところがコンテンツの提供を開始してみると、現地ユーザーの多くから好意的な評価をいただきました。これはゲーム専用機でも同じことだと思うのですが、日本で高い評価を受けた高品質なコンテンツを提供すれば、海外でも成功する――ということを実感しました。北米での成功は、当社がこれまで一貫して進めてきた品質の高いコンテンツ作りが、間違いではないことの証明になったと思います。
ITmedia: 日米を問わず高い評価を受けるコンテンツを作る秘訣は、どこにあるのでしょう?か・
スパーン氏: 当社が作るゲームの基本コンセプトは、「きれい・簡単・すぐできる」この3つです。つまり、誰でも楽しめるカジュアルゲームの開発に特化してきました。ゲームを起動して画面を見るだけで、誰もが説明書を読まずにすぐ操作でき、遊べるわけです。またゲーム時間も短いものなら10秒程度と、ちょっとした空き時間でも楽しめます。ただし、あまりに単純な内容ではすぐに飽きられてしまうので、当社のゲームは画面の動きやちょっとした背景の作りこみなど、ところどころにこだわりも持たせています。内容が簡単であっても何度でもやりたくなる、そんな品質の高いゲームをそろえているのです。
このような、手軽で簡単なゲームはどこの国の人でもすぐに遊べます。つまりカジュアルゲームは国を問わない、世界共通のコンテンツでもあるのです。当社が日本でこれまでやってきたことは、今後の海外進出時に大きなメリット、強みとなっていくでしょう。
Flashのオープン化でデバイスの垣根を越えたコンテンツが登場
ITmedia: 日本ではゲームのみならず、待受画面などFlashの利用範囲が広がっています。一方海外ではFlashコンテンツの利用はまだまだという状況です。今後、海外でもゲーム以外のFlashコンテンツが普及していくとお考えでしょうか。
スパーン氏: 海外端末の多くは、日本の端末よりも若干遅れている部分があります。しかし、最大手のNokiaがFlash対応端末を増やすなど、Flashの利用が進む環境が整いつつあります。またAdobeは2008年5月に、「Open Screen Project」を発表しました。このプロジェクトにはコンテンツ開発やモバイル関連企業が多数参加しており、今後はPCやTV、インターネット端末、携帯電話などでFlashコンテンツのシームレスな開発が可能になります。これにより、今後携帯電話の世界でもPC同様、Flashを利用したリッチなコンテンツが人気を集める時代が必ずやってくると考えています。
ITmedia: 今後は、ケータイ向けFlashコンテンツ市場に世界中の企業が参入するということでしょうか。
スパーン氏: Flashの最新バージョンである「Flash Player 10」では、PCと携帯電話の垣根がなくなります。今後はPCの世界でFlashコンテンツを作成していた企業が、携帯電話向けに進出することも容易になるでしょう。
しかし、高い処理能力を持つPC向けに作られたコンテンツを携帯電話向けにアレンジしなおすのは簡単なことではないと思います。我々には、携帯電話の限られたスペックの中で開発を続けてきたノウハウがありますから、多くの競争相手が出てきても打ち勝っていく自信があります。むしろ競争相手が増えてFlash市場が広がるのであれば、それは歓迎すべきことでしょう。
Flashコンテンツの新しい流通方法を確立
ITmedia: 御社にとって今後も、海外が重要な市場になるということですね。
スパーン氏: これまでお話したように、海外でも今後Flashコンテンツの利用が急激に増えていくと予想しています。そのため、海外市場への本格的な進出は当社にとっても重要な課題の1つになっています。もちろん、現状で海外進出するのは時期尚早かもしれません。しかし、ケータイFlashが海外で広がってからの参入では出遅れてしまいます。
携帯電話でFlashを利用することが世界であたりまえになったころ、当社のコンテンツもあたりまえのように利用されている――そうなるよう、今から海外への投資を進め、世界中のどの企業よりも早く、かつ良いコンテンツを普及させていきたいと考えています。
また海外オペレーターの多くは、音声とデータ通信に続く次の事業基盤を考えているところです。その中で最近注目が集まっているのがリッチコンテンツであり、当社のFlashコンテンツも各国の事業者から多くの引き合いを受けています。ケータイでコンテンツを販売するには、ポータル、ストア、そしてコンテンツそのものが必要です。従来はWAPやOTAによるコンテンツ配信が主流でしたが、配信できるコンテンツのファイルサイズや販売方法などに制限がありました。しかし最近はiPhone向けの「App Store」のように、簡単にコンテンツを購入できるソリューションが続々と登場しています。Nokiaも2009年夏から「Ovi Store」をスタートさせ、世界中のNokia端末向けにコンテンツ販売を開始します。リッチコンテンツを手軽に流通させることのできる環境が整い始めたことにより、当社のFlashコンテンツも今後海外に広く流通させることができそうです。
Flashゲームもタッチ対応に進化
ITmedia: 今後、ケータイ向けのFlashコンテンツはどのように進化していくのでしょうか。
スパーン氏: Flashはさまざまなアプリケーションへの応用が考えられますから、より広い用途へと広がっていくでしょう。PCの世界との融合も進むと考えられます。一例として、PC向けFlashゲームの続きを携帯電話でプレイする、といったことも可能になるでしょう。
またタッチパネルを搭載した端末なら、キー操作だけではなくディスプレイを指先で直接操作することが可能になりますから、Flashコンテンツもより面白いものが登場してくると期待できます。Mobile World Congress 2009では、日本のタッチパネル端末向けにFlashゲームの試作品を展示しました。画面をタッチして操作できる楽しいものに仕上がっています。
ITmedia: 今後の目標をお聞かせ下さい。
スパーン氏: われわれの強みはやはりFlashゲームだと思います。PCの世界では“ゲームと言えばElectronic Arts(エレクトロニック・アーツ、EA)”と言われるくらい、EAは有名です。当社はモバイルゲーム業界でのEAを目指し、“携帯Flashと言えばCELL”と呼ばれる存在になりたいですね。
そのためにも日本だけではなく、海外でもFlashコンテンツメーカーとしてナンバーワンの地位を目指していきたいと考えています。
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