トラウマになるので音楽は後からつけたほうがいい――チュンソフト 中村光一氏(前編)ヒライタケシの「投げる前から変化球」(その5)(1/3 ページ)

ヒライタケシの「投げる前から変化球」。春はあけぼの、チュンソフト代表取締役社長・中村光一氏を迎えて、おいしい鍋をつつきながらお届けします。トラウマって?

» 2009年04月08日 15時06分 公開
[ヒライタケシ/ITmedia +D Games編集部,ITmedia]

自由な発想と情熱が大事

左がチュンソフト代表取締役社長・中村光一氏。右がヒライタケシ氏。閑静な住宅街にひっそりと営業しているSALON DE HIT TAMA GOODが今回の取材場所。ゲームの話を肴に宴が催された

平井武史氏(以下、敬称略) 最初に、簡単なプロフィールを教えていただけますでしょうか。まずはゲームとの接点を。

中村光一氏(以下、敬称略) 高校に入学した頃、インベーダーゲームが大ヒットしており、好きで遊んでいました。高校に入学して、パソコン同好会の先輩にプログラミングを教わりながら、アルバイトしてPC8001を購入したのがきっかけですね。当時、IOという雑誌にプログラムを投稿して少額の印税を稼いでいまして、ちょうどその頃、エニックスがコンテストを開催したんです。そして、高校3年の時に作って応募したのが「ドアドア」なんです。それで優秀賞をもらいました。

平井 ボクはその頃中学生でしたね。当時、アドベンチャーが多かった時代で、家庭用のPCでアクションができるということに感銘を受けました。ある意味、この業界に興味を持ったきっかけでしたね。

中村 当時は著作権という概念があまりなくて、いかにゲームセンターにあるものに似せたものを家庭用PCでできるかを意識してましたね。キャラクターは同じものではないけど、画面デザインとか動き方とか似せてるんです。まさに、目と耳でコピーしてたんですよ。

平井 ドアドアはどれくらいで制作されたんですか?

中村 1カ月くらいですね。当時はサイズも小さいですし。アセンブラだったんで、多少時間はかかりましたが、それほど苦労した記憶はないですね。実はその前にコナミの「スクランブル」をコピーしたものがあって、それがけっこう苦労しましたね。画面のデータを圧縮する技術が自分になくて、2画面でメモリが終わってしまう事態になって断念してたんです。でも、ふとこうやったらできるかもとある日、圧縮の仕方を思きつきまして。1ラインを1バイトで表すのがうまくいったんです。でも、画面を最後までコピーするのにどれだけお金を使ったか……。今では動画で録画すればいいのですが、そういう意味で苦労しましたよ。

平井 そこから起業するに至ったのは?

中村 大学のために上京してきたのですが、第2弾をエニックスで作りませんかという話があって。「ニュートロン」というのを作ろうと思ったんですが、東京での生活が楽しくて全然ゲームを作れなかった(笑)。そうこうしているうちに1年が過ぎた頃、どうせやるなら法人の形をとろうと、84年4月9日ですか。大学2年に上がる時にワンルームから始めたのがチュンソフトだったんです。

平井 チュンソフトの由来は?

中村 単純なんですが、中村の中が麻雀牌のチュンと呼ぶところからですね。高校のころから麻雀が大好きで、仲間うちからチュンと呼ばれていたのに由来します。キャラクターでも「ドアドア」ではチュン君ですし、「ニュートロン」ではロン君が登場するなど、(麻雀から名前を拝借しているのものが)多いですね。

平井 今でも麻雀は?

中村 週に1度は今でもやっていますよ。

平井 起業してから25年間やっていて、いろんな転機があったと思いますが、一番の転機は?

中村 3つありますね。やはりメーカーとして自社パブリッシュをはじめた「弟切草」。そして、もうひとつは「ドラゴンクエスト」が大きいですよね。そして、3年前にドワンゴの傘下に入ったことも大きいです。

平井 ゲーム業界に入ってよかったことは?

中村 逆にボクはゲーム業界しか知らないから、ゲーム業界から外をのぞいた時に全然違うと感じますね。要するに、ゲーム業界ってなんだかんだいって、作っている人が偉いという感じしません? 現場の人たちが大事にされている。それが、他だと変なしがらみとか、互いに駆け引き的な考えを巡らしてビジネスしなくてはならない場面もある。だから、ゲーム業界で仕事できて幸せだったと思いますよ。

平井 ゲーム業界に入ってなかったら何をされてましたか?

中村 なにやってたかな。想像できないな。

平井 どういったエンジニアになりたいと思っていましたか?

中村 エンジニアというより、「ドアドア」作っていた当時は自分の作るゲームのほうが全然マシだと思ってましたから。粗悪品を買っているのはかわいそうだし、いいものを作れるという思いで会社を作ったので、最初からプログラマーをやりたかったわけではなかったんですよね。

平井 最初からゲームクリエイターだったんですね。

中村 自分が単純にゲーム好きだったので、面白いゲームを世に出したかっただけです。また、当時はゲーセンのゲームはナムコって時代でしたから、ナムコに入りたいけど自分では無理だという思いがあって、自分で(会社を)やるしかないという思いもありました。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」